
こちらの記事の監修医師
昭和大学病院 頭頸部腫瘍センター
准教授 勝田 秀行 先生
こうくうはくばんしょう口腔白板症
最終更新日:2021/12/27
概要
舌や歯茎(歯肉)、頬の内側の粘膜(頬粘膜)、舌の下の粘膜(口腔底)、左右の上の歯茎の間の粘膜(口蓋)などにできる擦っても取れない白斑である。そのまま放置していると口腔がんになる可能性がある症状として口腔潜在的悪性疾患と呼ばれている。白斑のなかにただれ(びらん)や潰瘍などの赤い部分があると、すでに初期の口腔がんであったり後にがん化しやすかったりする。また、広くいぼ状となっている白斑もがん化しやすい。口腔白板症は約10%ががん化するといわれているが、経過が長いほどがんに変化する可能性が高くなり、10年間では約30%ががん化するとの報告もある。
原因
原因は明らかになっていないが、悪い歯並びや尖った虫歯や差し歯、合わない義歯により口腔粘膜を継続的に噛んだり、傷つけたりする機械的刺激が主な原因と考えられている。さらに、喫煙や過度の飲酒、刺激性の強い食べ物(辛いものや熱いものなど)を過剰に摂取することなどの化学的刺激も原因と考えられている。また、加齢およびカンジダ(カビ)やヒトパピローマウイルスも原因と考えられている。
症状
舌や歯茎(歯肉)、頬の内側の粘膜(頬粘膜)、舌の下の粘膜(口腔底)、左右の上の歯茎の間の粘膜(口蓋)などに、長期にわたり消えない白色の板状また斑状の病変がある。患部を触ったときに表面が滑らか、あるいは少しざらざらしている場合を「均一型白板症」、潰瘍を伴ったり角化して盛り上がったりしている場合を「不均一型白板症」と呼ぶ。白板症の場合は擦っても取れず、また長期にわたって病変が残り続けるのが特徴。場合によっては、白い部分の中に赤い部分が混ざって見えるものやいぼのように盛り上がっている場合もある。基本的に痛みはないが、赤い部分はただれ(びらん)や潰瘍のため、そこに食べ物が当たって痛んだりしみたりといった症状を伴うこともある。
検査・診断
まずは視診と触診により、白斑の大きさや形のほか白斑を噛んだり傷つけたりしている歯や差し歯さらには入れ歯がないか確認し、歯を丸めたり入れ歯を調整したりする。また、舌がんとは異なり噛んでいない歯肉にも認めるため、歯磨きが強すぎる可能性もあり歯磨き指導を行うこともある。歯科医院で上記処置を行っても改善しない場合、専門の施設へ紹介となる。特に赤い部分が治らない場合は、簡易的には擦過細胞診(舌がんを参照)を施行するが、診断を確定するためには白斑の一部を切り取り病理組織検査を行う必要がある。病理組織検査では、がん化しているかさらにはがん化しやすい状態である上皮性異形成が認められるか、または鉛筆だこのように角化が亢進(こうしん)しているだけかなどを調べる。
治療
口腔白板症の基本的な治療方針は、手術と経過観察となる。病理組織検査でがんを認めた場合やがんになりやすい場合は、手術で病変を切り取る。また、がん化するリスクが高くない場合(異型が弱いまたは角化亢進のみ)では手術も考えられるが、経過観察を行うこともある。実際にがんを発症するまでには数ヵ月から数年かかるため、さらには歯や入れ歯さらには歯磨きとの関連が考えられるため、定期的にかかりつけ歯科医院を受診し経過観察を行うことが重要である。
予防/治療後の注意
歯や入れ歯さらには歯磨きとの関係が強く考えられるため、かかりつけ歯科医院を持ち定期的に受診することが一番の予防である。さらに、普段から自分の口の中に関心を持って観察することが、口腔白板症を早く見つけることにつながる。たとえがん化していたとしても、早期発見・早期治療できれば治る確率は高い。また舌がんと同様に口腔白板症も喫煙や過度な飲酒は発症リスクを高めると考えられているため、禁煙および節度ある飲酒へと生活習慣を改善することが、予防する上では重要となる。さらに、辛い食べ物や熱い食べ物を控えるなど食生活の改善を図り、日頃の生活習慣を見直し、健康的な生活を送ることを心がけたい。手術後でも、口腔内のいろいろな部位に白斑ではなくてもがん化するリスクのある粘膜が潜んでいることもあり、かかりつけ歯科医院での定期的な経過観察が重要である。

こちらの記事の監修医師
准教授 勝田 秀行 先生
2000年東京医科歯科大学卒業。浜松医科大学歯科口腔外科入局。栃木県立がんセンター頭頸科国内留学を経て2017年より現職。昭和大学歯科病院口腔腫瘍外科を兼任。専門は、口腔がん治療。日本口腔外科学会口腔外科専門医。
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