動脈硬化の危険因子・脂質異常症
早期発見と生活習慣の改善が鍵
十日市場整形外科内科リハビリテーションクリニック
(横浜市緑区/十日市場駅)
最終更新日:2025/04/15


- 保険診療
脂質異常症(高脂血症)とは、中性脂肪や悪玉のLDLコレステロールが基準値よりも高い、もしくは善玉のHDLコレステロールが基準値より低い状態のこと。動脈硬化の主要な危険因子とされており、脳梗塞や心筋梗塞等を招く原因ともなるといわれている。しかし自覚症状はほとんどないため、気づかずに放置したことで動脈硬化が進んでしまったり、重篤な状態に陥ったりする危険性もある。早期発見のためには「健康診断や検査を定期的に受けることが大切です」と語るのは、「十日市場整形外科内科リハビリテーションクリニック」の内科医・羽田哲也先生。脂質異常症と診断された後は、状態が改善するまでは定期的な受診が必要だという。羽田先生に、脂質異常症の原因や治療について詳しく聞いた。
(取材日2025年4月4日)
目次
脂質異常症の80%は生活習慣病。検診による早期発見と生活習慣の改善で、動脈硬化を未然に防ぐ
- Q脂質異常症とはどのような病気でしょうか?
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A
▲自覚しづらい症状のため、知識を持っておくことが大事
脂質異常症は、血液中の中性脂肪や悪玉のLDLコレステロール値が基準値よりも高い、もしくは善玉コレステロール値が低い状態のことです。その80%は生活習慣病といわれており、過食や過度な飲酒、運動不足、肥満、喫煙、ストレスが原因で発症すると考えられています。特に内臓脂肪の増加による肥満の場合は、発症リスクが高くなります。自覚症状がほぼないため、健診で発見されることがほとんどですが、血症のタイプによっては、手足の腱や皮膚にコレステロールが沈着する黄色腫や、コレステロールが目の周囲に沈着して白い輪が現れる角膜輪が現れることもあります。
- Q脂質異常症の疑いがある人の特徴について教えてください。
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A
▲羽田先生が診察室から呼びかけて診察がスタートする
血圧が高い、血糖値が高い、糖尿病や通風にかかっている、肥満体型・肥満傾向にある人は注意が必要です。また、飲食の傾向として、肉や脂っこい食べ物を好んで食べる、アルコールを日常的に摂取する、甘いもの、乳製品や果物をよく食べる人も要注意です。さらに、食べすぎてしまう人、運動不足の人や喫煙者も気をつけたほうが良いでしょう。遺伝によって発症する可能性もあるため、脂質異常症や動脈硬化症を患っているご家族がいる人、55歳未満の男性、または65歳未満の女性で心筋梗塞を患っている場合は、脂質異常症を発症する可能性が高いといわれています。これらの項目に複数当てはまる人は、健康診断の結果に注意が必要です。
- Q脂質異常症のタイプについて教えてください。
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A
▲過食や過度な飲酒、運動不足に心当たりがある世代は注意が必要
脂質異常症は、善玉・悪玉コレステロールと中性脂肪の数値によって3つのタイプに分けられます。「高LDLコレステロール血症」は、悪玉のLDLコレステロールが多い状態で、脂質異常症患者の中で一番多いタイプです。「低HDLコレステロール血症」は、善玉のHDLコレステロールが少ない状態で、動脈硬化のリスクが高くなるため注意が必要です。「高トリグリセライド血症」は、中性脂肪が多い状態で、過食や過度な飲酒、運動不足などの状態が目立つ中高年の男性に多いタイプです。昨今の研究で、中性脂肪が多い場合はLDLコレステロールも増加傾向になることが明らかになっています。
- Q治療法について教えてください。
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A
▲生活習慣を見直すことで改善は見込めると話す羽田院長
食事管理や運動による生活習慣の改善が基本です。1日3回の規則正しい食事を心がけ、よく噛んでゆっくり食べ、バランス良く栄養を摂取することにより、食生活の改善をめざします。運動療法では、標準体重の維持を目標に、ランニングやウォーキングなど適度な運動を心がけ、運動不足を解消していきます。さらに、自分流のストレス解消法を見つけてストレスをためない、タバコやお酒を控えるなど生活習慣の改善を図ります。改善を行った後でも総コレステロール、LDL・HDLコレステロール、中性脂肪の数値が目標の値に達しておらず、動脈硬化のリスクが高い場合には、薬物療法で改善を図ります。