こちらの記事の監修医師
学校法人昭和大学歯科病院
顎顔面口腔外科診療科長/教授/副院長 代田 達夫 先生
おやしらず親知らず
最終更新日:2021/12/27
概要
親知らずは智歯(ちし)とも呼ばれている。永久歯は通常15歳前後で生えそろうが、親知らずの生える時期は10代後半から20代前半と極端に遅い。親知らずは傾斜してまっすぐに生えてこなかったり、水平位に埋伏したりするなど、高頻度に萌出異常を起こす。
原因
親知らずが萌出異常を起こしやすい理由には、「太古の昔の食生活が大きく関わっている」とされている。調理技術もまだ生まれていなかったような大昔には、人間も木の実や生肉など、硬いものを中心に食べて生活していた。そのため食べ物はよく噛む必要があり、顎の骨もよく発達していたため、親知らずも正しい場所に生え、その役割を果たしていた。しかし調理技術も進歩し、柔らかいものを食べられるようになった人間の顎が小さくなっていったために、親知らずの生える場所がなくなってしまったのも原因のひとつであろうと考えられている。
症状
親知らずが傾斜あるいは水平位に半分埋伏している場合には、親知らずとその手前にある第二大臼歯との隙間に汚れがたまり、放置すると第二大臼歯の深部にう蝕(虫歯)をつくる。また、完全に萌出していない智歯は、歯肉が歯冠を部分的に覆ったままとなって、その周りは不潔になりやすく、しばしば炎症が起こす。この炎症を「智歯周囲炎」と呼び、重症化すると口が開けにくくなることもある。親知らずが第二大臼歯に食い込むように生えていれば、その歯根を溶かしてしまうことがあり、また埋伏した親知らずから嚢胞(内部に液体が溜まった袋状の病気)や腫瘍が発生することもある。
検査・診断
エックス線写真や検査器具で親知らずの生え方や顎の状態を確認する。4本とも真っすぐ生えていたり、顎の骨の中に完全に埋まっていたりして周囲に影響がない場合には、ただちに治療の必要はない。親知らず自身にトラブルがある場合や、周囲の歯に悪影響を及ぼしていると見なされる場合には抜歯の対象となる。
治療
親知らずが骨の中に埋まっていたり、歯根の形が複雑だったりする場合には、歯肉を切開して骨を削り、さらに歯冠と歯根を分割するなどして摘出する必要がある。術後は予防的に抗菌薬、消炎鎮痛薬などを投与する。歯科医院で対応できない症例は、大学病院に入院の上全身麻酔で手術を行う場合もある。親知らずの抜歯で生じる主な偶発症(治療でたまたま生じる不都合)は「神経の障害」である。下顎骨の中には歯肉や下唇の感覚を支配している神経が通っているが、親知らずの根の先端はこの神経に非常に近いため、1%ほどの確率で顎の先端や下唇にしびれなどの知覚異常が起こる。この知覚異常は基本的には治癒するがそれまでに、1~2年ほどかかる場合もある。
予防/治療後の注意
親知らずが生えてくると、「痛みはないがムズムズする」、「食べ物が当たるとすこし痛む」、「体調が悪いと痛い」、「周辺の歯茎に痛みがある」などの違和感が現れることが多い。このように自覚症状があればすぐに歯科医院で診察を受けることが望ましい。
こちらの記事の監修医師
顎顔面口腔外科診療科長/教授/副院長 代田 達夫 先生
1986年昭和大学歯学部卒業,講師,准教授等を経て2013年5月より現職。日本口腔外科学会口腔外科専門医。
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