面接では誰もが少なからず緊張してしまうもの。表情が硬くなったり、質問にうまく受け答えできなくなったりして、「自分らしさ」を出せないまま面接を終えてしまった経験はありませんか? そういった経験から、「面接が苦手」と思っている人も多いでしょう。
しかし、院長や事務長など採用担当者からの質問をあらかじめ想定して準備しておいたり、チェックされるポイントを押さえたりすれば、落ち着いて臨めるはず。歯科医院での面接で、好印象を与える基本のポイントをご紹介します。
<目次>
1 歯科衛生士の面接時に見られるポイント
面接で失敗しないように受け答えの準備をしている人は多いでしょう。確かに受け答えは合否を左右する大きなポイントではありますが、面接で見られているのはそれだけではありません。身だしなみや所作など応募者の人となりを総合的に判断されるのが面接です。以下に挙げる点に気をつけて面接の準備をしていきましょう。
・身だしなみは整えられているか
歯科衛生士は患者の口腔内を直接触ることが多いため、清潔感のある身だしなみを求められます。長い髪はまとめる、派手なメイクは控える、爪は短く切り飾りがついたネイルは避けるようにする、アクセサリーは控えめにするなど、面接官は患者に不快な思いをさせない身だしなみができているかを判断しています。
・コミュニケーション能力はあるか
歯科衛生士は技術だけでなく、コミュニケーション能力も求められる仕事です。患者の不安を解消したり、要望をくみ取ったりするためには、患者との信頼関係が大切です。話す力と聞く力の両方を見られていることを意識し、自身の話を一方的にするのではなく、面接担当者の話をしっかり聞く姿勢を忘れないようにしましょう。
また歯科医院の仕事は、歯科医師や他のスタッフとチームで取り組むことが多いため、お互いに信頼関係を築きながら仕事に取り組む姿勢を見せることが大事です。
・仕事への意欲やスキルを持っているか
転職の場合は特に即戦力としてのスキルが求められるでしょう。また前職での経験を応募先の歯科医院でどう生かすことができるかも判断されます。一般歯科以外にも、矯正歯科やインプラント治療、ホワイトニングなど特別なスキルを磨いてきた場合は面接でアピールし、仕事に対する意欲や向上心を伝えましょう。
・考え方や人柄が応募先の歯科医院にマッチしているか
歯科医院によって特徴や診療コンセプトは異なります。自院の方針にあった人物であるか、他のスタッフと協力しながら仕事を進めていけるかを見られています。必要以上に自身を大きく見せたり、無理に応募先に合わせたりすることは、入職後のミスマッチにつながりかねません。繕わず自然体で臨むようにしましょう。
2 【回答例付】歯科衛生士の面接でよくある質問と回答のポイント
面接は、採用担当者にあなたの人となりや能力、意欲を知ってもらう場。担当者からのさまざまな質問に対するあなたの回答を通じて、担当者は「自院に合いそうか」「やる気があるか」を判断します。
本項では面接でよくある質問を例に、答え方のポイントと回答例を紹介します。どの内容にも共通する注意点として、どんな質問にも、ポジティブな返答を心がけましょう。
不満や批判といったネガティブな回答は、たとえ事実だったとしても採用担当者には「採用しても、またすぐ不満を募らせるのでは?」と思われるかもしれません。ネガティブな情報があったとしてもそのまま言うのではなく、ポジティブな内容に変換して回答することをお勧めします。
また、面接は自分のことを知ってもらう場。伝える中身も大切ですが、相手が理解しやすいように話をまとめたり、順序立てたりすることも好印象に。採用担当者の気持ちになって「この回答を聞いたら、どう思うか」を考えて質問に答えることを意識してみましょう。
それでは、面接でよくある23の質問項目をもとに、好印象を与える回答のポイントを解説します。
●志望動機に関する質問
〈担当者からの質問例〉
• 志望動機を教えてください。
〈回答例〉
「前職の経験で、高齢になっても歯を守るためには予防が重要であることを実感したため、予防歯科に注力する御院で患者さまのサポートをしたいと思い応募いたしました。
御院では、メンテナンス業務に担当制を取り入れ、一人ひとりの患者さまと長い期間じっくりと向き合える体制を整えているとホームページで拝見しました。また、御院のようにメンテナンス室が完全個室の場合、患者さんも口腔内の悩みを話しやすく、信頼関係を築きやすいと思いますので、その環境にも魅力を感じています。
これまでの経験を生かしつつ、メンテナンスの更なるスキルアップをめざし尽力したいと思います」
〈回答のポイント〉
履歴書と同じ質問項目は齟齬がないように注意
「この職場だからこそ働きたい」という気持ちを伝えるためにも、応募先の理念や提供するサービス内容、独自性などを踏まえた上で回答をまとめます。どこの歯科医院でも使えるような汎用性の高い志望動機は避けましょう。
また、志望動機は履歴書にも書かれているので、担当者は履歴書の内容と比較しながら話を聞くことになります。面接で述べた志望動機と履歴書に書いた内容に大きな違いがないように、履歴書の内容をより詳しく説明するという意識で回答すると良いでしょう。
●入職後にやりたいこと・目標に関する質問
〈担当者からの質問例〉
・めざす歯科衛生士像を教えてください。
・当院に採用が決まった場合、やってみたい業務はありますか?
