進行してしまった虫歯でも
歯の神経を残すための歯髄保存療法
戸渡歯科診療所
(長岡京市/長岡天神駅)
最終更新日:2024/05/15
- 自由診療
虫歯が歯の内部にまで進行した場合、通常は俗に“神経を取る治療”などと呼ばれる根管治療を受けるケースが多い。根管治療とは、虫歯菌によって炎症を起こした歯髄を取り去る治療だ。歯髄を取ると痛みを感じる神経が取り除かれる一方、歯髄には多くの毛細血管が通っているため、血管を通した栄養が行き渡らなくなり、歯が弱くなったり、変色したりするなどデメリットがある。さらに、「歯の神経を取ることは歯を失うことにつながるケースもあります」と、「戸渡歯科診療所」の中智哉院長。同院では、ある程度進行した虫歯に対しても、神経を取らずに治療を行う歯髄保存療法を提供している。歯髄保存療法の特徴やメリット、さらに実際の治療の進め方などについて、中院長にわかりやすく解説してもらった。
(取材日2024年3月8日)
目次
より精度の高い処置のためにマイクロスコープを活用。ラバーダムで治療の安全性にも配慮
- Q歯の神経を残すための治療について教えてください。
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A
虫歯治療は進行度合いによって治療法が異なります。歯の神経にまで虫歯が達していない場合は、虫歯を削り取って詰め物をします。神経まで進行している場合は、一般的に“神経を取る”と呼ばれる根管治療を行うのが一般的です。一方、虫歯が歯髄に達している状態でも、神経を取らずに済むのが歯髄保存療法です。虫歯の部分を削って露出した歯髄に、MTAセメントという特殊な材料を詰めて密封した上で、最終的には詰め物やかぶせ物を作製します。これまでは歯髄にまで達した虫歯に対して、神経を残した状態で治療を行うのは困難でしたが、MTAセメントが開発されたことで、歯髄保存療法による治療が可能になりました。
- Q歯の神経は残したほうが良いのですか?
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A
歯の神経を取る場合、歯を多く削る必要があります。歯髄が存在する根管内は細く複雑な形をしていて、歯髄を取り残してしまうリスクがあるためです。もし取り残しがあると、そこに細菌が増殖して根尖病巣という歯の根の病気ができてしまいます。根尖病巣が発生すると、再び根管治療を行う必要があり、やがて元の歯の部分が少なくなりかぶせ物が作製できず、歯を失うことにつながってしまいます。また、かぶせ物を作製するために支柱をつけるのですが、その支柱がくさび型をしているため歯が割れてしまうケースもあります。最近は支柱の素材が進化して歯が割れるリスクは軽減されましたが、可能なら神経を取る治療は避けるほうが無難と言えますね。
- Qどのような場合なら神経を残せますか?
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A
歯髄は歯の頭の部分から根っこのほうまで広がっています。虫歯菌が侵入してこの歯髄全体に炎症が起こると、ズキズキとした強い痛みを伴います。こうなると、神経を残すことは難しく、神経を取る必要があります。一方、歯髄全体まで炎症が及んでいない状態なら、強い痛みはまだなく、知覚過敏のように冷たいものがしみたり、噛んだ際に少し痛みを感じたりする程度です。この段階なら、神経を残す治療が可能です。歯髄には侵入してきた細菌に対する抵抗力があり、細菌が侵入するのを阻止しています。しかし、細菌が持続的に入る状態で放置しておくと、やがて歯髄全体にまで炎症が及んでしまい、歯髄保存療法の適用が困難になります。
- Q歯髄保存療法の治療はどのように進めますか?
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A
虫歯が見つかった段階で、虫歯の進行度合いを診るためにエックス線撮影を行います。エックス線画像を確認して、歯髄に達するまで歯を削る必要がある場合は、根管治療と歯髄保存療法について説明し、どちらを行うか患者さんに選んでいただきます。歯髄保存療法を行う場合は、麻酔をして患部以外をラバーダムで覆い、虫歯の部分を削ります。さらに、露出した歯髄とその周囲を薬剤で殺菌した後、MTAセメントで封鎖してその上をレジンで蓋をし、処置後、エックス線を撮影して状態を確認します。しばらく期間をおいて痛みなど症状がないことが確認できれば、口腔内スキャナーで歯型を採り、かぶせ物・詰め物を作製するという手順です。
- Qこちらのクリニックの歯髄保存療法の特徴を教えてください。
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A
ラバーダムと、マイクロスコープという歯科用顕微鏡を必ず使用します。ラバーダムを使用することで、唾液に含まれる水分と細菌の侵入を防ぎ、強い殺菌薬も使いやすいのです。歯を削る際に使う水が患者さんの喉に流れる心配もありません。ラバーダムを装着すると、苦しさを感じたりするのではと心配される方もおられるようですが、むしろ不安なく治療を受けていただくために役立つと考えています。また、歯髄保存療法ではすべてのステップで高い精度が要求されるため、患部を大きく拡大できるマイクロスコープは欠かせません。当院では処置のすべてを、マイクロスコープの動画として記録しており、処置後に患者さんにご確認いただいております。
自由診療費用の目安
自由診療とは歯髄保存療法:4万4000円(1本)、セラミックのかぶせ物:8万8000円(1本)