自然治癒が難しい慢性中耳炎の改善をめざす
耳の日帰り手術とは
ばば耳鼻科・日帰り手術クリニック
(門真市/大和田駅)
最終更新日:2023/03/13


- 保険診療
近年、慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎などの改善を図る耳の手術が、以前に比べて手軽に受けられるようになってきている。医療機器の進歩により、日帰りでの手術が可能になったためだ。そもそも慢性中耳炎のように一度鼓膜に穴が開いてしまうと自然治癒で塞がることは難しいといわれている。そのため、今まで治らないと諦めて放置していた人が、手術を希望するケースが増えてきているそうだ。「症状が改善すれば、患者さんの生活も豊かになるでしょう」と話すのは「ばば耳鼻科クリニック」院長の馬場奨(ばば・すすむ)先生。繰り返し起こる耳垂れなどの症状改善や、聴力の回復も望めるため、よりアクティブに生活を楽しむことに役立ててもらいたいそう。今回は日帰りで行える耳の手術について、費用や術中の痛み、治療の流れなどを詳しく解説してもらった。
(取材日2020年11月17日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qどのような症状が、耳の日帰り手術の対象なのでしょうか?
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A
慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎の他、耳硬化症、耳小骨奇形などが、日帰り手術に対応しています。耳の治療方法は、直接薬を入れる点耳薬や内服薬によって症状を抑えていく保存療法が一般的ですが、それだけでは根本的な治療にはつながりません。耳の聞こえが悪い方や耳垂れなどの症状が繰り返し起こる方、炎症によって平衡感覚を失ってめまいがする方などには、手術をお勧めしています。中耳炎などによってできた鼓膜の穴をふさぐための手術である鼓膜形成術ならば30分~1時間程度、鼓膜の穴をふさいで、さらに病気のもとを取り除いたり、人工の耳小骨を入れたりする鼓室形成術などでも3~4時間程度で手術が可能です。
- Q耳の日帰り手術に伴う費用や痛みについて教えてください。
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A
耳の手術の多くは保険が適用されますが、高額療養費や医療費控除などの制度を利用したとしても、少ない金額ではありません。しかし、手術後は今まで治療を受けるためにかかっていた通院やお薬などのコストは必要なくなるはずですし、何より日常生活が豊かになることは間違いないと考えています。また、痛みに関しては、手術中は局所麻酔や眠たくなるようなお薬を使いますからほとんど感じないでしょう。手術後も痛みや出血、感染症などのトラブルも極めてまれです。万が一痛みが出ても、当院では24時間対応しているので、安心して手術を受けていただけると思います。
- Q貴院では耳の手術を安全に行うためにどんな工夫をしていますか?
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A
患者さんに安心して耳の手術を受けていただくため、手術室には複数台のモニターを設置し治療部位の状態を確認できるようにするなど、「医療の見える化」を図っています。また手術中はチャイムをお渡しし、痛みを感じた際にはすぐに医師へ知らせることができるようにしました。CTや聴力などの検査機器はもちろん、手術に使う道具や衛生管理機器などもすべて精度の高さを重視した先進のものを採用。特に内視鏡は細径でありながら解像度の高いものを導入しています。手術では内視鏡と顕微鏡を併用して使い、内視鏡で治療部位全体をさまざまな角度から確認し、顕微鏡で繊細な作業を行うことで、より低侵襲で安全に配慮した治療を提供しています。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診票を記入後、耳の状態もふまえて治療の相談
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持病や服薬中の薬などについて問診票に記入し、耳の中の状態を確認。手術を希望し来院していても、耳垂れや炎症などの症状が強い場合には先に治療を行う。その後、症状が落ち着いてから手術の判断がされる。手術をしたほうが良い場合には、院長よりその旨が伝えられ、その後に看護師と詳しい手術の話をする。あえて看護師やスタッフと話す機会を設けることで、院長には聞きにくいことも話し出しやすい雰囲気をつくっているそうだ。
- 2手術前検査の実施、および手術の流れについて説明
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手術日が決まれば、より詳しい検査を行うために再度来院。聴力検査やCT撮影のほか、心電図、血液検査、尿検査を受ける。より詳しく患者の状態を把握するため、時には医師が患者のかかりつけ内科医師に直接連絡することもあるそう。翌週に検査結果を確認するため、もう一度来院。その際に、手術の流れや先進機器を用いた治療内容などの説明を受ける。疑問や不安な点はこの時点までにしっかりと確認しておくことが重要。
- 3当日、徹底した管理のもと手術を受ける
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手術の1週間前から発熱チェックが必要。また、食事は手術の3時間前から制限される。当日は30分前に来院し、手術着に着替えて、メディカルチェックを受ける。手術中は点滴を行い、モニターで心拍数や酸素量などを常にチェックし、万が一の場合に備えているそう。手術中はまどろんだ状態ではあるものの、モニターに映し出される自分の治療映像を確認することもできるそうだ。
- 4手術後はリカバリールームにて休む
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手術後はおよそ1〜3時間かけて回復室にて休息する。個人差はあるが、リカバリー後もまだ完全に麻酔が抜け切れていないと考え、帰宅には付き添いを頼むほうが良いそう。術後は耳に詰め物をして包帯で圧迫されている状態。翌日に再度通院して異常がなければ包帯を取り、その後しばらくは小さなテープを貼った状態で過ごすことになる。吸収される糸で縫っており、抜糸もなく傷痕も小さく目立たないそう。
- 5経過観察のため、後日通院
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2週間後に通院し、耳の中のガーゼを取って状態を診てもらう。聞こえの状態が安定するまでは鼓膜形成術で1ヵ月半~2ヵ月、鼓室形成術は2~3ヵ月はかかる。2週間おきに通院して状態を確認する。