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東邦大学医療センター大橋病院 婦人科 田中 京子 先生

こちらの記事の監修医師
東邦大学医療センター大橋病院 婦人科
田中 京子 先生

にゅうせんえん乳腺炎

概要

何らかの理由で乳腺が炎症を起こし、痛みや熱感、腫れを伴う状態のこと。授乳期に起きる授乳感染症と、授乳と関係なく発症する非授乳感染症がある。授乳感染症には、乳汁がうまく出ずに乳腺内にたまってしまうことによるうっ滞性乳腺炎と、乳腺に細菌が侵入して感染を引き起こす化膿性乳腺炎がある。非授乳感染症には、乳頭から細菌が入って感染を起こす乳輪下腫瘍がある。また、難治性の乳腺炎である肉芽腫性乳腺炎という症状もあり、出産後5年以内の女性に出現することが多い。

原因

うっ滞性乳腺炎は、母乳の通り道である乳管が十分に開いていない、乳児が母乳を飲む力がまだ弱いなどが原因で、乳汁が乳房に溜まることで起こる。化膿性乳腺炎はうっ滞性乳腺炎が進行したもので、何らかの理由で傷ついた乳頭から連鎖球菌や黄色ブドウ球菌などの細菌が乳管を通り、乳腺組織の中で広がってしまうのが原因。乳児が母乳を吸う際に飲み方が浅かったり、乳歯で乳頭を噛んでしまったりなど、乳頭が傷つくことで起こる場合が多い。また、産後すぐの場合は疲れやストレスなども原因と考えられる。過去に乳腺炎にかかった場合も再発しやすいと考えられている。乳輪下腫瘍は陥没乳頭の場合に多い傾向があり、喫煙との関与が考えられている。肉芽腫性乳腺炎の原因は不明だが、自己免疫疾患や妊娠、出産、授乳、経口避妊薬、喫煙、内分泌環境の変化(高プロラクチン血症など)、乳汁うっ滞性乳腺炎、その他の何かしらのウイルスや細菌による感染などが関与する可能性のあるものとして挙げられる。

症状

自覚症状がはっきりしているのが特徴。うっ滞性乳腺炎は、初期段階にはしこりや腫れ、熱感、赤みがあるなどの症状がみられる。しこりなどがあっても、痛みを伴わない段階で適切な処置を受ければ早期に改善するが、対処が遅れて悪化すると、乳房の痛み、発熱、頭痛や関節痛、全身の倦怠感などの症状が現れることも。乳輪下腫瘍は軽度の症状であることが多いが、何度も繰り返す場合もある。肉芽腫性乳腺炎はしこりや皮膚の赤みが見られる。結節性紅斑と合併することも。

検査・診断

まず、問診してどんな症状があるか聞く。それから触診・視診でしこりの有無を確認していく。炎症の程度を調べるためには、血液検査をして白血球やCPRの増加などを調べる。マンモグラフィ(乳房のエックス線検査)や超音波(エコー)検査によって、腫瘤(しゅりゅう)や乳管の拡張有無を調べる場合もある。膿を採取して細胞診や細菌検査を行い、炎症性の乳がんでないかを調べるのに併せて原因となる細菌を特定し、抗生物質の選択をすることもあるが、結果が出るまでに数日かかることが多い。

治療

乳腺炎を発症している乳房から、乳腺の詰まりの原因である乳汁を取り去るのが最も重要であると考えられる。発症原因によって治療法は異なり、うっ滞性乳腺炎の場合は乳房マッサージを行い、たまった母乳を出すことが有効な治療となる。片方の乳房にのみ症状が出ている場合は、症状が出ている方の乳房から授乳を始めるよう指導する。また、化膿性乳腺炎では、抗生物質や消炎剤の投与を行う。乳房内のしこりが大きくなってしまったときは、患部の皮膚を切開して内部の膿を排出することもある。また、症状によっては細い管を挿入して膿を出す方法もある。乳輪下腫瘍の場合も患部の皮膚を切開して内部の膿を排出するが、症状を繰り返す場合は手術が必要となることも。肉芽腫性乳腺炎の場合は抗生剤の投与はほぼ無効なため、副腎皮質ステロイドを投与するが、効果的な量などがまだ分かっていない。経過観察や穿刺を繰り返しただけで軽快した例もあるが、治療法が確立されていない。

予防/治療後の注意

うっ滞性乳腺炎の段階では、乳房マッサージのほか、頻繁に授乳をして乳児に飲んでもらうことが大切である。授乳姿勢をずっと同じならないように変えて、乳児がいろいろな方向から母乳を吸えるようにするといった工夫も必要。搾乳器で上手に搾り出すのも有効。急性化膿性乳腺炎では、乳頭に傷がある場合、そこから菌が侵入するため保護クリームなどを用いて早めに手当を行うこと。乳腺炎は繰り返しやすいことから、症状が出た場合は自己判断せずに医療機関で受診することが重要。

東邦大学医療センター大橋病院 婦人科 田中 京子 先生

こちらの記事の監修医師

東邦大学医療センター大橋病院 婦人科

田中 京子 先生

慶応義塾大学卒業後、同大学病院、国立病院機構埼玉病院産婦人科医長を経て、東邦大学医療センター大橋病院の准教授へ就任。日本産婦人科学会産婦人科専門医、日本婦人科腫瘍学会婦人科腫瘍専門医、日本臨床細胞学会細胞診専門医の資格を持つ。