羽田 哲也 先生の独自取材記事
十日市場整形外科内科リハビリテーションクリニック
(横浜市緑区/十日市場駅)
最終更新日:2025/04/16

十日市場駅から徒歩3分、大型スーパーの2階にある「十日市場整形外科内科リハビリテーションクリニック」。整形外科、リハビリテーション科、内科を3つの柱とする同院で、内科診療を担当しているのが羽田哲也先生だ。不安を抱えて受診したときでも、包容力のある笑顔と温かな声に励まされるような気持ちになる患者も多いだろう。「こんなことを聞いてもいいのだろうか?」というためらいを快く受け止め、身を乗り出して耳を傾ける。笑ってばかりのひとときだったにもかかわらず、振り返れば論理的にも納得できる内容がスッと患者の心に入っている。そんな、治療する・されるを越え、健康であることの喜びをともに分かち合う診療スタイルがそこにはあった。羽田先生のこれまでの歩みや診療にかける思いを詳しく聞いた。
(取材日2025年4月4日)
長年にわたる消化器内科と総合診療の経験を生かして
まず、医師を志したきっかけを教えてください。

10歳の頃、病弱だった母の通院によくお供していました。「母の助けになりたい」という思いが、医師を志した最初のきっかけかもしれません。同時にパン屋さんも夢見るような子どもでしたけどね(笑)。当時、僕自身も自家中毒がひどく、深夜に激しく嘔吐するたび父がおぶって近くの診療所に連れて行ってくれたのを覚えています。すると、眠い目をこすりながら先生が起きてきてくれて、太い注射でブドウ糖を打つんです。診療所に点滴などない時代で恐ろしく痛いのですが、困っているときに助けてくれる医師が神さまのように思え、憧れましたね。
これまでのご経歴についても伺えますか。
当初は心臓血管外科を志望していましたが、大学6年生の時に家族が消化器系の病気で他界し、消化器内科を専門にしようと決めました。大学卒業後は駒込病院での研修を経て、JR東京総合病院に入局。消化器内科医長・消化器検査センター長として、約20年間、激務の日々を過ごしました。大勢の入院患者さんを受け持っていたので、新婚旅行もその後の家族旅行も一切できなかったですね。午前中の外来が終われば、お昼も食べずに検査室へ向かい胃と大腸の内視鏡検査。次に勤務した総合高津中央病院でも似たような毎日でした。ゆっくりと患者さんに向き合えるようになったのは、50代になってクリニックで診療する道を選んでからですね。
病院時代よりも患者さんとの距離が近くなったのですね。

武蔵境クリニック、永研会クリニックでは生活習慣病や喘息なども幅広く診るようになり、総合診療の研鑽もしっかりと積んできました。当院には2024年8月から勤務していますが、これまでの経験を生かして地域の方々のお役に立てればと考えています。総合病院では患者さんを何時間もお待たせして数分間しか診察できないことも多く、心苦しく感じていました。しかし、今は冗談や世間話も織り交ぜながら患者さんと向き合うことができています。雑談から得られる治療のヒントもありますし、患者さんに「話を聞いてもらえた」と喜んでいただけるのは何よりです。高齢社会の中、90歳過ぎの患者さんも多いのですが「母が生きていたらこれくらいの年齢だな」と、ふと面影を重ねてしまうこともあります。そんな時、ますます長生きしてほしいと願わずにいられません。
内科と整形外科がシームレスに連携し幅広い疾患に対応
こちらではどのような診療を行っているのでしょうか。

