整形外科は初期診断が重要
触診や視診で適切な診断に努める
須藤整形外科クリニック
(大和市/高座渋谷駅)
最終更新日:2023/05/16
- 保険診療
整形外科の領域では負傷した部位と異なる場所に痛みが生じることも珍しくない。これも、整形外科の診断が難しいとされる理由である。しかし、早期に適切に診断し治療を開始しないと、痛みが改善しないばかりか、痛みの真の原因である病気が悪化する危険もあるので注意が必要だ。さまざまな総合病院で整形外科として活躍、日本整形外科学会整形外科専門医でもある「須藤整形外科クリニック」の須藤英文院長に、整形外科治療における初期診断の重要性について詳しく話を聞いた。
(取材日2015年1月5日/再取材日2023年3月30日)
目次
長引く痛みは真の原因を見逃しているサインの可能性あり。整形外科は初期診断が鍵
- Q整形外科診療の初期診断ではどんな点に注意が必要ですか?
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A
患者さんが痛みを訴えている部位が必ずしも負傷しているわけではないという点に注意しなくてはいけません。例えば、椎間板ヘルニアでは首ではなく、腕や背中に痛みが生じることも多々あります。骨以外のケガも非常にわかりにくいので要注意です。エックス線検査で確認できるのは骨のケガだけで、それ以外は見落とされるリスクもあります。このような状況下で適切な診断をするには、できるだけたくさんの可能性を視野に入れて診療に臨まなければいけません。限られた診察時間の中で患者さんの全身をくまなく診察し、痛みの真の原因を突き止めるのが大事です。医師の経験やセンスが問われますね。
- Q先生は初期診断で何を大事にしていますか。
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A
大事にしているのは触診です。初期診断ではまず問診やエックス線検査を行いますが、それだけではわからないことも多い。一例をあげるならば、膝の痛みの原因として、エックス線検査で判明するのは骨折だけ。半月板損傷や靱帯の損傷まではわかりません。そこで、当院では必ず触診をするように徹底しています。患者さんが痛みを感じるのは、どんな動作をした時か、どの筋肉や靱帯が緊張するように負荷をかけた時か調べるのです。合わせて、視診にも注力しています。例えば、頸椎椎間板ヘルニアの疑いがあるなら痙性歩行という独特の歩き方をしていないか確認する。診察前後含め患者さんの全身の動きをしっかりと観察していかなければいけません。
- Q初期診断で間違えないためには何がポイントでしょうか。
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A
腰椎椎間板ヘルニアを例にしてお話ししましょう。腰やお尻に痛みがありヘルニアと診断されても、実は誤診だったというケースもあります。梨状筋症候群や卵巣膿腫などの疾患が原因で坐骨神経痛を引き起こしているのに、エックス線検査だけでヘルニアと診断されてしまうこともあるのです。このため、当院ではヘルニアの疑いがある場合、できるだけMRI検査を受けていただくようにしています。また、うつぶせに寝て膝を曲げたり、あおむけに寝て足を持ち上げたりした時に痛みがないかもチェック。このような体勢は坐骨神経や大腿神経が引っ張られるため、腰椎椎間板ヘルニアならば強い疼痛を感じるはずだからです。
- Q初期診断で見逃しがちな症状にはどんなものがありますか。
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A
膝の痛みが強く変形性膝関節症と診断されていた患者さんが、実は腰の神経に問題を抱えていたという例もあります。一方、捻挫や打撲と診断されたものの、本当は靱帯損傷だったというケースも少なくありません。また、高齢者に多いのが圧迫骨折の見逃しです。例えば、転倒した高齢者が「胸が痛い」と訴えれば肋骨付近のエックス線検査をして「骨折なし」と診断されてしまうにもかかわらず、実は胸以外の脊椎圧迫骨折だったということも。高齢者の圧迫骨折は「関連痛」といって、折れている骨とは別の場所が痛くなる可能性があるので注意が必要です。疑いがある場合には、やはりエックス線検査だけではなくMRI検査も受けてほしいですね。
- Q適切な初期診断のための検査体制などについて教えてください。
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A
エックス線検査だけではなく超音波検査ができるように設備を整えました。また、脊髄障害、末梢神経障害の診断をするために、人体の生理的な反射を利用した腱反射も極力チェックするようにしていますね。さらに、当院には複数の理学療法士が在籍しているのも強みです。理学療法士は医師よりも患者さんと接する時間が長く、いろいろな話を聞いてフィードバックしてくれるので、参考にしています。患者さんによっては内科、神経内科などでの検査も必要になってきますが、迅速に信頼できるクリニックを紹介します。CT検査を依頼している病院もありますし、適切な初期診断のためには病診連携も欠かせないといえるでしょう。