山本 万友美 先生の独自取材記事
新宿サザンクリニック
(新宿区/新宿駅)
最終更新日:2025/03/10

新宿駅の目の前、ビルの6階にある「新宿サザンクリニック」を訪ねた。診療部長を務めるのは優しい笑顔の山本万友美先生。日本糖尿病学会糖尿病専門医として、患者に寄り添った無理のない診療を心がける。人に感謝を返せる職業として医師を選んだという山本先生。糖尿病内科を専攻したのも、患者とより深く関係性が築ける領域だと思ったため。治療する人と受ける人という一方通行の関係ではなく、患者と医師が一緒に治療に取り組む関係性をめざす。幼少期に「お兄ちゃん」と呼んで慕っていた叔父を病気で亡くし、病気の怖さと大事な人を失う喪失感を知った山本先生。そうした経験が、一人でも多くの患者を救いたいという思いにつながっているのかもしれない。
(取材日2024年10月28日/情報更新日2025年3月7日)
糖尿病専門医が夜21時まで診療
診療の特徴を教えてください。

当院の特徴は、糖尿病専門医が診療を行うことです。私も含め内科に在籍するすべての医師が糖尿病診療を専門としている医師です。診療は21時まで行い、薬を院内でお渡しする院内処方としていますので、薬局に行く手間も省けます。仕事終わりの遅い時間に受診しても、薬局が閉まっていて薬を受け取れない心配もありません。新宿という土地柄、多様な生活スタイルに合わせ土日も診療を行っています。
検査機器も充実していますね。
はい。糖尿病の検査に必要な空腹時血糖値、HbA1c、尿などの検査を院内で迅速に行える体制となっています。検査結果は5分ほどでわかり、ご自身の状態をタイムリーに知ることができます。糖尿病の患者さんにとって検査結果は、治療へのモチベーションにもなる重要な指標。私は患者さんに、検査結果を答え合わせに使ってくださいとお伝えしています。患者さんが意識して変化させてきたこと、例えば甘い物やお酒を控えるとか、運動を頑張ったなど、そうしたことの積み重ねが検査結果から見えるからです。しかし「検査結果は次の受診時にお伝えします」では、2ヵ月前に取り組んだことを忘れてしまいますよね。ですので、タイムリーに検査結果がわかることにこだわりました。
新宿駅からとても近い便利な立地ですね。こちらで開業した理由は?

この場所を選んだ理由はいくつかありますが、30~50代の忙しいビジネスパーソンの方々が受診しやすいようにというのが理由の一つです。糖尿病は高齢者に多いイメージがあるかもしれませんが、近年は糖尿病予備軍の方も含め、若年層にも広がってきています。若年化の原因としては、食生活の欧米化や運動機会の減少、睡眠不足や不規則な生活などさまざまな理由が考えられます。ストレスも要因として挙げられます。会社の健康診断で気になる数値が出ても、仕事が忙しくて受診できない方は少なくありません。大きな自覚症状がないので、受診を先延ばしにしてしまう気持ちもわかります。ですが、糖尿病は早期の対策が大切ですので、予備軍の段階から受診していただきたいと思います。
無理なく続けられる治療を重視
これまでどういったご経験をされてきたのですか?

大学を卒業後、新宿区にある国立国際医療研究センターという総合病院に研修医として在籍しました。一通りの内科を経験した後、糖尿病を専攻し、高血糖で昏睡となった方や、心筋梗塞、脳梗塞といった生命に関わる重度の合併症の患者さんなど多岐にわたる病態を学んでいきました。その後、入職したのが朝日生命成人病研究所附属医院。こちらは糖尿病を専門としている医療機関で、中でも教育入院に力を入れていました。同じ糖尿病の治療でも、重篤で緊急性の高い患者さんが多い総合病院とは、アプローチの仕方が異なります。例えば、入院中の患者さんも、パジャマから運動着に着替えて歩きますし、入院患者さん皆で食事をともにし、毎食栄養士とともに食事内容について勉強します。このような健康増進のための指導に特化してており、糖尿病治療の幅広さをこの2つの医療機関から学びました。
そのご経験の中で、印象に残っている患者さんはいらっしゃいますか?
糖尿病専門医の資格を取得して3年ほどの時に出会った方です。その頃、非常勤で大病院に勤めていました。その方はがんを患っており「がんはどうしようもないことだけど、糖尿病は自分でコントロールできるから励みになる」と真面目に取り組んでおりました。がんの病状が進行し、最期の時が迫っている時、病室に行くと「血糖値がこうなったのはこれを食べたからかな」「調子が良くて歩いたら血糖が下がったよ」と笑顔で話してくれました。診療中に会話した細かなことまで覚えていてくれたことが、今でも心に残っており、努力を続ける姿勢が印象的で尊敬していました。医師と患者という立場の前に、一人の人として接することができたからこそ、深い信頼関係を築けたのだと思います。最期に「ありがとう」と言葉をかけていただきましたが、むしろ私からお礼を言いたいほど。この患者さんとの出会いは、これからの医師人生においても忘れることはないでしょう。
医師である前に、人として患者さんと向き合うことを大切にされているのですね。

