
こちらの記事の監修医師
東京医科大学八王子医療センター
腎臓病センター長 腎臓内科科長 血液浄化療法室長 教授 尾田 高志 先生
ていかりうむけっしょう低カリウム血症
最終更新日:2022/01/04
概要
低カリウム血症とは、さまざまな原因により、血液中のカリウムの濃度が低くなってしまう病気のことです。カリウムは人体に必要なミネラルで、細胞内の浸透圧の調整、筋肉の収縮、神経の興奮などに関わっています。ナトリウムを体外に排出する作用により、塩分の取り過ぎを調整し、血圧を正常に保つ働きもあります。血液中にカリウムが不足すると、筋肉の動きや神経の働きに異常が起き、体にさまざまな症状が出現します。低カリウム血症は、生活習慣病や腎臓病、糖尿病、心臓病、高血圧などとも関連するため、持病がある方が筋肉の脱力感などを感じたときは、早めにかかりつけの医師に相談しましょう。
原因
低カリウム血症を引き起こす原因には3通りあり、①食欲不振や偏食によるカリウムの摂取不足、②体外へのカリウム排泄の亢進、③血液中から細胞内へのカリウムの移動、です。体外にカリウムが排出されるルートとしては消化管からと腎臓からの2つがあります。消化管からの排出が亢進するのは嘔吐や下痢の場合で、下剤の濫用も原因となります。腎臓から尿中への排泄において重要なのは、カリウム排泄を促進するアルドステロンと呼ばれるホルモンの異常です。アルドステロンが異常に増加する、原発性アルドステロン症や、腎血管性高血圧症ではしばしば低カリウム血症をきたします。また利尿剤の使用も尿中への排泄亢進から原因となります。血液から細胞内にカリウムの移動を起こす誘因として最も一般的なのはインスリンです。従って、糖尿病の治療でインスリン注射を行うと低カリウム血症が見られることがあります。また、甲状腺機能亢進症でも細胞内へのカリウム移動が生じることがあり、病気の一症状として低カリウム血症を来します。その他漢方薬にしばしば含まれている甘草という成分にはアルドステロン様の作用があり、低カリウム血症を来しやすいことがよく知られています。
症状
カリウムの低下が筋肉と神経に影響を与えるため、初期の自覚症状は手足の脱力感、筋肉痛、動悸などです。下痢などによる一過性のカリウム低下ならすぐに回復しますが、長く症状が続くようなら治療が必要です。進行すると、足のまひから歩行困難、起立困難となり、入院が必要になる例もあります。意識消失発作、多尿や排尿困難、便秘、イレウス(腸閉塞)などを引き起こす場合もあります。また、不整脈が出ることもあり、特に心臓の病気を持っている方には注意が必要です。また、糖尿病患者もインスリン投与が低カリウム血症を悪化させるため注意を要します。
検査・診断
血液検査で血清の中のカリウム濃度を測定し、3.5mEq/L未満の場合を低カリウム血症といいます。診察では症状や原因となりそうな疾患の病歴、薬剤の服用歴、食事の内容などを聞き取り、血液検査を行って総合的に診断します。また、尿中のカリウム濃度や排泄量の検査、副腎から分泌されるアルドステロンなどのホルモン検査、心臓への影響を調べる心電図検査などを行い、低カリウム血症になっている原因と重症度を調べていきます。高血圧を合併し、血液中のアルドステロンの値が高いと原発性アルドステロン症という病気によって低カリウムになっている可能性があります。
治療
基本的には、低カリウム血症を引き起こしている原因を調べ、その原因に応じた治療を行います。原因が他の疾患に基づくものならその原因疾患を治療し、特定の薬によるものと判明した場合は、その薬の服用を中止します。それだけで改善することもあります。対症療法として、軽度の低カリウム血症なら、カリウムを含む内服薬を使用し、中等度から重症の低カリウム血症には塩化カリウムを含んだ輸液を点滴します。原因疾患によって対症療法も変わり、治療後にカリウムが高くなり過ぎないよう注意しながら補正を行います。軽症ならサプリメントの服用で改善することがありますが、他の疾患や薬が原因である場合は注意が必要です。医師の指導のもとで摂取することをお勧めします。また、原発性アルドステロン症が低カリウム血症を引き起こしている場合は、副腎摘出手術で完治する可能性があります。
予防/治療後の注意
高血圧を予防するため、日本人のカリウム摂取量の目標は、1日当たり成人男性3000mg以上、女性2600㎎以上と設定されています。藻類、果物、野菜、芋類、肉・魚などに多く含まれていますから、バランスの良い食事を心がけてください。下痢などで一時的にカリウムが失われ、体のだるさを感じるようなときはサプリメントで補充する方法もあります。ただし、腎臓に持病のある方は、カリウムの取り過ぎは厳禁です。特に高齢になると腎機能が低下してきますから、医師からカリウム摂取量の指導を受けている方は制限食を守るようにしてください。

こちらの記事の監修医師
腎臓病センター長 腎臓内科科長 血液浄化療法室長 教授 尾田 高志 先生
1987年防衛医科大学校卒業。同大学校病院やその関連病院勤務、米国ワシントン大学留学、防衛医科大学校病院准教授などを経て、2014年より教授として東京医科大学八王子医療センターに勤務。2016年より腎臓内科科長。2017年より腎臓病センター長。日本腎臓学会腎臓専門医。
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