多汗症の日帰り手術。代償性発汗に配慮した片手からの慎重な治療で、日常生活を過ごしやすくすることが目標

Q多汗症について教えてください。

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▲清潔な手術室。ここで多汗症の手術を行う

汗には温熱性発汗、味覚性発汗、精神性発汗という3つの種類があり、手のひらの多汗症は精神性発汗です。緊張した時などに交感神経が活発になり、手のひらや足の裏などから、したたり落ちるほどの汗が出ます。物心ついた頃に気づくことが多く、「ピアノを弾いていると鍵盤が濡れる」、「テスト解答時に用紙が濡れてしまう」、「学校行事で手をつなぐのがつらい」、「買い物時の金銭受け渡しが苦手」など、精神的な苦痛も伴います。しかしこれは交感神経の反応によるものなので、生まれつきの症状であり、本人の意思では制御できません。だからこそ皆さん深く悩まれ、「受験前にどうにかしたい」と中学生・高校生の方が来院されることもあります。

Q治療法にはどのようなものがありますか？

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▲多汗症について、丁寧に説明する小田院長

塩化アルミニウムの塗り薬、手や足に電流を流すイオントフォレーシス、プロパンテリン臭化物の内服薬があります。いずれも対症療法で、多汗症の体質そのものを改善するものではありません。これらの対症療法で効果がない場合は手術が選択されます。当院では胸腔鏡を使用した日帰りでの手術を行っており、福岡県内・九州一円のみならず大阪・京都・名古屋・広島など遠方からも多くの方が来院されます。そういう方はすでに飲み薬や塗り薬をすでに試し、それでも駄目だ、根本から治したいからという強い意志をお持ちの方が多いですね。もちろん対症療法でいい、まずは相談をしたいという方もおられるため、まずは気軽に相談いただきたいと思います。

Q多汗症の手術の特徴や、注意点を教えてください。

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▲交感神経支配と発汗部位の関係について説明

手術の最大のデメリットが、暑いときに背中や太ももなどから過剰な汗が出る代償性発汗です。ブラウスやズボンがびっしょり濡れて手術を後悔することもあります。当院では代償性発汗をできる限り少なくするため、胸腔鏡による第4肋骨上での低位交感神経遮断術を行っています。代償性発汗は個人差があるため、まずは利き手片側の手術を行い、代償性発汗の程度を確認してから、もう片方の手術を行うかどうか判断するとよいでしょう。片側手術では代償性発汗の量は半分となり、ブラウスやズボンが濡れることはほとんどありません。両側または片側手術を受けるかは患者さんの判断ですが、慎重に片側ずつ手術をすることをお勧めします。

Q初診時と、手術の流れを教えてください。

A

▲3mmの胸腔鏡を用いて手術を行う

当院の特徴として、手術を受けることを前提に受診される方がかなり多い点が挙げられます。そういった方は当院のホームページをすでにしっかりと読み込んでおられることが多いですね。遠方の方であれば事前にメールなどで連絡をいただき、手術の前日に福岡に来てもらって診察・術前検査をし、近隣の提携したホテルに宿泊し、翌日手術を受けていただきます。胸腔鏡手術は全身麻酔ですが、手術後2時間程度で胸部エックス線を撮影し、軽いお食事を取ってもらってから退院となります。手術翌日に診察をし、その後ご帰宅いただきます。近郊の方は、外来初診時に手術をご希望されれば手術日を予約しますが、日帰り手術の流れは同じです。

Q手術後の通院について、また注意点などをお聞かせください。

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▲術後2～3時間で退院、翌日からシャワー、翌々日から入浴可能

手術の傷は3mmほどで、痕もほとんど残りません。またテープで固定するため抜糸の必要もなく、手術翌日からシャワー、翌々日からは入浴も可能です。原則として手術後数日以内に再診となりますが、遠方の方は前述したとおりです。とはいえ、胸部の手術ですから、手術直後からの激しい運動は控えてください。中学生・高校生・大学生で部活動に入っている患者さんもいますが、術後1週間ほどは激しい運動は避けてくださいとお伝えしています。それ以外の日常生活を送っていただくこと、つまり通常の学校生活・仕事などに問題はありませんので、安心してお過ごしください。