こちらの記事の監修医師
秋山脳神経外科病院
病院長 秋山 武和 先生
のうざしょう脳挫傷
最終更新日:2022/08/31
概要
脳挫傷は、事故などで頭部に直接的な強い衝撃が加わったことにより、脳の外側だけではなく、脳そのものが損傷した状態のことです。頭部への衝撃で意識障害が起きた脳振とうは脳の構造には異常がない状態ですが、脳挫傷は脳の構造が損傷している状態のため、より深刻な状態です。重症の場合は緊急手術が必要となります。軽度であれば一時的な痛みだけの場合もありますが、脳が損傷していると後から症状が出現します。頭部を強打したときは脳神経外科や救急科を受診するようにしてください。
原因
脳挫傷は、交通事故や転倒・転落事故、頭部への殴打などが原因となって起きますが、出現パターンは主に2つに分けられます。一つは、直接的な打撃を受けた部分の下にある脳の一部が損傷するパターン。この場合、打撲を受けた部分にしばしば頭蓋骨の骨折が認められます。もう一つは、強い衝撃によって、脊髄液中に浮かんでいる脳が頭蓋骨に衝突することによって損傷が起きるパターンです。車の事故で頭がハンドルやダッシュボードにぶつかったり、頭部が激しく動いたりした場合に起きやすく、この場合は打撃を受けた部分だけでなく、前頭葉や側頭葉の先端部分に脳挫傷が形成されます。傷ついた脳では、神経細胞の壊死、出血、浮腫(むくみ)などが起き、損傷した部分や程度により、さまざまな症状を引き起こします。特に高齢者は転倒時に防御反応が遅れがちなため、脳挫傷を起こしやすいとされます。
症状
脳挫傷による症状は、損傷を受けた部位や程度によってさまざま。軽度の損傷の場合は、軽い頭痛や一時的な意識障害で済むことが多く、ほとんど自覚症状を感じないことも。損傷の程度が大きい場合や、脳自体の損傷は小さくてもむくみや出血がひどい場合は、頭痛、嘔吐に加え、手足の麻痺、言語障害、失語症、意識の混濁や消失といった重い症状が出現し、時には生命の危機に瀕することがあります。前頭葉には嗅覚を司る部分があるため、食事を取っても味を感じないといった症状が出ることも。脳が傷つくことで、てんかん発作を起こす場合もあります。
検査・診断
頭部外傷に対しては、CT検査を行うことが一般的です。CT画像により、脳の正常な部分よりも黒っぽく見える部分は浮腫や壊死した部分、白っぽく見える部分は出血している部分と考えられますが、脳挫傷ではそれらが混在している場合が多数を占めます。血腫やむくみの部分が大きくなると脳内の圧力が高まり脳幹を圧迫し、生命に関わる場合も。CTによる画像診断で状態を確認し、緊急手術を行うかどうかを判断します。通常、受傷から1~2日程度は出血や浮腫が進行する可能性があるため、画像診断と症状の経過観察が続けられます。
治療
重症の脳挫傷では、集中治療による呼吸や循環の管理が必要です。出血や壊死、浮腫が大きく、脳内の圧力が高まっている場合は、緊急手術を実施することがあります。全身麻酔下で頭蓋骨の一部を開け、損傷を受けた脳の一部や血腫を除去する手術です。また、生命維持に直結する脳幹は脳の下部にありますので、その脳幹をむくんだ脳が圧迫しないように、開けた頭蓋骨をしばらくそのままにして、圧力を逃がす治療(減圧開頭術)を実施する場合もあります。軽症の場合は入院で痛みなどの治療と経過観察を行い、問題がなければ外来で経過観察を続けることが基本です。
予防/治療後の注意
重症脳挫傷に対する手術は、命を救うことと、それ以上の重症化を防ぐもので、すでに損傷を受けた脳機能を元に戻す治療ではありません。手足の麻痺や言語障害などが後遺症として残った場合は、リハビリテーションを行うことが重要です。損傷から数週間から1ヵ月後にてんかん症状を発症し、継続的な薬物治療が必要になることもあります。痛みなどの症状を感じなくなっても、通院をやめて良いかどうかは、医師の指示に従ってください。
こちらの記事の監修医師
病院長 秋山 武和 先生
2001年慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部外科学教室研修医を経て、脳神経外科に入局。慶應義塾大学病院、関連病院、脳神経外科専門病院での診療後、2011年秋山脳神経外科病院副院長に就任。2017年から現職。日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、日本脳神経血管内治療学会脳血管内治療専門医。専門は脳神経外科全般、脳血管内治療、神経内視鏡、脳卒中救急医療。「患者を思いやる気持ちを大切にする」がモットー。
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