アトピー性皮膚炎や食物アレルギー
アレルギー症状を緻密に分析
おながわ小児科アレルギー科クリニック
(福岡市西区/橋本駅)
最終更新日:2024/02/09
- 保険診療
アレルギーと言っても、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、喘息、アレルギー性鼻炎、花粉症、じんましんなど症状や重症度は一人ひとり異なる。治療、そして予防で大切なのは、アレルギーを引き起こす原因を明らかにすること。女川裕司先生が院長を務める「おながわ小児科アレルギー科クリニック」では、プリックテストといった皮膚アレルギー検査や血液検査を適切に行い、年齢、環境因子などの因果関係をひもとくことで、早期治療、長期的な予防を行っている。「今年の結果をベースに来年の生活を考えれば、アレルギーを理由にスポーツや学校行事を諦めなくて良いんですよ」と院長は言葉に力を込める。「親御さんが主治医になり、私たちがそのサポート役になることが理想です」と語る院長に、アレルギー疾患の診療方針などについて話を聞いた。
(取材日2024年2月1日)
目次
アレルギーの因果関係を明らかにし、一人ひとりの症状に合わせ将来を見据えた治療を実施
- Qアレルギー疾患に対するクリニックの診療方針について伺います。
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A
アレルギー治療の目的は早めの無症状化です。患者さんに応じた長期的な治療方針を一緒につくっていきます。最終的には本人や保護者が主治医になることが理想です。例えば患者さん方が生活の中で積極的に食事の摂取方法などを工夫できるように治療の段階から丁寧な説明をしています。その中でも大切なことは、完璧を求めすぎないことです。完璧を求めすぎると、症状が出た際に「どうして症状が出てしまったのだろう」とご自身やお子さんを責めてしまうことにもなりかねません。しっかり治療と向き合いながらも、ある程度寛容になることが、長期的な治療には大切です。その失敗を含めた経験を共有し、サポートすることが私の役目だと思っています。
- Qアレルギー検査にはどのようなものがありますか?
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A
検査結果は、予防と治療のために必要な情報源です。アレルゲン検査には、血液と皮膚を用いるタイプがありますが、主として前者の血液検査を行っています。当院では2023年1月から12月までに1200件ほどの検査を実施しました。1回に13項目のアレルゲンが保険診療で調べられますので、一人ひとりに合った組み合わせを提案します。大切なのは、検査結果とそのアレルゲンによる因果関係を検討することです。長年の経験からあくまで結果を参考にしてアレルギーの治療を進めています。検査は生後5ヵ月から受けられますし、アレルギー疾患の診療にはかなり有益だと思われますので、まず検査を受けていただくようお勧めしています。
- Qアレルギー疾患を予防するにはどうすればいいですか?
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A
以前は食物、特に卵白の除去が予防になるとの考えがありましたが、最近は保湿や皮膚の炎症を抑えることで、皮膚からアレルゲンが体内に侵入するのを防ぐことが大切だと考えられています。このように皮膚状態とバランスの良い食事が予防のポイントです。とはいえ、患者さんの体質やライフスタイルによっては、ダニアレルギーや喘息、アレルギー性鼻炎を発症する可能性もあります。その場合は環境整備と抗アレルギー薬が予防になります。保湿や腸内環境の改善がアトピー性皮膚炎の予防につながるのではないかという研究も進んでいます。
- Q食物アレルギーの治療のポイントについて教えてください。
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A
食物により誘発される食物アレルギーの治療の基本は、検査などで誘因抗原と確定した食物を食べないこと、すなわち食物除去が原則です。以前は完全除去を続ける治療が多かったですが、最近ではある程度期間をあけ、摂取可能な食品を負荷試験で確認しながら少しずつ除去を解除するといった適切な診断に基づく必要最低限の食物除去が耐性獲得の早道であるといわれています。小児の食物除去においては、栄養面も当然考えますが、保育園や学校などによる給食の問題もあります。また季節性や体調にも左右されますし、除去していた食物を食べたがらなくなる場合も多々あるため、保護者の方の考えをお聞きしながら、総合的に判断して除去を進めています。
- Qアレルギー疾患として多い喘息の治療について教えてください。
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A
喘息症状には、その本態である慢性の持続性炎症の治療と重症度に合った薬の処方で発作のコントロールを図ることが重要です。具体的には、本人に合う抗ロイコトリエンなどのアレルギー薬、ステロイド薬などの抗炎症剤と、交感神経刺激剤などを用いて日常生活に支障と制限を来さないことを目標にします。そのためには、なるべく初期治療で発作のコントロールを図ることが大切です。喘息の寛解、つまり発作がない安定した状態を保つには、無症状期間をいかに長くするのかが鍵を握ります。早めの受診で重症度と発作の原因を分析していき、発作を起こさないようにしていくこと。また、起きても軽い発作で済むよう、薬の取り置きも必要になります。