隈部 洋平 院長の独自取材記事
耳鼻咽喉科・頭頸部外科くまべクリニック
(大阪市中央区/谷町四丁目駅)
最終更新日:2025/10/02

大阪メトロ谷町線・谷町四丁目駅から徒歩3分。大阪赤十字病院や兵庫県立尼崎総合医療センターといった関西地域の中核病院で20年以上にわたり、耳鼻咽喉科・頭頸部外科の医師として診療を続けてきた隈部洋平院長が、2024年2月に開業した。「耳鼻咽喉科・頭頸部外科くまべクリニック」は、耳・鼻・のど・首の病気に幅広く対応するクリニックだ。院長の隈部洋平先生は、関西の大規模病院で20年以上にわたり診療を行い、特に頭頸部がんの手術に数多く携わってきた。「これまで培ってきた技術や経験を地域で生かし、日帰り手術やがんの早期発見に力を注ぎたい」そう語る隈部先生に、これまでの歩みや診療への思いを聞いた。
(取材日2024年1月5日/再取材日2025年8月7日)
診療スタイルと完全予約制の理由
開業に込めた思いは何ですか?

大規模病院で診療を続ける中で、「もっと早く受診できていれば治療の選択肢が広がったのに」と痛感することが度々ありました。しかし実際には紹介状が前提となり、軽い症状では相談しづらい現実があります。耳・鼻・のどの不調は軽視されやすいものの、放置すると慢性化や重症化につながりかねません。私は「ちょっと気になる段階」で専門の医師に相談できる環境を地域につくりたいと考えました。特に日帰り手術やがんの早期発見は、患者さんの体や生活への負担を大きく減らします。生活に寄り添う医療を提供したい……これが開業の原点です。
診療の特徴は何でしょうか?
当院では、耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域を幅広く診療しています。一般的な風邪や耳鼻咽喉科の感染症、アレルギー性鼻炎などはもちろん、薬だけでは改善しにくい中耳炎や副鼻腔炎、のどや首にできる腫瘍やポリープなどに対して、日帰り手術も積極的に取り入れています。耳鼻咽喉科の病気は命に直結することは少ないですが、長引く症状で「よく眠れない」「仕事に集中できない」といった生活への影響が大きいのが特徴です。そのため、まず患者さんのお話を丁寧に伺い、症状が生活にどう影響しているかを理解した上で治療方針を立てます。薬の使い方も画一的ではなく、年齢・体質・ライフスタイルを考慮して最適化する“オーダーメイド治療”を重視しています。
なぜ完全予約制にしたのですか?

開院からしばらくは予約なしの受診も可能にしていましたが、患者さんが増えるにつれ、待ち時間も長くなり、どうしても一人ひとりに十分な時間をかけることが難しくなってきました。当院は「じっくり話を聞き、納得していただく」ことを大切にしているため、診療の質を守るには、ある程度の人数制限をした完全予約制の導入が不可欠でした。もちろん、せっかく来ていただいても予約が取れないことがあるのは心苦しい決断でしたが、移行後は、「しっかり話を聞いてもらえた」「説明が丁寧で安心できた」といった声を多くいただいています。慢性的な症状や長年の不調を抱える方にとって、十分な時間をかけた診察は大きな安心につながっていると感じます。
経歴と頭頸部外科への思い
院長のご経歴と専門について教えてください。

私は大阪赤十字病院や兵庫県立尼崎総合医療センターで20年以上耳鼻咽喉科・頭頸部外科に従事し、耳・鼻・のど・首の疾患に対して特に手術を中心とした治療を行ってきました。中でも専門分野として力を入れてきたのが頭頸部がん診療です。頭頸部とは、鎖骨から上で脳と眼球を除いた部分のこと。呼吸・発声・嚥下など人が生活する上で欠かせない機能が集まっています。その領域にできるがんが「頭頸部がん」です。がんの治療において「命を救うこと」は当然ですが、治療後に会話を楽しみ、食事を味わい、社会生活に戻れるようにすることも極めて大切です。私は「命を守る医療」と「生活を支える医療」の両立を常に意識し、その姿勢を地域の診療にも生かしています。
頭頸部外科の手術にはどんな特徴がありますか?
頭頸部外科の手術は、患者さんごとにまったく異なるのが特徴です。例えば舌がんでは、舌をすべて切除すれば再発リスクは減りますが、話す・食べるといった生活機能を大きく失います。そのため「腫瘍を確実に取りきること」と「生活機能をできるだけ残すこと」の両立が常に課題となります。欠損部位を補うための移植も欠かせず、どの部位からどの形の組織を採取するかを毎回検討します。二つとして同じ手術はなく、一例ごとに異なる工夫が必要ですが、その難しさの中に患者さんの人生を守る責任と大きなやりがいを感じます。
開業を後押しした決め手は何ですか?

私が開業を決意した大きな理由は2つあります。1つは、日帰り手術をもっと身近にしたかったことです。大きな病院では耳や鼻の手術で4~5日入院するのが一般的ですが、技術と設備があれば日帰りで対応できるケースも多くあります。仕事や育児などで長期入院が難しい方にとって、日帰り手術は大きな選択肢になります。もう1つは、がんの早期発見に力を入れたかったからです。頭頸部がんは、受診時にはすでに病気が進行しているケースも少なくなく、「もっと早く見つけられたら」と感じることがこれまでに多くありました。しかし、頭頸部外科を標榜するクリニックはほとんどなく、受診の機会が限られているのが現状です。そこで、自分の経験や技術を地域に還元し、早期発見の場を広げたいと考え、開業を決意しました。
診療の工夫と今後の展望
診療で心がけていることは?

大切にしているのは「丁寧な診察」と「わかりやすい説明」です。耳・鼻・のどは自分で見ることができないため、不安を抱える方が多い領域です。当院では、大型モニターに内視鏡やエコー、CTの画像を映しながら、患者さんと一緒に状態を確認し、できるだけ専門用語を避けて説明します。診察中は患者さんとしっかり向き合えるよう、カルテ入力は専門スタッフ(シュライバー)が担当しています。また診察後には看護師が改めてお声がけし、「疑問や不安が残っていないか」を確認します。患者さん自身が病状を理解し、納得した上で治療法を選べるようにすることが当院の基本姿勢です。
設備面での強みを教えてください。
当院では診断の正確さと安全性を高めるため、先端の医療機器を積極的に導入しています。高画質CTは中耳炎や副鼻腔炎、腫瘍の範囲を精密に把握でき、特殊光を使う内視鏡は早期がんや炎症の評価に有用です。エコー検査は病変部を鮮明に映し出し、腫瘍の位置把握ができるため、細胞を採取することができます。診察室には手術用顕微鏡も備え、耳の処置や繊細な手術をその場で実施可能です。また、アレルギー検査は指先からわずか1滴の血液を採るだけで行える機器を導入し、特に小さなお子さんの負担を大きく軽減しています。安全性や精度を高めることで、患者さんに安心して診療を受けていただける環境を整えています。
今後の展望を教えてください。

私が理想とするのは「なるべく通わせない医療」です。患者さんにとって最も望ましいのは、短期間で症状が改善し、再診が不要になることです。当院の強みである日帰り手術も、「手術を受けたほうがメリットが大きい」と判断した場合にのみご提案し、決して無理に勧めることはありません。「つらい症状に悩んでいる方が、一人でも多く安心して日常に戻れるように」その思いを胸に、これからも地域に根差し、安心と信頼の医療を提供し続けたいと考えています。