アレルギー検査は体質を調べ
暮らし方を知るためのもの
クリスタルファミリークリニック
(東海市/太田川駅)
最終更新日:2021/10/12


- 保険診療
アトピー性皮膚炎や喘息など、さまざまなアレルギーに悩む子どもはどんどん増えている。どのようなタイミングで、どのような治療をしていけばいいのだろうか。それはいつまで続くのだろうか。それらを知る手がかりとして、血液中の抗体を調べるアレルギー検査がある。ただ興味深いことに、検査によってすべてのリスクを遠ざけることもできなければ、好ましからぬ結果が出たからといってショックを受ける必要もないのだそう。アレルギー検査とは、体質を知り、これからどうやって快適に生活していけば良いのかという指針を知るためのものであり、それにはサポーター役の医師が必要だ。子どもたちを慈しむように優しく見つめる「クリスタルファミリークリニック」の桑原三華先生に、検査について聞いてきた。
(取材日2017年12月15日)
目次
検診・治療前の素朴な疑問を聞きました!
- Qまずアレルギーとはどんなものですか?
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A
アレルギーは、私たちの体内に入ってきた物質を「体を攻撃する異物」であるとみなし、体が反応してしまう状態を指します。どんな症状が出てもおかしくはありませんが、年齢に応じて出やすい部位はあります。赤ちゃんのときはアトピー性皮膚炎による湿疹、少し大きくなって3~5歳くらいでよく見られるのは喘息、小学生くらいになるとアレルギー性鼻炎と呼ばれるものが増えてきます。成長とともに免疫力がつき症状は治まります。しかし、大人になって精神的ストレス、妊娠、風邪など他の病気によって体の免疫機能が低下した時に再び出ることがあります。子どもの時にしっかり治しておくことが、成人後の再発を防ぐ一つの方法でもあります。
- Q検査を受けるべきタイミングについて教えてください。
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A
そもそもアレルゲン検査は触れていないものに対しては出ません。ある物質に対するアレルギー体質だったとしても、それを食べたり触れたりしたことがなければ陽性反応は出ません。例えば「そば」アレルギーでないことを調べてから食べさせたいという親御さんがいます。またじんましんが出たから検査してくださいと言われることもありますが、まだ食べたことがない、またはそれがその物質との初めての接触なら、検査ではまだ出ないのです。小さな子どもの採血検査は危険も伴います。1歳を超えるくらいまでは、症状が強くなければ、検査よりもまず症状に対する治療をしながら様子を見ます。3歳を超えても症状が続くようならしっかり検査をします。
- Q検査を受ける意味について教えてください。
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A
命に関わるアナフィラキシー症状が出る場合にはすぐに検査を受け、アレルギー反応が出る物質を見極めることが必要です。命を守るためにその物質を日常生活から除去し、万一症状が出たときのためのお薬を準備し、どう対応するかまで指導していきます。しかし、それ以外のアレルゲン検査は、患者さんが自分の体質を知って、これからどう暮らしていくかを知ることが目的です。アレルギーを起こす物質を避けることで、症状が出ないようにし、他の人と同じように暮らしていくことが可能になります。重要なのは結果に一喜一憂しないこと。自分の体質を知って、どうすれば快適に暮らせるかを知ることが大切なのです。
検診・治療START!ステップで紹介します
- 1問診・診察
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まず、どんな症状が出ているかを詳しくヒアリングし、その症状がアレルギー性の反応かどうかを診察していく。例えば、アトピー性皮膚炎だと思った症状が、実は接触性皮膚炎であることも。次に症状の「度合い」を診る。この程度ならすぐ治りそうだと医師が判断する場合は、時間のかかる検査よりもまず治療を勧めることもある。アナフィラキシーショックのリスクを疑うケースでは迅速な検査が求められる。
- 2検査についての説明
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アレルゲン検査での「陽性」の意味をしっかり理解できるように解説。検査結果がすべてではないこと、全項目を測ることはできないということ、検査は体質を調べるものであり、症状の改善は可能であることなどを説明。結果が陽性だとしても、ネットの情報や保護者の独自の解釈で受け取らず、今後の指標として受け止めてほしいということ、そして一緒に治療していくことを話す。その上で「検査を受けたい」という場合に実施する。
- 3血液検査を受ける
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血液中に特定の物質に対して「IgE抗体」という免疫反応に関わる抗体があるかどうかを調べる検査。一度に調べられる物質は十数項目。そのため事前の診察である程度項目を絞る。3歳以下の子どもの場合は、ハウスダストやダニなど、よくあるアレルギー項目を10種類程度あらかじめ組み合わせたものに、個別に疑わしいものをプラスして調べる。同院では39種類の項目を一度に調べるセットも用意するが、これは主に大人用だそう。
- 4検査結果をもとに今後の治療方針を決める
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検査は2週間ほどかかる。結果が陽性だったとしても、完全除去が必要とは限らない。陽性の項目であったとしても、気をつけておけば良い程度である場合もあれば、陰性であったのにアレルギー症状が出てくる場合もある。検査結果をしっかり解説し、抗体がつくられるとアレルギー症状は改善していくが、治療には時間がかかることを伝え、アレルゲンが除去されたのかを調べるタイミングの図り方などを相談し、治療の方針を立てていく。
- 5必要に応じて通院治療
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症状と段階に合わせて、外用薬や内服薬を処方し、適切な頻度での通院を促す。例えば皮膚湿疹で炎症がある場合はステロイド剤を塗る箇所、量、期間まで指導し、再受診のタイミングも指示する。最終的にはステロイド剤を中止し、保湿剤だけで元の肌の状態になるところまでを見届ける。アレルギー物質については必ずしも全面摂取禁止ではなく、「アレルギー日記」をつけながら除去、再開、量の調整などを行う。