
こちらの記事の監修医師
横浜新都市脳神経外科
院長 森本 将史 先生
ずいまくしゅ髄膜腫
最終更新日:2021/12/27
概要
髄膜とは、脳や脊髄を守るための膜の総称。内側から「軟膜、くも膜、硬膜」の順に3膜で構成されており、くも膜の表面を覆うくも膜細胞から発生する腫瘍を「髄膜腫」と呼ぶ。脳腫瘍の中では発生頻度が最も多い腫瘍で、ほとんどのケースが良性。そのため、ゆっくりと大きくなることはあっても、ほかの臓器などに転移することはない。場合によっては、大きくならないことも。ごくまれに、悪性腫瘍として短期間で大きくなり、他の臓器に転移してしまうこともある。乳がんや子宮筋腫と合併する場合もあるなど、女性や高齢者がかかりやすい病気。決定的な原因はわかっていないが、女性ホルモンや遺伝子、放射線治療などとの関連性が疑われている。
原因
髄膜腫を引き起こす原因は、まだはっきりとは明らかになっていない。中高年の女性がかかりやすく、乳がんや子宮筋腫などの病気と合併しているケースも少なくないことから、女性ホルモンとの関連性が疑われている。また、頭部への放射線治療や染色体の異常なども関わっていると考えられている。
症状
小さな腫瘍の場合、ほとんど自覚症状がないことも少なくない。しかし、徐々に腫瘍が大きくなるにつれて、周囲の臓器などが圧迫され、症状が強まってくるのが特徴。その症状は、腫瘍が圧迫している部位によって異なり、大きく2つに分けられる。1つ目は「局所症状」。これは髄膜腫の周りにある脳や神経が圧迫されることで、脳の機能が低下し、歩きづらさやしゃべりづらさ、けいれん発作、物忘れなどが現れる症状。2つ目は「頭蓋内圧亢進症状」で、頭蓋骨の中の圧力が高くなるため、頭痛や嘔吐、意識障害などが出てくるようになる。
検査・診断
主にCTやMRIなどの画像検査によって、確定診断が可能。腫瘍ができている部位や大きさ、進行度、石灰化の状況などをチェックしていく。いずれの検査でも造影剤を使用するため、髄膜腫をはっきりと映し出すことで、確実な診断につなげることができる。さらに、治療を進めるにあたって、血管と腫瘍の関係を確認するために、脳血管造影検査を行うこともある。なお、良性の腫瘍であり、進行が遅くて症状がない場合も多いことから、人間ドックや健康診断などで偶然見つかるケースも少なくない。
治療
進行がとても遅いため、小さな腫瘍で症状がない場合は、経過観察となることが多い。場合によっては、そのまま進行せずに一生を終えることも。しかし、悪性腫瘍が疑われたり、腫瘍が大きくなって自覚症状が出てきたりすると、手術によって腫瘍やその周辺を摘出する必要がある。しかし、頭部には重要な器官が集まっていることから、すべての腫瘍を摘出できないケースも珍しくない。その場合は、残った腫瘍に対して、ガンマナイフやサイバーナイフなどの放射線治療を行っていくことになる。また、腫瘍ができた部位によっては、初めから放射線治療が検討されることもある。頭を切らずに治療を行うことが可能だが、腫瘍の大きさが3cm以下の場合のみ、治療の効果があるといわれている。なお、現時点では、抗がん剤による薬物療法は、髄膜腫には効果がないことが分かっている。
予防/治療後の注意
髄膜腫のほとんどは良性の腫瘍であることから、そのまま大きくならない場合もある。しかし、まれに悪性腫瘍であったり、急激に大きくなったりすることもあるため、髄膜腫と診断された人は定期的に診察・検査を受けていくことが大事。また、手術後に再発する可能性もあり、場合によっては脳出血による再手術が必要となることや、髄膜炎などを合併することもある。さらに、半身麻痺や痺れ、しゃべりづらさ、物忘れなどが、後遺症として残ってしまう危険性も。なお、これらの障害は、一時的なものと一生続くものがある。

こちらの記事の監修医師
院長 森本 将史 先生
1993年京都大学医学部卒業。2002年同大学院医学研究科修了。同医学部附属病院、国立循環器病研究センター、Center for Transgene Technology and Gene Therapyでの勤務を経て、2010年に横浜新都市脳神経外科病院の脳神経外科部長に就任。2011年から現職。専門分野は脳動脈瘤、バイパスなどの血行再建手術、血管内手術などの脳血管障害、脳腫瘍。
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