こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授
じんがん腎がん
最終更新日:2022/01/06
概要
腎臓のがん。腎臓内において、実質的な働きを担っている腎実質の細胞ががん化し、悪性腫瘍になってしまうこと。腎実質の隙間であり、腎臓と尿管の接続部となっている腎盂(じんう)に発生する「腎盂がん」とは異なる病気。別称、「腎細胞がん」とも呼ばれている。腎がんにかかるのは、がん全体のうち約1%。男性が女性の約2倍かかりやすく、40歳以上の発症が多い。また、喫煙者は非喫煙者に比べて、リスクが約2倍高まるといわれている。初期症状がほとんどないことから、人間ドックや健診で見つかったり、がんが進行してから発覚したりするケースも珍しくない。
原因
腎がんの主な原因は、肥満や高血圧、喫煙など、生活習慣に関わるもの。長い間にわたって透析治療を行っている人も、腎がんにかかりやすい。また、難病にも指定されているフォン・ヒッペル・リンドウ病をはじめ、バート・ホッグ・デュベ病など、発症しやすい家系がある遺伝子の病気との関連も。例えば、フォン・ヒッペル・リンドウ病の場合、がんの発生を抑制するVHL遺伝子が変異し、逆に腎細胞をがん化させるために働いてしまうことがわかっている。そのほか、腎臓に液体で満たされた袋状の病変(嚢胞)が無数につくられる後天性嚢胞腎(こうてんせいのうほうじん)も、腎がんのリスクを高めるといわれている。
症状
初期症状はほとんどない。そのため、健診や人間ドックなどで早期にがんが見つかることはあっても、初期の自覚症状によって発見することは難しい。しかし、がんが進行して、腫瘍が7cm以上と大きくなるにつれて、徐々に症状が現れてくるように。例えば、血尿が出たり、お腹にしこりを触れたり、脇腹や腰、背中が慢性的に痛んだりと、さまざまな症状が出始める。さらに、体重の減少や足のむくみ、微熱、食欲不振、便秘、お腹の痛みなど、人によって症状の内容は変わってくるのが特徴。なお、腎がんが転移した先である、ほかの臓器のがんが先に見つかるケースも少なくない。転移の好発部位としては肺、骨、リンパ節が知られている。
検査・診断
腎がんを確定診断するためには、画像検査を行うことが基本。診察にて腎がんが疑われる場合、まずはスクリーニング検査として超音波(エコー)検査を実施。その上で確定診断を行うために、造影剤を用いたCT検査を行い、がんの進行度や大きさ、リンパ節やほかの臓器への転移の有無などをチェックしていく。造影剤にアレルギーがある場合や、さらに詳細を調べる必要がある場合は、MRI検査を行うことも。万が一、画像診断だけでは確定できない場合、腫瘍の一部を取って、悪性かどうかを顕微鏡で調べる病理検査を進めるケースもある。そのほか、必要に応じて、血液検査やPET検査、骨シンチグラフィなども行っていく。
治療
がんの進行度に関わらず、根治治療としては手術が必須となる。がんがある腎臓をすべて切除する「根治的腎摘除術」と、腫瘍を含む腎臓の一部だけを切除する「腎部分切除術」がある。腎部分切除術は、一般的に腫瘍の径が4 cm以下のがんでは第一選択であり、7 cmまでは適応可能とされる。しかし、4 cm以下の腫瘍でも深い位置にあったり、浸潤性の発育(がんと正常組織の境界が不明瞭で染み込むように発育するもの)については根治的腎摘除術を行っている。さらに、リンパ節やほかの臓器などへの転移がある人や、がんが再発した人には、薬物療法として「免疫療法」や「分子標的治療」、「免疫チェックポイント阻害薬」を施すことに。現時点で腎がんへの効果的な抗がん剤はないと考えられているため、抗がん剤治療が行われることはほとんどない。場合によっては、放射線治療を併用するケースもある。
予防/治療後の注意
肥満や高血圧、喫煙などの生活習慣との関連性がわかっているため、健康的な食生活や適度な運動、禁煙を心がけることが予防につながる。また、手術後10年を超えて再発するケースも少なくなく、治療後も定期的に診察・検査を行い、経過を観察していくことが大切。
こちらの記事の監修医師
北里大学 泌尿器科学教室
岩村 正嗣 主任教授
1983年北里大学医学部卒業後、北里大学病院泌尿器科で研修を受け、大学病院のほか神奈川県内を中心に総合病院で診療。米国ロチェスター大学留学。 1995年北里大学病院泌尿器科主任に就任。同科長、副院長を経て2018年7月から2021年6月まで病院長を務めた。現在は北里大学医学部泌尿器科学教室主任教授。 専門は副腎・腎・腹腔鏡・ロボット支援手術。日本泌尿器科学会泌尿器科専門医。
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