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昭和大学病院附属東病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 診療科長 山岸 昌一 先生

こちらの記事の監修医師
昭和大学病院附属東病院
糖尿病・代謝・内分泌内科 診療科長 山岸 昌一 先生

かっしょくさいぼうしゅ褐色細胞腫

概要

副腎髄質やその周囲の神経節にできる腫瘍で、カテコールアミンと呼ばれるホルモンを過剰につくり出し、二次性高血圧(ほかの疾患が原因で起こる高血圧)や糖尿病などの原因となる。カテコールアミンとは、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの神経伝達物質やホルモンとして働く化学物質の総称で、本来は心臓の収縮力を増加させたり、全身の血管を収縮させたりすることで、血流を滞りなく全身に行きわたらせる働きを担っている。褐色細胞腫では、このカテコールアミンが過剰に分泌されて高血圧や急激な血圧の変動を起こし、その結果として、頭痛、動悸、吐き気、異常な発汗、不安感といった症状をもたらすのである。褐色細胞腫の90%が良性腫瘍であり、手術による摘出で治癒するが、悪性の場合は骨、肝臓、肺に転移し、心不全腸閉塞などを合併することがあり、今のところ有効な治療法がない。

原因

副腎髄質、あるいはその周囲の神経節に発生する腫瘍が原因となる。腫瘍の発生原因は不明である。遺伝的にこの病気になりやすい家系もあり、その場合は小児期から定期的な検査が必要になることもある。

症状

カテコールアミンと呼ばれるホルモンの異常な分泌により、多岐にわたる症状が現れる。高血圧が最も重大な症状で、不整脈糖尿病脂質異常症が多くの患者にみられる。そのほか、激しい動悸、大量発汗、立ちくらみ、速い呼吸、顔面蒼白、冷たく湿っぽい皮膚、重度の頭痛、胸や胃の痛み、吐き気、嘔吐、視覚障害、指に生じるチクチク感などの症状が現れる。運動や食事などでの刺激をきっかけに、急激に血圧が上昇する高血圧クリーゼが起こることもある。悪性褐色細胞腫の場合、骨、肝臓、肺への転移や心不全腸閉塞のほか、重篤な感染症を合併するケースもある。

検査・診断

血液検査または尿検査により、特定のカテコールアミンや、カテコールアミンが分解されてつくられる代謝物質の値を測定する。カテコールアミンの値が高い場合には、褐色細胞腫の位置や大きさなどを把握するためにCT検査やMRI検査を行う。褐色細胞腫に蓄積されやすい放射性化学物質を注射する検査も有用で、画像検査によって、この放射性化学物質がどこに蓄積されているかで褐色細胞腫の位置を知ることができる。褐色細胞腫が良性か悪性かは通常、手術後の病理診断で判断される。しかしこの判断は非常に難しく、ほかの臓器への転移が見つかって初めて悪性であることが明らかになることもある。

治療

手術中の血圧変動を避けるため、薬でカテコールアミンの作用を抑え、その分泌を制御できる状態になった後に手術を行う。手術は、腫瘍の大きさにもよるが、約80%のケースで腹腔鏡を使って摘出する方法(腹腔鏡下副腎摘出術)をとる。一方、腫瘍が大きい場合は開腹手術を行うこともある。約90%のケースでは、腫瘍が発生するのは左右いずれかの副腎であるため、通常は全摘出を行う。片方の副腎が機能していれば、正常量のホルモンを産生することができるため問題はない。左右両方に腫瘍がある、あるいは将来、反対側にも腫瘍ができる可能性がある場合には部分摘出も検討される。高血圧、糖尿病の症状は手術により改善される。また、すでに多臓器に転移が見られる悪性褐色細胞腫については、抗がん剤治療が行われる。

予防/治療後の注意

腫瘍が良性であれば治療後の経過は良好で、症状はほとんど消失する。しかし、良性・悪性の診断は非常に難しく、中には30年後に再発するというケースもある。また、未治療のままだと脳出血腎不全心不全など、ほかの疾患を引き起こす可能性がある。手術後は、定期的に尿中や血液中のホルモン検査、画像検査を受け、褐色細胞腫が再発していないかどうかをチェックしていく必要がある。

昭和大学病院附属東病院 糖尿病・代謝・内分泌内科 診療科長 山岸 昌一 先生

こちらの記事の監修医師

昭和大学病院附属東病院

糖尿病・代謝・内分泌内科 診療科長 山岸 昌一 先生

1989年金沢大学医学部卒業。1993年 金沢大学大学院医学研究科博士課程修了。久留米大学医学部糖尿病性血管合併症病態・治療学講座教授を経て2019年より現職。長年、糖尿病をはじめとする代謝内分泌疾患の管理、治療に携わる。