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松永 巌 院長、永田 健 先生の独自取材記事

みんなの福岡クリニック

(福岡市南区/大橋駅)

最終更新日:2024/10/09

松永巌院長、永田健先生 みんなの福岡クリニック main

新型コロナウイルスの流行以降、在宅医療のニーズが高まっている今、福岡市南区にある「みんなの福岡クリニック」の松永巌院長も在宅医療に情熱を注ぐ医師の一人だ。老々介護や独居老人の訪問診療も行うなど、「慣れ親しんだ自宅で最後の時を迎えたいとおっしゃる方は多いです」と松永院長。血液検査、腹部・心臓・頸部血管の超音波検査、心電図検査なども自宅で実施できるという。訪問は福岡市を中心に24時間365日対応。患者が住み慣れた住まいで安心して療養できるよう、多職種連携による医療体制を構築している。訪問診療は松永院長と、法医学の現場経験をきっかけに在宅医療の道を選んだ永田健先生が実施。そこで、松永院長と永田先生に、これまでの歩み、診療内容、地域医療への想いなどを聞いた。

(取材日2024年9月10日)

心臓血管外科と法医学、各分野から在宅医療の道へ

まずは2023年に院長に就任された経緯からお聞かせいただけますか。

松永巌院長、永田健先生 みんなの福岡クリニック1

【松永院長】ここは、もともと関東の医療法人のクリニックが九州に進出するということで開院されました。前院長が1年ほど診療されたのですが、ご自身の開業を機に退職されたため、求人募集をきっかけに私が院長に就任させていただいたというのが経緯です。私の出身は長崎で、大学は大分大学、卒業後は東京の順天堂大学の心臓血管外科に入局。そこでキャリアを重ねる中、さらなるスキルアップをめざし、アメリカのハーネマン大学(現:ドレクセル大学)病院心臓胸部外科で研鑽を積みました。帰国後は、心臓血管外科がある福岡和白病院で勤務した後、在宅医療の道に進んだというのが私の経歴です。

永田先生はどのようなキャリアを積まれてこられたのでしょう。

【永田先生】私は久留米市出身で、幼少期はよく小児科のお世話になっていました。それが最初のきっかけとなり、医師をめざし九州大学へ進学。卒業後は法医学分野を専門とし、事件性の有無を見極める司法解剖などに従事しました。事件性がない場合も、死因や身元を特定するための解剖にも携わるなど、特殊な環境に身を置いていましたので、昨今よく取り上げられるようになった孤独死、医療や行政のサービスが十分に受けられずにお亡くなりになった方のご遺体に直面することも。それは、むしろ事件性のあるケースよりも多く、死後数日経過して発見されたご遺体も少なくありませんでした。特に孤独死されたご遺体に向き合うと、その方の生活背景も見えてくるんですね。おそらく病院勤務だったら経験できなかったであろう現代社会の現実にふれ、何とかできる方法はないかと考えた時に、在宅医療が頭に浮かんだんです。

同じ医療の世界とはいえ、お二人とも大きな方向転換をされましたね。

松永巌院長、永田健先生 みんなの福岡クリニック2

【永田先生】せっかく利用できるサービスがあるのに、そこにたどり着けない情報格差の問題。受けられるさまざまなサービスや支援と、それを必要とする人を結びつけるパイプ役になりたいと思ったのが、在宅医療に方向転換した大きな理由でした。
【松永院長】私の場合は心臓血管外科を専門としていましたので、手術して病態を良い方向へ変えることに手を尽くしていた一方で、高齢の方に侵襲的な手術を行うことに対しジレンマも感じていました。自分の今後の人生を考えた時に、変わらず貪欲に先進的な技術を取り入れてそのフィールドに残るよりも、これまでとはまったく逆の積極的な治療を行わない在宅医療に興味が湧いたんです。心臓血管外科では全身管理も必要ですから在宅医療の分野でも生かせるんじゃないかと考えた時に、もう迷いはなかったですね。

患者の理想とする環境づくりと苦痛の軽減に力を尽くす

訪問診療では、特にどのようなことに取り組んでいらっしゃいますか?

