藤本 幸久 院長の独自取材記事
ちからまち歯科クリニック
(名古屋市東区/高岳駅)
最終更新日:2024/08/09

財界人や文化人に愛された美しい街並みを残す「文化のみち」。その中でひときわ目を引くモダンな白い建物が「ちからまち歯科クリニック」だ。開業前には一般歯科をはじめ、口腔外科や救命救急などを研鑽してきたという藤本幸久院長は、米国で学んだ経験を生かし、患者の多様なニーズに応える。「患者さんそれぞれの状態や、それに対しての多々ある治療方針をわかりやすく説明をすることが大切」と感じた勤務医時代の経験から、藤本院長は時間をかけてわかりやすく丁寧な説明を心がけている。真剣な言葉の中にもユーモアを忘れないサービス精神と、親しみやすい人柄がにじみ出る藤本院長に、クリニックの特徴や同院のコンセプトである「伝わる治療」などについて話を聞いた。
(取材日2024年5月2日)
口の状況を知ってもらうための「伝わる治療」をめざす
こちらの歴史について教えてください。

ここは歯科医師である父が開業していた場所で、父の引退後は別の先生に貸し出していました。その先生が引退されたこともあり、2014年に私が開業したんです。父は当時、保険適応の範囲内でできる限り良い治療が行えるように工夫するというポリシーが強かったようで、自由診療を希望する方でも、状態に応じて必要なければ断ることもあったと聞いています。父は患者さんのことを第一に考えて治療に携わっていました。私もその意志を受け継ぎたいという強い熱意を持っています。そのためパウダーを吹きつけながら行うメンテナンスも、当院は保険診療で行っています。
コンセプトである「伝わる治療」とは、どういった治療ですか?
開業時、私の診療への思いを言葉にしたのが「伝わる治療」です。これは勤務医時代の歯科診療の状況が影響しています。大学病院では、ご自身の病状や治療方針について説明を受けているにもかかわらず、きちんと理解していないまま入院している患者さんが大勢いました。歯科医師から手短に聞いただけでは理解できないとおっしゃるのです。一方で、患者さんが理解するまで説明しようとする歯科医師も少ない状況でした。そのため私が開業したら、わかりやすい情報提供の場にしたいと思ったんです。この思いから、動画や画像などを使ってわかりやすく説明する今の診療スタイルが生まれました。そのため当院では診療時間を長めに取っています。保険治療で2時間かけるケースもあるほどです。「自分の口の中を初めて知った」「治療の必要性が理解できた」などと言っていただけると、うれしいですね。
診療の特色を教えてください。

得意な治療はないというのが特徴かもしれませんね。勤務医時代には、口腔外科や救命救急など、さまざまな経験を積んできましたので、虫歯や歯周病の治療から、インプラントや顎関節症、審美歯科領域まで、多くの疾患に対応できます。患者さんのニーズに応えるためには、治療の幅を持つ必要がありますので、現在も勉強会などに積極的に参加しています。アメリカで学んだ経験も、技術の幅を広げてくれましたね。私が勉強をするのは、歯科医師としてできないことがあるのはすごく嫌だから。ただし、私が得意としていない分野はスペシャリストにお任せしたほうがいいと考えています。ですから、矯正歯科は専門の先生に来ていただいて対応しています。
「伝えることで救える命がある」と信じる
歯科医師としてのモットーは?