はい。特に糖尿病治療では、患者さんとの向き合い方は重要だと思っています。糖尿病や生活習慣病は、風邪のように薬を飲むだけで治療できるものではありません。食事や運動など、患者さんご自身が管理する部分が非常に大きく、それを継続する必要があります。ですので、患者さんの考え方や生活スタイルを把握し、無理のない方法を一緒に考えるようにしています。ある先輩が、糖尿病治療における患者と医師の関係を「マラソン選手とコーチ」と表現しており、まさにそのとおりだと思います。コーチがあれも駄目、これも駄目、ああしろ、こうしろと口うるさく言っては、選手は走ることが嫌になってしまいます。糖尿病治療も一緒です。これは食べては駄目とか、やめましょうとはなるべく言わないように心がけています。患者さんが自分のこととして前向きにやってみようという気持ちになるような、そうした診療が理想とするところです。
投薬治療以外の療養指導にも注力
糖尿病専門医のもとで診療を受けるメリットは何でしょうか。

患者さん一人ひとりのオーダーメイドな医療が、専門的に受けられるということだと思います。糖尿病の治療薬は新しい物が次々と開発され、治療は多岐にわたります。どの薬を使用するかは患者さんの罹病期間や年齢、合併症や体型、他の既往症、生活スタイル、家族背景などを広く把握して選ばなくてはいけません。患者さん一人ひとりの状態を把握し数ある糖尿病薬の中からその方に合ったものを選び、組み合わせて提案するのが私たち糖尿病専門医の仕事です。また世間では多彩な情報を手に入れやすくなった一方で、誤った食事療法や運動療法の情報もあふれています。医学的根拠に基づいた正しく無理のない療養指導をめざします。
医師以外にも患者さんをサポートする人はいますか?
はい。糖尿病に関する豊富な知識を持ち、食事療法や運動療法などの具体的な取り組みをサポートするスタッフがいます。もちろん、医師も療養指導を行います。ただ、どうしても患者さんとお話しできる時間は限られるため、医師からも、患者さんからも時間内に伝えきれなかったことをフォローする役割もあります。患者さんの中には、医師に話しづらく感じることをスタッフに話してくださる場合もあります。医師とスタッフは常に連携し、どのスタッフに話していただいても情報は引き継がれます。当院のスタッフはさまざまなクリニックで経験を積んでおり、私も信頼していますので、どうぞ安心してご相談いただければと思います。
患者さんへメッセージをお願いします。

開業してまだ間もないですが、温かいクリニックにできればと思っています。糖尿病は糖尿病専門医がしっかり対応しますし、それ以外の一般的な内科疾患で来院いただいても、もちろん結構です。専門外の疾患の受診をお断りすることはありません。自分が診られる範囲を超えていると判断しましたら専門の先生にご紹介しますし、病院での治療が必要な場合は速やかにおつなぎします。また、糖尿病の患者さんには、注射は嫌だとか、甘い物はやめられないなど正直な気持ちをお話しいただきたいです。糖尿病治療をしている患者さんが「ごめんなさい」とおっしゃることがあります。思うような行動ができていないと、罪悪感を感じているのでしょうか。謝る必要はありません。どうしたら良くなるか、何がいい方法かを一緒に考えましょう。私たち医師をパーソナルコーチだと思って、頼っていただければうれしく思います。