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慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授 青木 大輔 先生

こちらの記事の監修医師
慶應義塾大学医学部産婦人科学教室
教授 青木 大輔 先生

らんそうのうしゅ 卵巣嚢腫

概要

卵巣にできる腫瘍のうち、内容物が入った袋(嚢胞)のような形をしたものを、卵巣嚢腫と呼びます。この卵巣嚢腫はほとんどが良性で、20~30歳代の若年層に多い病気です。袋の中には内容物が詰まっており、子宮内膜症による古い出血がチョコレートのようにたまった卵巣子宮内膜性嚢胞(チョコレート嚢胞)、水分がたまった漿液性嚢胞腺腫、ネバネバした粘液がたまった粘液性嚢胞腺腫、皮膚や毛髪、歯など他の部位の組織がたまった皮様嚢腫などに分類されます。ただ、薄い袋状の部分は良性ですが、固いかたまりになった部分が混じっていると、悪性の可能性もありますので注意が必要です。

原因

卵巣嚢胞のうち、卵巣子宮内膜性嚢胞(チョコレート嚢胞)は、本来は子宮に発生するはずの子宮内膜が卵巣に発生して増殖を繰り返し、排出できない月経血が卵巣内にたまってしまうことで起きます。子宮内膜が他の部位できる原因ははっきりしていませんが、卵管から内膜組織の一部が逆流するのではないかという説が有力です。皮様嚢腫は、元の原因はわかっていませんが、受精していないにもかかわらず卵子の細胞分裂が起きて途中で停止したため、できた皮膚や毛髪の成分がたまって腫瘍化するとされています。皮様嚢腫はまれに悪性化することがあります。また、漿液性嚢胞腺腫や粘液性嚢胞腺腫も原因ははっきりしていませんが、卵巣、卵管の表層に当たる部分が変化して腫れ、中に水分や粘液が入り込んだものです。粘液性嚢胞腺腫は放置するとかなり大きくなることがあります。

症状

卵巣嚢腫だけに限りませんが、卵巣の腫瘍は小さいうちは自覚症状が少なく、大きくなってから症状が出現することが多いのが特徴です。腫瘍が大きくなるにしたがい、腹部膨満感(おなかの張り)、下腹部の痛み、腰痛、便秘、頻尿などの症状がみられるようになります。人によっては、下腹部にやわらかいしこりがあるのに気づく場合もあります。さらに、腫瘍がおなかの中でねじれる茎捻転という状態になり、突然、強い痛みや嘔吐が起こり、ショック症状に陥って緊急手術が必要になることがあります。腫瘍が破裂したときも、同じように強い下腹部痛が起き、緊急手術が必要になることがありますがまれです。

検査・診断

まず、問診の後、内診(触診)と超音波検査で卵巣腫瘍の有無を診断します。超音波検査は体外からの腹部エコーと膣内からのエコーの2通りの方法があります。超音波検査で腫瘍の形状はある程度わかりますので、袋状になっていると卵巣嚢胞で、おそらく良性であろうと判断できます。しかし、かたまりになっている部分があれば悪性腫瘍の可能性があるため、MRIやCTの検査、腫瘍マーカーなどさらに詳しい検査を行います。最終的には手術で取った組織を病理検査で診断して悪性度を診断することになります。

治療

卵巣嚢腫は通常は自然消失することはないため、適切な時期に手術などの治療が必要となりますが、小さくて症状のない場合は定期的な経過観察で様子を見ることもあります。手術には開腹手術と内視鏡手術の2通りの方法があり、近年では体への負担が少ない内視鏡手術が選択されることが多くなっています。卵巣子宮内膜性嚢胞は薬剤によるホルモン療法で縮小を図ることや、手術後の再発予防でホルモン療法を行う場合もあります。特に治療後も妊娠・出産を希望する場合は、治療で卵巣を摘出するのか温存するのかについて、主治医とよく相談しましょう。もし、悪性腫瘍であった場合は、その種類と広がりに応じて、手術や抗がん剤による治療を組み合わせて行います。

予防/治療後の注意

卵巣嚢胞のうち、卵巣子宮内膜性嚢胞(チョコレート嚢胞)は再発が多いことが知られています。卵巣を温存していれば同じ卵巣で再発することもありますし、もう1つの卵巣に発生することもあります。症状がなくなっても、定期な検査を欠かさず受けるようにしてください。また、子宮内膜症はホルモン療法で再発の予防が図れますから、主治医と相談してください。その他の卵巣嚢胞には、今のところ予防法はありません。嚢胞腺腫、皮様嚢腫などでは、経過観察中に嚢胞の増大や悪性化の可能性もあるため、定期的な検査は必ず受けるようにしてください。

慶應義塾大学医学部産婦人科学教室 教授 青木 大輔 先生

こちらの記事の監修医師

慶應義塾大学医学部産婦人科学教室

教授 青木 大輔 先生

1982年に慶應義塾大学医学部を卒業後、同大学医学部産婦人科にて研修。1988年より2年間、アメリカのLa Jolla Cancer Research Foundation(現・Sanford Burnham Prebys Medical Discovery Institute)で博士研究員として活躍。帰国後は国立東京第二病院(現・独立行政法人国立病院機構東京医療センター)にて研鑽を積んだ後、1991年より慶應義塾大学医学部産婦人科で助手・専任講師を務める。2005年より現職。日本産科婦人科学会産婦人科専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医などの資格を持つ婦人科疾患のスペシャリスト。