川西 順 先生の独自取材記事
鈴鹿腎クリニック
(鈴鹿市/鈴鹿駅)
最終更新日:2025/06/10

地域に密着した透析クリニックとして約半世紀の歴史がある「鈴鹿腎クリニック」。早期の腎臓病から末期までの治療、さらに透析療法まで対応している。河出恭雅理事長と岩島重二郎院長が内科の診療を、伊藤英明子(えみこ)副院長が皮膚科の診療を担当。そこに2024年12月、血管外科専門の川西順先生が加わった。大学病院や総合病院で消化器外科手術など外科全般の経験を積んだベテラン医師で、透析療法におけるシャントの手術・治療にも多く携わってきた。川西先生の着任により、これまで同法人の専門クリニックをはじめ他院に依頼してきたシャント造設手術などが同院でも可能に。川西先生は「着任して約半年、設備も整いましたので、必要な方への手術をしっかり行っていきたい」と朗らかに抱負を語ってくれた。
(取材日2025年5月8日)
外科手術の豊富な経験を生かしシャント造設手術を実施
先生のご経歴や着任の経緯について教えてください。

愛知医科大学卒業後、愛知医科大学病院第二外科に所属し1年学んだ後、岐阜県高山市の病院に4年勤務しました。消化器外科の手術に多く携わり、血管外科としても動脈硬化や下肢静脈瘤など血管の病気の治療や、透析療法におけるシャントの手術・治療を行ってきました。実はこの高山の病院時代に河出恭雅理事長との出会いがあったのです。一般診療の基礎を学ぶ中で、河出理事長には内科について多くのことを教えていただきました。その後、大学に戻り、ドイツに留学。学位取得後、岐阜県の土岐市立総合病院に勤務しました。数年前に河出理事長に再会して以降、たまにお会いするようになっていて、その中でお声がけをいただき、2024年12月、当院に着任しました。
透析におけるシャントの手術とはどんなものですか?
シャントとは、動脈と静脈をつなぎ合わせた血管のことです。血液透析は体内の老廃物を除去することが目的ですが、そのためには1分間に180ccから200ccといったかなりの量の血液を体外に取り出し透析装置を通して浄化しなければなりません。皮膚の表面に近い静脈に針を刺してもそれだけの量の血液の確保はできず、かといって深い所にある動脈に透析の度に針を刺すわけにもいきません。そこで静脈に十分な血液が流れるように動脈と静脈をつなぐための手術を行うわけです。シャントは、透析治療においては「命綱」と呼ばれる特別なもの。シャントには複数の方法がありますが、大きくは、患者さん自身の動脈と静脈をつなぐ方法と、ご自身の静脈の代わりに人工血管を用いる方法があります。
診療の流れについて教えてください。

河出理事長と岩島院長が内科の診療をする中で、腎臓の機能を確認します。機能が著しく低下し、透析が必要になるだろうという段階で先生方から連絡が入ります。そうなればこちらで超音波検査にて血管の走行を確認、どんなシャントが適応かを診断し、シャント造設の手術に進みます。シャントを作ってすぐ透析開始という場合もありますが、静脈が太くなって血流が多くなるまで時間がかかる場合もあり、患者さんの状況によって2週間ほど待つこともあります。シャント手術の時間も患者さんによりますが、通常1時間から1時間半ほど、人工血管ですと2時間から2時間半といったところでしょうか。当院での手術は局所麻酔で日帰りとなります。入院が必要な患者さんの場合は総合病院などにご紹介します。
しっかりした多職種連携で患者を支える
血管外科の川西先生が加わられたことでメリットが生まれたのではありませんか?

