
こちらの記事の監修医師
独立行政法人地域医療機能推進機構 東京高輪病院
木村 健二郎 院長
まんせいじんえん慢性腎炎
最終更新日:2022/01/04
概要
腎臓内にあり、血液のろ過を行っている糸球体を中心に、慢性の炎症が見られる疾患。腎臓病の中で最も多く、タンパク尿や血尿、それに伴う症状が1年以上にわたって持続する。慢性腎炎はさまざまな病気の総称で、慢性的な経過から腎不全に至るもの、症状が進行しにくいものなどいくつかのタイプがある。
原因
原因は、急性の腎炎が慢性化することや自己免疫疾患の影響などさまざまで、原因不明の場合もある。小学校高学年以後に多く発症する慢性腎炎の中で、最も頻度が高いIgA腎症は、何らかの抗原が体に入ることでIgAという抗体が産出され、その免疫複合体が尿をろ過する糸球体に沈着して炎症を起こす病気。原因は不明で、リンパ球の機能異常、細菌やウイルス感染症、遺伝的な素因などが関係していると考えられている。
症状
前兆や誘因もなく発症することが多く、進行して腎不全となるまで自覚症状のないことが多い。学校の検尿などで見つかることが多い。症状は、タンパク尿や血尿のほか、むくみ、肩凝り、倦怠感、頭痛など。風邪などで高熱が出た後に、目で見てわかる血尿が出ることもある。
検査・診断
血液検査で腎臓機能を評価する。さらに、尿検査でタンパク尿と尿潜血の有無を確認し、診断を行う。腎臓の働き(糸球体ろ過量、GFRで表される)と尿タンパクの量の組み合わせで、重症度を評価する。腎臓の働きが低く尿タンパクが多いと重症で、予後(末期腎不全で透析が必要になる、あるいは脳卒中や心筋梗塞などを発症しやすいなど)が悪い。 また、タンパク尿や尿潜血が確認された場合や腎機能障害が認められた場合は、どのような腎臓病かを診断するため、腎臓の組織検査が必要なことがある。組織の採取は、背中に局所麻酔をした上で、特殊な針を刺して行う(腎生検)。
治療
完全に治すことはできない。治療の目的は、タンパク尿や血尿を改善し、症状の悪化を防ぎ、腎不全に移行しないようにすることとなる。治療の基本は薬物療法や食事療法で、症状が軽い場合は経過観察のみで良い場合もある。一部の慢性腎炎にはステロイド薬や免疫抑制薬などの免疫を抑える治療が有効。治療が難航する場合には、扁桃を摘出することもある。食事療法ではタンパク制限や食塩制限を行い、血圧の維持、体重管理などで病状をコントロールしていく。
予防/治療後の注意
腎臓の機能低下が進むと、体内から老廃物や不要物が排出できなくなって尿毒症と呼ばれるさまざまな疾患を引き起こす状態になり、血液透析や腹膜透析、腎臓移植が必要になる。重症化を防ぐためには、食事療法のほか、疲れたら休むといった腎臓に負担を与えない生活が重要。例えば激しい運動は避ける、気温の変化に注意し、体が冷え過ぎないようにする、禁煙するといったことを心がける。また、妊娠・出産を望む場合は、胎児に対する安全性が認められていない薬の投薬に注意が必要なほか母体に危険が及ぶ場合があるため、医師に相談したほうがよい。

こちらの記事の監修医師
木村 健二郎 院長
1974年東京大学卒業後、同大学医学部第二内科入局。1981年よりデンマークコペンハーゲン大学医学部病理学研究所に2年間留学。帰国後は東京大学第二内科講師、東京大学医学部附属病院治験管理センター副センター長(兼任)、聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科学教授、同大学病院副院長(兼任)などを経験。2014年9月より現職。2019年5月より日本病院会常任理事
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