過酷な環境の口腔内で使い続けるインプラントにはメインテナンスが必須、メリットとリスクを熟知して導入を

Qインプラントはどのような治療なのですか？

A

▲インプラント治療について話す末松先生

チタンやジルコニアなどの素材でできた、ねじ受けのような形状の人工歯根を歯槽骨に埋め込み、そこに土台やかぶせ物でできた人工歯をはめて、失った歯の機能回復をめざす治療です。失った歯を補う手段としては入れ歯やブリッジなどもありますが、人工的に歯の根っこを再現するインプラントでは天然の歯に近い力で噛むことが期待できます。噛み心地については、噛んだ圧を感じる歯根膜という成分がないので、天然歯と同じというわけにはいきませんが、しっかり噛めるようになれば大きな喜びにつながるでしょう。また、周囲の歯を利用することなくその場所単独で治療を行うので、周囲の歯を削ったりする必要がなく、機能的なメリットも大きいです。

Q機能的なメリットについて、もう少し詳しく教えてください。

A

▲インプラント治療のメリットについて話してもらった

入れ歯やブリッジでは、治療部分の歯を支えるために隣接する歯を削ったり、金具を掛けたりします。ですので周囲の歯には歯を揺さぶる力がかかり続け、結果的にその歯の寿命も縮めてしまう傾向があるのです。実際に、歯を1本失った患者さんでブリッジをするとその支える歯も悪くなってブリッジの範囲が広がり、奥で支える歯がなくなってしまったら入れ歯にする、とドミノ倒しのように歯を失っていくケースは多いです。これに対してインプラントは周囲の歯に頼らず治療ができます。僕は患者さんに「1本の歯のためだけに高額なインプラントを入れるのではなくて、残りの27本を守るためだと思いましょう」とよくお話ししています。

Qデメリットもあるのでしょうか？

A

▲デメリットもしっかりと理解してほしいという考えを持っている

インプラントを埋入するには手術が必要で、他にもさまざまな施術の工程を重ねますし、高品質の材料を使いますので、治療費用はそれなりの額になる自費診療です。また、全身の中でも細菌が多い口腔内に人工的な装置を取りつけて長く使うので、どうしても感染リスクが高くなるのですが、生まれ持った歯と異なり、血流などの関係から免疫のバリアが弱いんです。特に人生の後半になると免疫機能が低下しますし、他の全身疾患も増えてくる。さらにインプラントは特別なメインテナンスを継続する必要があり、それを怠ったりセルフケアが不十分になったりすると、インプラント周囲炎などの問題も起こりやすくなります。

Q治療後のメインテナンスが欠かせないのですね。

A

▲同院ではメインテナンスにも力を入れている

歯槽骨を利用する現在のインプラント治療が始まってからまだ半世紀ほどですから、メインテナンスに関する研究は発展途上です。私が歯科医師になった10年ほど前でも、メインテナンスについてはあまり注目されておらず、最近ようやく長期的な研究結果が増え、インプラントを長く安全に使うためには徹底したメインテナンスが欠かせないことが科学的なデータからも示されるようになってきました。このため、これまで治療では骨や人工の歯の位置を重視する考え方が主流でしたが、最近ではそれに加えてメインテナンスを重視したインプラントが提唱されています。当院でも、インプラントを開始される方にはメインテナンスプログラムを推奨しています。

Qどのような歯科医院で治療を受ければ良いのでしょうか？

A

▲院内はリラックスできる雰囲気になっている

インプラントは確かに優れた治療法ですが、決して万能ではないですし、歯を補う治療は他にもあります。ですからしっかりと説明がなされ、患者さんにとってメリットが大きい治療を選べる歯科医院をお勧めしたいです。また、過酷な口腔内環境に長く耐えられるインプラントを施術するためには、それなりの技術とコスト、期間が必要ですし、治療が終わった後も継続的なメインテナンスが不可欠です。どこで受けても同じ治療というわけではないので、専門的に研鑽を積んでいる歯科医師がいて、定期的なメインテナンスが必要であることをしっかりと事前に説明してくれ、実際に専門的なメインテナンスを実施してくれる歯科医院が良いでしょう。