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公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院 副院長 木村 雅弘 先生

こちらの記事の監修医師
公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院
副院長 木村 雅弘 先生

ひざじんたいそんしょう膝靱帯損傷

概要

交通事故やスポーツによって大きな力が加わり、膝の靱帯に損傷が生じること。膝には4つの靱帯があり、場所によって、内側側副(ないそくそくふく)靱帯、外側(がいそく)側副靱帯、前十字(ぜんじゅうじ)靱帯、後(こう)十字靱帯に分けられる。内側側副靱帯と外側側副靱帯は膝の横方向への動き、前十字靱帯と後十字靱帯は前後方向への動きに連動しており、そこに無理な力が加わるとそれぞれの靱帯が損傷してしまう。特に内側側副靱帯と前十字靱帯が損傷を受けやすい部位である。また非常に強い力が加わった場合は、複数の靱帯が損傷してしまう場合も。

原因

靱帯によって、原因となる力の加わり方はそれぞれ異なる。一般的には、内側側副靱帯は膝下が外に向く外反力、外側側副靱帯はその逆の内反力が強制されると損傷が起きる。また、前十字靱帯は、膝下が前方や内側に向かう力、後十字靱帯は後方に向く力が原因となりやすい。力が加わるきっかけとして、交通事故やスポーツが挙げられるが、特に内側側副靱帯は、ラグビー、サッカーなどによる接触プレーがきっかけで切れてしまうことが多い。前十字靱帯もスポーツが原因になることが多く、バスケットボールやスキーなど、ジャンプした時の着地や急な切り返しの動作や、相手の体重が膝にかかる動きで切れるケースがよく見られる。後十字靱帯は膝を強く打ちつける動作が原因となりやすいが、4つの靱帯では一番強い靱帯であり、損傷を受けることはそれほど多くない。外側側副靱帯も単独で切れてしまうというより、強い衝撃が原因で、他の靱帯と共に損傷を受けるケースがある。

症状

主な初期症状としては、膝に痛みが出たり、うまく動かせなくなったりする症状や、腫れ(関節内血腫)が見られるようになる。2~4週間程度が過ぎるとこれらの症状はいったん落ち着くが、損傷部位によっては関節の不安定感や歩行障害が起きやすくなる。またそのままにしておくと、痛みが慢性化したり、膝に水(関節液)がたまる関節水腫が生じたりしやすい。通常の動作では問題がなくても、運動を再開した際に膝が痛くなったり、外れたりといった症状が出ることも。前十字靱帯損傷の場合は、「ポキッ」「ブチッ」といった音がして、そのまま痛みから動けなくなることもある。

検査・診断

靱帯を痛めた状況や膝の状態を確認し、徒手テスト(膝に特定の動きを与えて反応を見るテスト)を実施する。また、MRI検査で靱帯の状態を確認する。加えてエックス線検査を行うこともある。エックス線では靱帯は見えないが、周囲の骨の外傷や骨の位置のずれ具合を調べる際には有効。この他に、前十字靱帯の損傷であれば、ニーラックスという機器を用いることもある。これは、膝のゆるみを数値化して評価するもの。ニーラックスを使用することで、より詳細な診断が可能となる。また、前十字靱帯を手術した際に、術後の経過観察でニーラックスを使用することもある。

治療

どの靱帯をどれくらい損傷しているかによって、治療内容は変わってくる。内側側副靱帯と外側側副靱帯の場合は、初期の段階で治療できれば、ダメージが大きくても手術せずに保存的治療で回復することがほとんど。ケガをした直後の痛みがある時期は安静にして、状況に応じてギプスで固定する。その後サポーターやテーピングをしながら、少しずつ膝を動かして元の状態に戻していく。前十字靱帯、後十字靱帯の損傷では、外科的治療を行うしかなく、手術が必要。手術の方法としては、他の組織を代用して靱帯を再建する手術が一般的になってきている。靱帯再建のために使うのは、太ももの後ろ側のハムストリング腱か、膝前面にある膝蓋腱(しつがいけん)のどちらかで、内視鏡での手術になる場合が多い。手術後は、早い段階からリハビリテーションを実施する必要がある。

予防/治療後の注意

スポーツによる膝靱帯損傷を防ぐためには、運動する前に準備運動を行うことを習慣づけるようにしたい。また、膝やハムストリング腱を鍛えることも予防につながる。手術を受けた場合は、適切なリハビリテーションを行うことが大切。医師の指導のもと、少しずつ膝を動かしながら可動域を広げたり、筋力を回復する訓練を続けたりする必要がある。リハビリテーションは数ヵ月にわたってやる必要があるため、自己判断でやめず、運動が再開できるまでしっかり続けることが重要。

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院 副院長 木村 雅弘 先生

こちらの記事の監修医師

公益社団法人東京都教職員互助会 三楽病院

副院長 木村 雅弘 先生

1983年東京大学医学部卒業。股関節・膝関節変性疾患が専門。特に人工関節の手術を得意とし、新たな技術開発にも積極的に取り組んでいる。日本整形外科学会整形外科専門医。