松永巌院長、永田健先生 みんなの福岡クリニック3

【松永院長】全身管理やお看取りまでの終末期医療は心臓血管外科時代も経験がありましたが、私が今、在宅医療の中でも特に意義を感じているのが緩和医療の提供。今後は多死社会になりますので、がん、呼吸器疾患、心不全などの終末期につらい思いをする方が増えることは避けられません。在宅医療を通じて少しでもその方たちの苦痛を和らげることができたらというのが、医師として今一番取り組んでいることです。侵襲的な治療を行わずに、いかに患者さんのお気持ちに寄り添い、さまざまな苦痛を和らげるサポートができるかを常に考えています。
【永田先生】そして、まだ情報が行き届いていない方へ、行政のサービスや医療ケアなど、利用できるサービスの情報提供にも努めています。

超高齢社会の今、世の中的にも病院完結型医療から地域完結型医療へとシフトしていますよね。

【松永院長】ええ、担当させていただいている患者さんの中にもご自宅で、がんや慢性疾患の終末期を迎えられている方が多く、以前であれば病院で過ごされていたであろう病態の方も、ご自宅での療養が可能な時代になりました。
【永田先生】その一方で、本当はご自宅で療養したいと思っていても、ご家族の負担を気にして、病院での生活を希望される方もいらっしゃいます。患者さんの本当の希望をかなえるためには、ご家族の負担を減らすことと、ご自宅で療養していく上での心配事を取り除いてあげることが大切だと思っているので、受けられるサービスを活用いただきながら、患者さんが理想とされる環境に近づけていくことに力を注ぎます。

お二人が訪問診療のやりがいを感じるのはどんな瞬間ですか。

松永巌院長、永田健先生 みんなの福岡クリニック4

【松永院長】患者さんの苦痛の緩和につながり、穏やかな表情を見ることができたら、特にやりがいを感じるかなと思います。在宅医療は医師だけでなく、訪問看護師さん、薬剤師さん、ホームヘルパーさんなど、多くの方との連携で成り立っていますので、みんなと患者さんの願いに向かって協力し合えるのもやりがいの一つになっていますね。
【永田先生】私も患者さんの願いをサポートでき、穏やかな表情で旅立たれたり、ご家族が穏やかな気持ちでお見送りできたら、胸が熱くなります。

在宅医療は医師も家族も余力を残しておくことが大切

福岡市を中心としたエリアが訪問対象とお聞きしました。

松永巌院長、永田健先生 みんなの福岡クリニック5

【松永院長】はい。訪問診療を行っていく中、福岡市も独居の方や老々介護をされているご家庭が多くなっていることを実感しています。もちろん、お考えはそれぞれですので、私たちの意見を押しつけることはいたしませんし、在宅での療養をご希望される方にはできる限りご要望にお応えできるよう努めています。ただ、ご家族が疲弊されてしまうような場合は、策を講じることも必要。無理をしないことが大切です。
【永田先生】ご家族が「こうでなければならない」と、自分を追い込みながら患者さんに接するのは避けていただきたいですね。余力を残しておくのが大事なポイント。それは私たち医療従事者にも言えること。われわれが疲弊してしまったら、患者さんやご家族が望まれる医療の提供ができませんから。

では、患者さんとそのご家族が幸せに過ごせるために重視されていることはありますか?

【永田先生】アドバンス・ケア・プランニング(ACP)といって、最後の日を迎えるにあたり、こういう医療を受けたい、あるいは積極的な治療は受けたくないなど、医療・介護従事者や家族と何度も繰り返し話し合うことを重視しています。この言葉やその内容がまだ多くの方に認知されていませんので、まずは知っていただくことから始め、一人ひとりの人生観や死生観を尊重した医療ケアやサポートに努めています。患者さんの望みを実現するために、訪問看護師さん、ケアマネジャーさん、介護ヘルパーさんなど、とにかく多くの人が協力し合う、まさにチーム医療を実施。患者さんと近い距離でともに歩いていける。これが在宅医療の醍醐味(だいごみ)だと思っています。
【松永院長】とにかく患者さんとそのご家族とコミュニケーションをとることですよね。人の気持ちは常に変化していくものですから、その小さな変化も取りこぼすことのないよう心がけています。

読者へのメッセージをお願いします。

松永巌院長、永田健先生 みんなの福岡クリニック6

【松永院長】在宅医療は、たくさんの人たちが一人の患者さんの心身と環境を支えていく医療。心臓血管外科時代は、とにかく救命することを第一に取り組む日々でしたが、今はありのままを受け入れ、苦痛を和らげることに徹し、患者さんのお気持ちに寄り添う。これは、本来人間がたどるべき自然な流れなのではないかと感じています。人の命は限りがありますので、積極的な治療をしてもしなくても、最後の日は必ず訪れます。その上で、どう過ごしたいか。ぜひ大切な人とじっくり語り合ってみてください。

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