
こちらの記事の監修医師
東京慈恵会医科大学森田療法センター
名誉センター長 中村 敬 先生
ちっく(ちっくしょう)チック(チック症)
最終更新日:2022/01/06
概要
不規則で突発的な体の動きや発声が、本人の意思とは関係なく繰り返し起きてしまう疾患。根本的な原因は解明されていないが、4~11歳頃の児童期~青年期の男児に発症することが多い。その時期を過ぎれば自然と症状が出なくなることも。自分自身で症状をコントロールすることは難しいが、症状を緩和することは可能だという。症状が継続する期間によって、「一過性チック症(1年以内に症状が消失する)」、「慢性チック症(1年以上持続する)」に分類され、さらに多種類の運動チックと1種類以上の音声チックが1年以上続く場合は、「トゥレット障害(トゥレット症候群)」とされる。
原因
根本的な原因はまだ解明されていないというのが現状である。しかし、不安や緊張、興奮、疲労などが誘因となりやすい。不安などのストレスや強度の疲労によって悪化しやすく、心身ともに落ち着いている状態のときは改善する傾向にある。また、チック症は、環境的な要因で起こる可能性もある。また、テレビの見過ぎで目が疲れてしまったことをきっかけに、チック症が発症したという例もある。ほかにも、瞬きのチック症の場合、もともと結膜炎などで目がかゆくて目をパチパチとしていたのがクセになってしまい、それがチック症へと発展したケースもあり、原因はさまざまである。不安や緊張などの精神的なストレスが原因となることが多い病気のため、傷つきやすかったり、敏感に感じやすかったりするタイプの性格が、チック症の原因となるかもしれない。
症状
まばたき、顔をしかめる、口をゆがめる・とがらせる、舌を突き出す、鼻をピクピクさせる、首を左右に振るといった動作性の症状(運動チック)と、咳払い、鼻や舌を鳴らす、叫びや単語を連発するなどの音声性の症状(音声チック)に大別される。また運動チックは、肩をびくっとさせる、地団駄を踏む、飛び上がるなど顔や首以外の部位にも起こる場合がある。ほかにも、相手の身振りや言葉を意図せずに真似してしまうこともある。複雑性運動チックの場合は、普通なら人前で発言するのははばかられるような汚い言葉を発してしまうという症状もある。
検査・診断
一般的にはクセというような認識をされているチック症であるが、検査・診断は、症状と持続時間を中心に、問診・視診などで判断されることが多い。問診から、チック症を大きく3つの病型に分ける。運動チックまたは音声チックの症状が見受けられるが、発症してから1年以内の「暫定的チック症」、運動チックと音声チックのどちらかの症状が1年以上見られる場合の「持続性(慢性)運動または音声チック症」と、運動チックも音声チックのどちらも発症してから1年以上経過している「トゥレット症候群」の3つである。また、ADHDや強迫症などの病気はチックとともに発生することが多く、合わせて検査することもある。
治療
症状が比較的軽度の場合は、薬物治療などは行わず、できるだけ身体的・心理的ストレスを減らす環境を整える。場合によっては精神療法や行動療法などを行う。何よりも、「心配する必要はない」と本人を安心させることが最善の治療となる場合もある。学校の先生や友達に病気についての理解が得られていれば、治療が行われないことがほとんどだ。チックが原因でセルフイメージが下がってしまっている場合のみ、チックを止めるための薬を処方されることもある。ただし、薬の使用は最低限にとどめ、チックが減るのに合わせて、薬の用量も減らしていく。チックが重度で、学校生活に支障をきたすなど、特に問題となる場合、単純なチックにはクロナゼパムやジアゼパムなど、生活に支障が来すような重度のケースでは、抗精神病薬などが用いられることもある。
予防/治療後の注意
チックの根本的な原因はまだ解明されてはいないが、緊張や不安、興奮などといったストレスが症状の誘因となることが多い。そのため、治療中はストレスを減らす環境づくりを心がけることが大切だ。本人に症状を指摘しすぎたり、叱責したりすることは、セルフイメージ低下につながり、症状を悪化させてしまうこともあるため、避ける。ストレスを感じさせず、「心配することはない」と本人を安心させてあげることも治療においてとても大切なことだ。

こちらの記事の監修医師
名誉センター長 中村 敬 先生
人間心理に関心を持ち、大学は哲学科へ進んだが、より実践的な学問を求めて東京慈恵会医科大学へ入学。1982年に卒業し、同精神医学講座へ入局。同大学院修了。 第三病院院長兼同精神神経科診療医長を経て、現在は東京慈恵会医科大学森田療法センター名誉センター長と学校法人慈恵大学参与を務めている。
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