もともと当院でもシャント造設を終えた後のシャント管理や治療を行っていましたが、シャント造設に関してはこれまで、当法人の四日市腎クリニック・シャントセンター、あるいは名古屋のクリニックなど他の医療機関にお願いしていたと聞いています。当院でシャント造設ができるようになったことで患者さんに対して早めの対応ができるようになったのではないでしょうか。それがメリットということであればうれしいです。今後、当院に通院されている患者さんで透析に移行するとなった場合は、通い慣れた当院でシャント手術を受けてそのまま透析療法も受けていただけることになります。
新しい環境で手術に取り組むのは大変だったのでは?
そうですね。最初は慣れないこともありましたが、理事長や院長をはじめ、スタッフの皆さんが親身になっていろいろ積極的に支えてくださいました。ここに来て感じたのは、働く皆さんの一体感です。大きな病院でももちろんチーム医療は行われていますが、ここではより強い連携を感じました。例えば臨床工学技士さんは機械的なことを、看護師さんは患者さんのことを、と分担するのが一般的ですが、ここではどの職種の方々も同じように患者さんとの距離が近く、話しやすい雰囲気があると思いました。患者さんも、医師には「大丈夫です」とおっしゃいますが、スタッフには本音が言いやすいということもあるようです。ですからスタッフ皆さんから患者さんの情報を聞くことは大切にしています。またシャント手術においては、手術介助の経験がある看護師が2人在籍していて交代でついてくれるので頼もしく思っています。
治療の際に気をつけていることはありますか?

当たり前のことですが、患者さんが透析に来られるたびに血液がきちんと流れているかどうかをしっかり確認しています。シャントは狭窄を繰り返すこともあり、中には年に何度もカテーテルで治療するという方も。針が刺せて血液が流れていて透析がうまくできていても、実はある箇所が細くなっていて、ある日突然詰まってしまうということも起こり得るので、必ずいつも丁寧な診察をするようにしています。また手術の際は、積極的に声かけをしています。どこかが痛くて我慢をしていて、我慢できなくなって動いてしまうと危険ですので、痛いことや違和感があることなどは早めにお伝えいただき、対応できるように気をつけています。
一体感あるクリニックの一員として日々着実に
改めて先生が感じられている、こちらのクリニックの良さとは?

先ほどもお話ししましたが、医師とスタッフの一体感があり、さらに皆さんが優秀なところが素晴らしいと思っています。臨床工学技士さんや看護師さんは透析の際の手際が良く、患者さんをよく見てくれていると感じます。医師とは違う視点を持っているので、スタッフの皆さんが気づいたことや提案してくれたことを聞いてなるほどと思って、すぐ対応することもあります。ここはリハビリテーションも行っており、スタッフの方、さらに栄養士の方、放射線技師の方、事務スタッフの方など皆さんが、着任当初の私に対していろいろ丁寧に教えてくださいました。今もその印象は変わらず、ありがたいことだと思っています。
そもそも先生が外科を専門にされたきっかけは何ですか?
中高生の頃、天才的な外科医師が主人公の漫画を読んだことです(笑)。ただ、医学部に進んだものの、私は手先が特別器用というわけではなく、工作が得意だったわけでもありません。それで本当に外科に向いているのか悩んで、大学時代に柔道部の先輩に相談したことがあったのです。そうしたらその先輩が「手先は関係ない。大事なのは知識だ」と。手術では何が起こるかわからず臨機応変な対応を求められることも起こります。そのときに自分の持っている知識を生かして素早く適切な診断ができるかどうかが大事ということですね。メディアで紹介されるような「神の手」の医師はもちろん素晴らしいですが、やはり皆さん、それ以前に十分な知識と判断力をお持ちなのだと思います。知識は自分次第なので、日々アップデートに努めています。
今後についてお考えをお聞かせください。

手術に必要な設備を徐々にそろえていただき、今ではほぼどんな術式でも対応できるようになってきたと思います。これまで培った経験と知識を十分に生かし、必要な方には手術を行い、適切な治療を進めたいですね。繰り返しになりますが、当院の強みはそれぞれの職種のスタッフがそれぞれの専門性を生かしつつ、しっかり連携していること。皆で一丸となって患者さんを支えていく、という強い思いを感じます。この雰囲気を大切に、自分もその一員として、今後も着実に一つ一つの仕事をこなし、一人ひとりの患者さんに真摯に向き合っていきたいと思います。