患者さんご自身の歯を生かせる治療です。そして治療後の状態を長持ちさせることが重要です。現在は歯科医療の進歩もあり、インプラントなどの人工の歯も質が良くなってきましたが、天然の歯に勝るものはありません。生涯にわたり、ご自身の歯を使ってもらうためには、歯磨きなど毎日のケアがポイントで、歯科医師と患者、歯科衛生士などが一緒に頑張らないといけません。患者さんご自身にもケアについて考えてもらうことが、何よりも大切なのです。一般的に歯科医院というのは患者さんにとって行きたい場所ではないでしょう。通院しやすい環境にするためには、「あそこだったら行ってもいいかな」と思えるようなクリニックにしないといけませんよね。30年後、40年後に「受診して良かったな」と感じていただけるような治療を提供していきたいです。
診療の際に心がけていることは?
歯科医師である私の役目は、患者さんが希望する治療後の姿をイメージしていただき、気持ち良く治療に向かってもらうこと。ここで忘れてはいけないのが、患者さんは必ずしも時間をかけたより良い治療を望んでいるとは限らないということです。中には「口を開けているのがつらい」と訴える方もいらっしゃいますからね。また、良い治療は患者さんによって異なります。「とにかく費用を抑えたい」「費用はかかっても、根本から治したい」という人では、治療内容はまったく違うものになるでしょう。患者さんが何を悩んでいるのかを見極め、ご希望をお聞きした上で、多くの選択肢を提案し、お互いに納得した上で治療を開始しています。選択が難しい時は「自分の家族だったら?」と立ち返ることを大切にしています。
印象深い患者さんとのエピソードはありますか?

大学病院の救命救急科にいた時、自殺を図った高齢女性が搬送されてきました。その方は一命を取り止めた後に精神科で入院されていたのですが、歯科口腔外科を受診された時にお話をしたら、自殺の理由が明らかになりました。歯科医院をたらい回しにされたあげくに、酷いことを言われ「自分は死ぬんじゃないか」と思ってしまい、仕事も手につかず、食べ物も喉を通らず、体重が30kg台になるほどまで思い詰めてしまったのです。つまり追い詰められてしまった原因は、歯科診療だったのです。お口の中の気になる点について説明すると、突然ぼろぼろと涙を流し「これだけ説明してくれていたら私、思い余ることもなかったのに」とおっしゃいました。その後は本来の陽気な人柄に戻られました。これが伝えることの大切さを学んだ、「伝わる治療」の原点です。
患者と一緒に年を取る「町の歯医者さん」に
スタイリッシュな建物や内装にこだわりが感じられます。

私は昔ながらの日本家屋で育ちましたが、これが実に住みづらく、小学生の頃には住みやすい家を追求するようになっていました。そんな建築好きがたたって、何度も図面を見直し、当院の着工をするまでに3年かかりました。というのも、患者さんはもちろん、私やスタッフも居心地が良い場所にしたかったからです。歯科へのイメージとして「独特のにおいと音が気になる」というご意見もありましたので、香りや音響にもこだわっています。また、院内で使うすべての水はオゾン水を採用し、処理能力にこだわった空調システムを導入しました。口腔内CCDカメラや、歯の硬さなどを解析するためのレーザー機器など先進的な機器も、患者さんへの視覚的な説明に一役買ってくれています。さらにセラミックを削り出すための機械は歯科技工所用のものです。CTやスキャナー、CAD/CAMシステムなどと連動し、妥協のない補綴物を作るよう心がけています。
スタッフはどのような方が多いですか?
私が知らないうちに勉強会に参加するなど、患者さんのために、何ができるのかをいつも考えてくれています。先日も「休日は何をするの?」と聞くと、「勉強会に行くんです」と。また、当院では定期的に他のクリニックと合同勉強会を開催しています。というのも、大きなセミナーだと、一人ひとりが知りたいことの詳細までは質問できないこともあるからです。こちらもスタッフ間でテーマを決めるなど、能動的に進めてくれています。私がスタッフたちに言っているのは、「笑顔で毎日楽しく」という当院の理念一つだけ。楽しくない雰囲気は患者さんに伝わります。「これがしたい、あれはしたくない」と思った時には、周りの人々が「笑顔で毎日楽しく」過ごせるかを考えればいい。仕事に趣味にと頑張っているスタッフみんなをリスペクトしています。
読者にメッセージをお願いします。

当院はカウンセリングが長いと感じる方もいるかもしれませんし、「いつも混雑している印象」とのお声も聞きますが、むしろ気軽に何でも相談してほしいですね。これからも患者さんとのコミュニケーションを大切にしつつ、技術向上に努めます。ここに来れば安心してもらえるような、「地域の歯医者さん」「一緒に年を取っていくかかりつけ」をめざしていきます。
自由診療費用の目安
自由診療とはホワイトニング/3万3000円~、インプラント治療/22円~、矯正/22万円~