薬による治療が困難な過活動膀胱
ボツリヌス療法の有用性
かとう腎・泌尿器科クリニック
(平塚市/平塚駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
最近やたらトイレが近くなった、時々急に我慢できない尿意に襲われる、などと人知れず悩んでいる人も多いのではないだろうか。これらの症状は過活動膀胱という疾患の可能性もある。「かとう腎・泌尿器科クリニック」の加藤忍院長は「過活動膀胱は生活の質を下げる大きな誘因です。生活に支障を来していると感じたら、早めに泌尿器科を受診してください」と話す。過活動膀胱の治療は投薬治療が一般的であるが、投薬治療で改善が期待できない場合に有用な新しい治療法として、2020年から保険適用となったボツリヌス療法が注目されている。どのような治療法なのか、ボツリヌス療法に注力し、泌尿器科の医師らに指導・講習会なども行う加藤院長に話を聞いた。
(取材日2021年2月19日)
目次
注射によって膀胱の異常な収縮を抑えることをめざす治療法。2020年から保険適用に
- Q過活動膀胱とはどのような病気でしょうか。
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A
▲常にトイレのことが気になり、生活の質を下げる要因となるという
過活動膀胱は排尿障害の一つで、我慢できない尿意が突然起こる尿意切迫感や、日中、何回もトイレに行く頻尿、夜間頻尿、場合によってはトイレに間に合わず尿が漏れる切迫性尿失禁といった症状があります。常にトイレのことが気になって好きなことができないことも多く、生活の質を下げる誘因となります。過活動膀胱の原因は、加齢による膀胱の収縮機能低下や、男性の場合は前立腺疾患、女性の場合は出産や加齢による骨盤底筋の機能低下、また神経性の疾患などさまざまで、まだ不明な点も多い疾患です。一般的に内服薬による治療が行われ、膀胱の拡張を促進する目的のβ3受容体作動薬や膀胱の過剰な収縮を抑える目的の抗コリン薬が使用されます。
- Qボツリヌス療法という治療法があると聞きました。
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A
▲新しく保険適用となり、注目されているボツリヌス療法
ボツリヌス療法は、過活動膀胱に対する新しい治療法です。ボツリヌス菌が作る天然のたんぱく質(A型ボツリヌス毒素)から精製された薬を膀胱の筋肉に注射して、膀胱の異常な収縮を抑えることをめざします。日本では2020年から保険適用になっていて、外来で治療可能です。具体的な方法は膀胱に局部麻酔を行い、膀胱の筋肉に20~30ヵ所注射します。注射に要する時間は10~20分程度です。作用は通常2~3日で表れることが想定され、4ヵ月から8ヵ月にわたって持続が期待できます。その期間を過ぎるとまた改めて治療が必要となります。
- Qどのような人がこの治療を受けられるのですか。
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A
▲精密な検査や診査診断を行い、治療ができるか判断している
投薬治療を12週間続けて結果が得られない場合、難治性過活動膀胱と診断されますが、この難治性過活動膀胱の人や、副作用などの理由で投薬治療の継続が難しい場合に適用されます。ボツリヌス毒素に対してアレルギーのある人や尿路感染症にかかっている人、重度の排尿障害があり自己導尿を行っていない人、全身性の筋力低下を起こす病気がある人、妊娠中・授乳中、妊娠している可能性のある人などはこの治療を受けることはできません。また、抗血栓薬や抗凝固薬など何らかの薬を飲んでいる人や慢性呼吸器疾患のある人も注意が必要です。いずれの場合も当院では、精密な検査や診査診断を行い、適用できるか否かを厳密に判断しています。
- Q副作用などはあるのでしょうか。
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A
▲トラブルが起きないよう、術後の経過観察をしっかりと行う
尿路感染や残尿の増加、尿閉といった症状が起こることがあります。尿の濁りや排尿痛、頻尿、残尿感がある、尿が出づらいなどの症状が見られたら、すぐに医師に相談してください。当院ではそうしたトラブルが起きないよう、術後の経過観察をしっかり行っています。治療の翌日に膀胱の状態などを確認し、2週間後に残尿量を測定して治療の成果を確認しています。その後は必要に応じて定期的に残尿量測定などを行っています。
- Qこちらのクリニックならではの工夫やメリットを教えてください。
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A
▲安心につながるよう、すぐに相談できる体制を整えている
このボツリヌス療法は日帰りで行うことができますので、クリニックでこそ受けるべき治療だと思います。麻酔も軽い局部麻酔で済み、合併症のリスクも低いと考えられています。重度の過活動膀胱で困っている方に対して、クリニックでスピーディーに治療を提供できる点が大きなメリットだと思います。ただ最も大切なことは、治療後のフォローアップをしっかり行い、患者さん一人ひとりに丁寧に応えることです。当院では、すべての患者さんに私の携帯電話番号をお知らせして、何か心配なことが起きたらすぐに相談できる体制を整えています。いつでも相談できる、いつでも診察できる、ということが患者さんの安心感につながると思います。