
こちらの記事の監修医師
帝京大学ちば総合医療センター
第三内科(呼吸器)教授 山口 正雄 先生
あなふぃらきしーしょっく アナフィラキシーショック
最終更新日:2022/01/04
概要
アレルゲンなどが体内に入ることによって、複数の臓器や全身にアレルギー症状が表れ、命に危険が生じ得る過敏な反応が出ることをアナフィラキシーといいます。その中でも血圧低下や意識レベルの低下、失神を伴うなど、重症の場合をアナフィラキシーショックと呼び、すぐに治療しなければ命を落とすこともあります。アナフィラキシーを起こす原因としては食物摂取、ハチによる刺傷、医薬品などが挙げられますが、そのうち圧倒的に症例数が多いのが食物によるアナフィラキシーです。症状が一度治まった数時間後に再発することもあるため、速やかに救急車で医療機関へ行くことが大切です。
原因
アナフィラキシーショックの主な原因としては、卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツ、エビ、カニなどの食物アレルギー、ハチ、アリ、ムカデによる虫刺され、抗生物質や解熱剤、造影剤などの薬物投与、天然ゴム手袋などのラテックスの使用が知られています。食物アレルギーによるアナフィラキシーは乳幼児期および学童期に発症することが多く、原因となる食物を食べた後に運動をするなど、二次的要素が加わることによって症状が出る場合があります。ハチなどによる虫刺されの場合は、一度刺されると数日で一旦回復しますが、再度刺されることによってアナフィラキシーを起こすことが報告されています。ゴム手袋の使用によるアナフィラキシーは、天然ゴムの原材料であるラテックスに含まれるタンパク質に反応して発症します。ラテックスアレルギーの人の30~50%は、クリやバナナなどのフルーツによってアナフィラキシーを起こすことが報告されており、ラテックス‐フルーツ症候群と呼ばれています。
症状
全身に発疹が出るなどの皮膚症状、唇や舌が腫れる粘膜症状のいずれかが表れ、なおかつ呼吸困難、気道狭窄、喘鳴、低酸素血症などの呼吸器症状か血圧低下、意識障害などの循環器症状が見られます。アレルゲンにさらされた後、数分から数時間以内に急速にこれらの症状が表れるのが特徴で、腹痛、嘔吐などの消化器症状を伴うこともあります。また皮膚症状を伴わなくとも、アレルゲンにさらされた直後に平常時血圧の70%未満まで急速に血圧が低下することも。気道狭窄や不整脈、動悸や失神などのショック症状によって、場合によっては死に至る危険性があります。
検査・診断
次の3つの要件のいずれかに当てはまれば、アナフィラキシーと判断されます。1つ目は、発疹などの皮膚症状か唇の腫れなどの粘膜症状のいずれかがあり、急速に呼吸困難などの呼吸器症状や血圧低下、意識障害が見られる場合です。2つ目は、アレルゲンとなり得るものを摂取または接触した後、数分から数時間以内に皮膚・粘膜症状、呼吸器症状、循環器症状、消化器症状のうち2つ以上が確認される場合です。そして3つ目は、アレルゲンにさらされた直後に平常時血圧の70%未満を基準とする急速な血圧低下がみられた場合です。初めてのアナフィラキシーであったり、自覚症状を訴えるのが難しい幼児であったりする場合は、診断が困難なこともあります。
治療
まずは救急の現場で患者の意識の有無、呼吸困難や皮膚症状の有無を確認し、全身の観察を行った後に救急車で搬送します。患者を寝かせて楽な姿勢にして足を30cmほど高くし、呼吸状態が悪化している場合は酸素投与を行います。アナフィラキシーの既往歴があり、患者がアドレナリン自己注射を処方されている場合はそれを投与します。医療機関に到着後は、アドレナリンの投与、脱水症状や血圧低下の改善のための点滴、ステロイドや抗ヒスタミン薬の投与などを行い、必要に応じて心肺蘇生を実施します。初めてアナフィラキシーを起こした場合は、回復後も入院して経過観察を行い、症状の再発に備えます。
予防/治療後の注意
再発を予防するためには、症状を引き起こす要因となるものを避けることが大切です。退院時にはアドレナリン自己注射を処方し、再度アレルギー反応が起きたときの対処方法を指導します。原因によってはアレルゲン免疫療法が予防に有効なことがあります。財布などにアレルギーを示すカードを入れて携帯するなどして、万が一再発したときに他人に伝えられるよう備えることも大切です。

こちらの記事の監修医師
第三内科(呼吸器)教授 山口 正雄 先生
1987年東京大学医学部卒業。1989年同大学物療内科入局、1994年米国ボストンBeth Israel Hospital留学、1998年東京大学アレルギー・リウマチ内科助手、講師を経て、2009年帝京大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー学准教授、2011年教授。2020年より帝京大学ちば総合医療センター第三内科(呼吸器)教授。専門は呼吸器・アレルギー学。日本内科学会総合内科専門医、日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医、日本呼吸器内視鏡学会気管支鏡専門医。
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