精密な検査をもとにアドバイス
総合的な視点で骨粗しょう症予防を
目黒駒沢リハビリ整形外科クリニック
(目黒区/駒沢大学駅)
最終更新日:2025/01/15


- 保険診療
高齢化が加速する現代では、健康寿命をいかに延ばすかが重要になる。その体を根本から支えているのが骨格だ。加齢とともに骨が脆くなる骨粗しょう症は、骨折の原因になり、その結果、寝たきりになることもあるため、見過ごすことができない。「目黒駒沢リハビリ整形外科クリニック」の藤田典往院長は、自治体や医師会とともに骨粗しょう症の検診と予防に取り組んでいる。クリニックで行っている検査や、どのような予防策が必要なのか、日常の中で取り組めることも含めて詳しく話を聞いた。
(取材日2024年10月4日)
目次
骨粗しょう症はカルシウム不足だけが原因ではない。精密な検診を通して、改善するべき点を明確にしていく
- Q骨粗しょう症とはどのような病気なのでしょうか。
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A
▲専門性を生かし、多角的なアプローチを行う
体の骨は、破骨細胞が古い骨を吸収し、骨芽細胞がカルシウムなどを付着させて新たに骨を作っています。骨粗しょう症はこのバランスが崩れて骨の吸収が促進し、骨が脆くなってしまう病気です。骨量は、成長とともに増えていきますが、20歳頃までがピークとされていて、これをピークボーンマスといいます。その後は40歳くらいまで横ばいとなり、以降は減少していきます。閉経後の女性に骨粗しょう症が多いのは、骨吸収を抑制していたエストロゲンという女性ホルモンが急激に減少するためです。ほかにも、甲状腺の病気や関節リウマチなどの骨に影響が出る病気や、ステロイド剤などの薬の影響で骨が脆くなることもあります。
- Q20歳頃までにいかに骨量を充実させておくかが重要なのですね。
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A
▲患者が関心を持って治療に取り組むために、資料を作成している
そうです。ピークボーンマスのレベルを上げて骨量を増やすことが、将来の骨粗しょう症のリスクを減らす鍵になります。例えば、10代に無理なダイエットなどで痩せてしまうと、骨の材料が不足してしっかりとした骨を作ることができず、骨粗しょう症のリスク因子になります。ぜひ、親御さんは食育を通して、食事の重要性や楽しみを子どもさんに伝えていただきたいです。好き嫌いをなくして食事をバランス良く摂取する。こうした健康への投資は非常に重要です。また、せっかく体に良いものを食べても消化吸収が悪いと身につかないので、よく噛むことも大切です。そのために、口腔内環境も普段からきちんと整えておくようにしてください。
- Q目黒区では骨粗しょう症の検診が受けられるそうですね。
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A
▲同院では体組成計を活用し、個々に合わせたアドバイスを行う
自治体と医師会との共同事業で検診を行っていて、目黒区では40歳から5歳ごとに70歳まで助成があります。骨粗しょう症検診については、そもそも検診自体を行っていない自治体も多いので、自治体によりかなり差はあると思います。骨粗しょう症の検診と予防に力を入れていこうと考えたのは、予防がとても重要な疾患であることと、私の大学院時代の研究テーマが骨粗しょう症だったこと、さらに、当院は予防医学を積極的に取り入れているということがあったからです。
- Q骨粗しょう症の検査はどのように行うのでしょうか。
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A
▲骨密度検査をはじめとする複数の検査をもとに診断する
当院では全身型の骨密度測定装置による骨密度測定、DEXA(デキサ)法を用いて検査を行っています。DEXA法はより精密に骨量や骨密度の評価ができる検査法として推奨されていて、骨密度のほかに、骨粗しょう症の経過観察、骨折の危険性予測にも役立ちます。検査部位は腰椎と大腿骨で、検査時間はトータルで10分程度です。また、骨密度に加えて体組成計測を行い、筋肉や脂肪など、部位ごとの体組成も測定します。また、必要に応じて血液検査も行い、骨代謝といって骨吸収と骨形成のバランスや骨の質を評価します。これらの検査結果から、総合的な視点で患者さんにアドバイスしています。
- Q骨粗しょう症を予防するためには何が重要になりますか?
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A
▲日々の生活に取り入れやすいアドバイスを行う
骨粗しょう症と聞くとカルシウム不足が原因と思いがちですが、ミネラルやタンパク質の摂取、運動も重要です。骨は負荷がかからないと強くならないからです。お勧めなのは、体幹を鍛える筋力トレーニングです。ウォーキングも骨量の維持に役立つといわれていますが、重要なのは運動を習慣化して継続していくことです。また、特にビタミンD、ビタミンK、亜鉛、マグネシウムの4つの栄養素は大切です。カルシウムとマグネシウムを3対1または2対1の割合で摂取すると良いとされています。他にも、タンパク質は、骨質のコラーゲンを作る材料として重要になります。