当院は整形外科、リハビリテーション科、内科を3つの柱とするクリニックです。整形外科医師2人、理学療法士8人、柔道整復師8人、受付8人、診療放射線技師1人、医療サポート2人と大勢のスタッフがチームを組み、活気あふれる雰囲気なのも特徴的なのではないでしょうか。私は水曜と金曜に内科診療を担当していますが、整形外科はご高齢の患者さんも多く、だいたい高血圧、高脂血症、糖尿病などをお持ちです。同じクリニックの中で整形外科疾患も内科疾患も管理できるのは、患者さんにとっても便利だと思います。背中の痛みを訴える患者さんを整形外科の先生が診て「これは内科的な問題なのでは?」というときも、すぐに私がバトンタッチできますしね。
予防医学にも力を入れていらっしゃるとか。
検査を呼びかけるポスターを貼るなどして、関心を持ってもらえるように工夫しています。例えば、脳疾患や心疾患を引き起こす動脈硬化には特に注意が必要です。コレステロール値が高い人には心臓から足首までの動脈の硬さを測定するCAVI検査を実施。その他、患者さんの訴えによって「脈がおかしい」なら心電図検査、「咳が多いのが気になる」ならエックス線検査を行うこともありますね。もちろん、専門としてきた消化器に関しても腹部エコーで詳しく診ています。そもそも服薬が必要な病気にならないよう、食事や運動のコントロールも大事です。中医学をルーツとする「医食同源」すなわち、バランスの取れた食事は病気の予防につながるという考えに基づき、無理なく続けられるアドバイスなどもしています。
先生が診療にあたって大切にしているのは何ですか。

つらい症状だけではなく心の不安も取り除き、患者さんに少しでも笑顔になってもらうことを大切にしています。これは、冒頭でふれた亡くなった家族の遺言でもあるんです。入院していた大学病院のベッドで「哲也、患者はお医者さんだけが頼り。どんなに忙しくても常に寄り添い、決して心細い思いをさせてはいけないよ」と。だから、私は今でもマイクを使わず、診察室のドアを自分から開けて、患者さんの目を見て名前をお呼びしています。その瞬間から診察は始まっていて患者さんの顔色や歩き方をつぶさに観察。患者さんが椅子に座ったときには、何を聞くかほぼ決まっています。患者さんが話したいことをすべて聞きたいので1秒も無駄にできませんからね。大事にしているのは「そうだよね」「つらかったよね」と肯定すること。共感なくして「こうしてみよう」という提案はあり得ないと肝に銘じています。
患者の笑顔が勲章。心の通った医療で健康を守る
今後の展望についてお聞かせください。

都心部の医療環境は恵まれていて、さまざまな専門性を持つクリニックがありますが、正しく患者さんを振り分ける役割を担う医師も必要だと感じています。だからこそ、総合診療的なプライマリケアにますます力を入れていきたいですね。内科以外のお悩みで患者さんが来ても「この悩みならこの診療科だよ」と水先案内人役が果たせればと思っています。そのためにも「あの先生に聞けばどうにかなる」と信頼していただけるように精進していきたいです。また、私がこれまで前職のクリニックなどで診てきた睡眠時無呼吸症候群についてのご相談が当院でも増えています。ウェブ上で記入できる睡眠時無呼吸症候群専用の事前問診票なども、ゆくゆくは整えていきたいです。
お忙しい毎日ですが休日はどうお過ごしですか。
長い間、忙しさにかまけて家族旅行もできずに過ごしてきました。やっと時間ができたので、休みの日には罪滅ぼしをかねて(笑)、私が食事を作るようにしています。子どもの頃にパン屋さんになりたかったのはかなり本気で、前職のクリニックでは勤務を週3日にしてベーカリーで修行したこともあるんですよ。焼きたての手作りパン、医食同源にもこだわったメニューを家族が「おいしい」と食べてくれるのを見て、私も幸せを味わっています。また、子どもの頃に習えなかったピアノも楽しんでいます。クラシックから人気のゲームやアニメの楽曲まで、レパートリーは広いですね。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

どんなに小さなお悩みでも「あの先生にまず話してみよう」という存在になれたら最高だと思っています。患者さんの「また来るね」「家族にも紹介するね」といったお言葉は、私にとっては目には見えない勲章です。「お孫さんは元気?」「旅行はどうだった?」などと何げないお話ができるのを、心から楽しみにしています。遠慮なさらずに、何でもお聞かせください。膝の痛みで整形外科に来て、ついでに前々から気にしていたおなかのことも相談する、そんな患者さんもいます。治療する・されるを越え、健康であることの喜びをともに分かち合いましょう。