中村 文彦 院長の独自取材記事
なかむら泌尿器科クリニック雑色
(大田区/雑色駅)
最終更新日:2025/03/14

雑色駅から徒歩1分の「なかむら泌尿器科クリニック雑色」。大型スーパーの中にあり買い物ついでに立ち寄るのにも便利だ。院長の中村文彦先生は中核病院で泌尿器科の研鑽を積んできたスペシャリスト。これまでの経験を生かし、膀胱鏡検査、過活動膀胱へのボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法など、クリニックでは難しいとされてきた診療にも積極的に取り組む。泌尿器科が不足していた六郷・羽田エリアで「身近な場所で気軽に先進医療を受けられるようにしたい」との熱い思いを持つ。そのためにも患者が泌尿器科受診に感じがちな気恥ずかしさにも真摯に向き合う。一つ一つの質問に丁寧に耳を傾け、飾らない言葉で答えてくれた中村院長に、診療にかける思いなどを詳しく聞いた。
(取材日2025年2月12日)
尿の悩みを気軽に相談できる空間
まず、医師を志したきっかけやご経歴をお聞かせください。

父が品川区で泌尿器科のクリニックを開業していて、後ろ姿を見て育ち自然と同じ道に進みました。獨協医科大学卒業後は、同大学病院で初期研修を受け泌尿器科に入局。東京高輪病院、城南福祉医療協会大田病院などで、難症例のがん治療なども含めて研鑽を積む日々を過ごしました。そんな中で気づいたのが、六郷・羽田エリアは人口は多いのに泌尿器科がまったく足りていないということ。泌尿器科にかかりたい方は蒲田まで出かけなくてはいけない状況だったんです。母が幼少期を過ごした羽田には親しみも感じていましたし、少しでも近隣の皆さまのお役に立てればと開業を決意しました。
開業にあたって院内づくりでこだわった点などはありますか?
患者さんに圧迫感なくリラックスしてお待ちいただけるよう、受付や待合室はウォールナットを基調にしました。広々とした院内は余裕があり、動線もバリアフリーを意識して車いすでもスムーズに移動できます。プライバシーにも配慮した検査室では膀胱鏡による検査や治療を人目を気にせず受けられるようにしています。機器類はすべて先進機種を導入していますが、中でもこだわったのが自動尿有形成分分析装置です。尿の中に赤血球、白血球、細菌、結晶などの各成分がどれくらい存在しているのか、患者さんにも画像としてお見せすることができ、わかりやすく説明するのに役立っています。
開業して1年。現在はどのような患者さんが多いのでしょうか。

訴えとしては「おしっこの回数が多い」「おしっこが出ない・出にくい」「残尿感がある」などの何らかの排尿トラブルが多いですね。血尿だけではなく、このようなありふれた症状の奥にまれに膀胱がんなどの大きな病気が隠れていることもあります。少しでも気になることがあれば、早めにご相談ください。また、年齢別では高齢男性が目立っている印象です。本当は男女関係なく65歳以上では約4分の1がおしっこに関する悩みを抱えているともいわれていますが、泌尿器科に敷居の高さを感じる女性も少なくありません。治療が必要な高齢女性のうち、10分の1以下しか受診していないというデータもあるほどです。当院では女性医師による診療日も設け、女性ができるだけ受診しやすいようにしていきたいと考えています。
膀胱鏡検査をはじめ専門的な診療を身近なクリニックで
強みである膀胱鏡による検査と治療について教えてください。

