
こちらの記事の監修医師
東京都済生会向島病院
脳神経内科部長 大野 英樹 先生
じゅうしょうきんむりょくしょう重症筋無力症
最終更新日:2021/12/24
概要
さまざまな部分の筋肉が疲れやすく、力が弱くなってしまう。難病にも指定されている自己免疫疾患の一つ。免疫機能の異常により、自ら体の組織を攻撃してしまう自己免疫が起こることが原因とされる。まぶたが開きにくくなる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」「物が二重に見える」など、目に関する症状が最も多い。そのほか、「手足に力が入らない」、「呼吸がしづらい」など、全身に症状が出てくることも。目の症状のみを発症した場合は「眼筋型」、全身の症状も出てきた場合は「全身型」と呼ばれている。男性よりも女性がかかりやすい病気である。
原因
通常、思い通りに筋肉を動かすためには、脳からの指令がしっかりと筋肉に伝わらなければいけない。そのためには、神経の末端から放出される神経伝達物質アセチルコリンが、筋肉の膜にあるアセチルコリン受容体で受け取られる必要がある。しかし、重症筋無力症の場合、自己免疫によって、このアセチルコリン受容体の働きを弱めるための抗体が体内で生み出されることに。これにより、神経と筋肉の継ぎ目の働きが悪くなり、うまく筋肉を動かすことができなくなってしまう。なお、この抗体ができる原因は、はっきりとは解明されていない。重症筋無力症の人が胸腺腫を患っているケースも多いことから、胸腺との関連性も疑われている。また、妊娠中の母親が重症筋無力症だと、生まれたばかりの子どもが一時的に同じ症状を出すことも。これは胎盤から抗体をもらうために発生する。遺伝する病気ではないため、抗体がなくなり次第、症状も消えていく。
症状
最も多いのは、目の筋肉に関する症状である。まぶたが開きにくくなる眼瞼下垂(がんけんかすい)をはじめ、ものが二重に見える複視や斜視、まぶしさ、目の疲れやすさなどの症状が現れてくる。また、「食べ物が飲み込みづらい」、「発音がしづらい(構音障害)」、「笑いたくても、うまく顔が動かせない」など、口やその周辺の筋力が衰えることも。そのほか、手足に力が入らなかったり、しゃがみにくかったりと、全身に症状が出てくることもあり、疲れやすいのも特徴だ。症状が悪化すると、呼吸ができなくなってしまうこともある。
検査・診断
筋肉の表面に電極を置き、筋肉を動かす神経に連続して刺激を与える「反復刺激試験」を実施する。重症筋無力症の場合、刺激を繰り返すと弱まるという波型変化を確認していく。併せて、血液検査を行い、自己免疫によって生み出されている抗体の数値をチェックする。また、重症筋無力症の人は胸腺腫や胸腺肥大など胸腺に異常があることも少なくないため、胸部CT検査やMR検査など、画像診断を行うこともある。
治療
基本的に、対症療法と免疫療法を行っていく。対症療法としては、神経から筋肉への伝達を強化するためのコリンエステラーゼ阻害薬(内服薬)を使用する。これは早く効果が得られる反面、一時的なもので完治にはつながらない。そのため、免疫療法が重要となる。体内で抗体がつくり出されるのを抑えるために、抗炎症作用を持つステロイド剤をまず使用することが多い。改善が見られなかったり、副作用が強かったりした場合、免疫抑制剤が使われる。そのほか、血液中から抗体を取り除くために、血液浄化療法が行われることも。胸腺腫など、ほかの臓器に異常が見つかった場合、外科的な処置が施されるケースもある。なお、発症年齢や型の種類、進行具合、ほかの病気との合併の有無などにより、治療内容は異なってくる。
予防/治療後の注意
ステロイド剤や免疫抑制剤を服用中は、生ワクチンの予防接種を受けることはできない。また、妊娠や授乳中の人も、胎児や乳児に影響がでる可能性があるため、注意が必要だ。

こちらの記事の監修医師
脳神経内科部長 大野 英樹 先生
脳神経内科を専門分野とし、脳卒中診療のスペシャリストであるとともに、末梢神経疾患にも精通。日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医。
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