膀胱鏡検査は血尿や尿路感染症の原因調査、膀胱や尿道のポリープ・腫瘍の検出、前立腺の状態確認などが可能ですが、病院でしか受けられない時代もありました。当院ではより身近なクリニックという場所で迅速に検査を行い、早期発見・早期治療につなげていきたいと考えています。軟性膀胱鏡を採用し局所麻酔も併用するなど、患者さんの苦痛軽減にも最大限配慮しました。必要に応じて生検のために組織の一部を採取したり、ただちに処置を行ったりすることもできます。また、根が浅い膀胱がんならばBCG膀胱内注入療法も行っていますが、まだクリニックでは珍しいかもしれませんね。
尿失禁や頻尿にはボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法も行っていると伺いました。
中高年以上の女性は尿失禁や頻尿などの過活動膀胱にお悩みの方も多いですよね。当院でも投薬治療、水分摂取の調整、骨盤底筋体操などをまず試みますが、それだけでは改善が見られない場合も多々考えられます。そんなとき、選択肢の一つとしてご提案するのがボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法です。日本では2020年から保険適用となった治療ですが、海外では20年以上の歴史があり広く普及しています。ボツリヌス毒素を膀胱に直接投与して異常な収縮を抑えるための治療で、年に1〜2回の注射を行い状態の安定を図ります。頻尿が心配で諦めていた旅行や観劇も楽しめるようになるなど、生活の質を向上させる治療といえるでしょう。若い世代でも、通勤や会議の不安から開放されたいと治療を希望する方もいますね。
患者さんと接するときに何を大切にしていますか?

「恥ずかしかったけど、勇気を振り絞って来て良かった」と言われることも多い泌尿器科。だからこそ、受診のハードルを下げる努力を絶えず続けていきたいと思っています。そのために大切にしているのが、できるだけ患者さんと同じ目線に立つということです。決して強い言い方はせず、患者さんが話しやすいように心を配り、どんな症状があるのか、何に困っているのかに耳を傾けます。さらに、どんなに忙しいときでも、他愛ない話を一言二言交わすゆとりも大事にしています。そうする中でいつしか信頼してくださって「服薬以外の治療も考えてみようかしら」というように、診療の幅が広がればいいなと思います。常に先進の知識にアップデートして幅広い選択肢を提示しつつ、決して無理強いはせず、患者さんに納得した上で選んでいただくことも大事にしていきたいです。
プライマリケアクリニックとして地域医療に貢献したい
今後の展望についてお話しください。

現在、女性医師による診療日は火曜日のみなのですが、4月からは木曜日もプラスして週2回の体制にしていく予定です。女性医師不在の日でもベッドサイドに必ず女性看護師がつくようにしていますし、今後とも女性が受診しやすい環境にますますこだわっていきたいと考えています。また、前立腺肥大のご相談も多いので、日帰り手術ができるようにと準備を始めたところです。そもそも膀胱鏡検査室を広めに造ったのも、いずれは手術室としても活用したいという思いからでした。麻酔科の先生をお呼びして日帰り全身麻酔ができる体制を整えたいですね。一方、生活習慣病の方の排尿障害などは、内科の先生と連携してクリニックを越えたチーム医療で見守っていけたらと考えています。
お忙しい毎日ですが、休日はどうお過ごしですか?
休日はできるだけ子どもと過ごすようにしています。一生のうちで二度とない時間だと思うので、大切にしたいですね。2人ともまだ小さいので特別なことができるわけではありませんが、近所の公園で遊ぶなどしています。今は仕事と子育てに全力です。子どもとのコミュニケーションも慣れていますので、なかなか治らない夜尿症なども気軽にご相談ください。新しい薬、トレーニング方法、生活習慣の改善などを提案しながら、お子さんにもご家族にも無理のない治療を進めていければと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

院内でしっかりと検査や治療を行うのはもちろん、必要があれば各基幹病院に迅速につなげていきたいと考えています。これまで培ってきた人脈を生かして「尿管結石ならばここ」などと得意としている病院への紹介もスムーズです。また、病院での治療が終わった後の経過観察にも力を入れています。進行がんでストーマ(人工膀胱)を造成した後のケアなどもお任せください。そのほか、排尿に関して何かしらのお悩みがあるならば、恥ずかしがらずに立ち寄っていただければと思います。とはいえ「恥ずかしい」というのは当たり前の感情です。だからこそ、少しでも安心できる場所をスタッフ一同で力を合わせてつくっていきたいと日々努力しています。プライマリケアクリニックとして皆さんのお役に立てれば幸いです。