〈回答例〉
「私は患者さまの不安を和らげることができる歯科衛生士をめざしています。患者さまが抱える歯科医院に対する怖い、痛いといったネガティブな感情を、私の言葉かけによって安心に変え、前向きに来院していただけるようなサポートをしたいと思っています。
また、患者さまの口腔内の健康を守り続ける予防歯科にやりがいを感じており、口腔ケアのスキルを磨き御院の診療に貢献したいです。メンテナンスはルーティンのように行うのではなく、患者さま一人ひとりの悩みや不安点を伺いながら丁寧な説明に努め、患者さまが安心、納得して診療を受けられるようなアプローチを考えています。
そして、メンテナンス中は患者さまの様子を注意深く観察することで、痛みを察知しながら声かけや休憩を取り入れるなど、相手の立場に立って行動できる歯科衛生士になりたいです。」
〈回答のポイント〉
入職後に自身が貢献できる強みを、応募先の理念に沿って伝える
採用した場合、自院にとってどのような貢献ができるのかを確認する質問です。そのため、応募先の歯科医院の診療理念、治療コンセプトなどを下調べし、自身の強みが重なる内容にして答えることが重要です。
例えば訪問歯科に注力する歯科医院で、矯正歯科について熱心に話をしても、ミスマッチになると思われてしまいます。自分の希望と実際の業務がかみ合わないといった的外れな回答にならないように気をつけ、応募先だからこそ実現できる目標を述べましょう。
●転職・退職理由に関する質問
〈担当者からの質問例〉
• 前職の退職理由を教えてください。
• 今回の転職で最も重視していることは何ですか?
〈回答例〉
「前職は高齢の患者さまが多く、主に入れ歯やブリッジ治療の補助業務を行っていました。患者さまに『入れ歯が直り噛めるようになってうれしい』と感謝されたときはとてもやりがいを感じました。
一方で入れ歯にならないように、歯を失う前に予防することの大切さを実感したため、今後は予防という観点から患者さまの歯をサポートしたいと考え、予防歯科に注力されている歯科医院への転職を決意しました。御院が掲げている『予防で虫歯0をめざし、患者さまの歯を守る』という理念に強く共感しております。その理念のもと、前職で培ったメンテナンス経験を発揮し、貢献していきたいと思います。」
〈回答のポイント〉
ネガティブ情報は避け、ポジティブな内容にして話す
中途採用の場合、転職を決めた理由などの質問は必ずといっていいほど聞かれます。前職の不満を口にしたり批判したりといった「正直すぎる回答」は避けるのがベター。
嘘をつく必要はありませんが、ネガティブな理由ではなく、「新しいことに挑戦したい」「より成長したい」のように前向きな理由として伝えることを意識しましょう。
転職で重視している点も、「正直すぎる回答」は危険。前職のスタッフとのコミュニケーションがうまく取れなかったという場合でも、人間関係を重視しているといったポジティブな内容に変換し、伝えるようにしましょう。
●前職の在職期間に関する質問
〈担当者からの質問例〉
・前の歯科医院ではどのくらいの期間働いていましたか?
・前職は1年で退職されていますが、特別な理由がありますか?
〈回答例〉
「前職では1年程勤務していました。患者さまと接する中で、需要の高まりを感じたホワイトニングの専門的なスキルを身につけたいと考えていました。ですが、スタッフが少ない歯科医院でしたので、歯科衛生士の仕事だけでなく受付や事務の仕事も兼務しており、限られた時間の中で歯科衛生士としての専門性を高めることが難しい状況でした。
御院では、ホワイトニングに注力されています。また、スキルアップのために定期的に院内研修を実施されているとお聞きし、御院で働きたい気持ちを強くしました。通常業務だけでなくホワイトニングの勉強にも励み患者さんへ貢献したいと考えています。また、前職では歯科衛生士だけでなく受付業務も行っていたことで、患者さまと接する機会が多く、傾聴力が向上したと自負しております。今後は前職での経験を生かし、患者さまの悩みや不安に寄り添ったサポートを行いたいです。」
〈回答のポイント〉
前職の在職期間が短い場合は要チェック
できるだけ長く働いてくれる人を求めている歯科医院が多いため、前職での在職期間が短い場合はその理由を質問されやすいです。「またすぐに辞めてしまうかも?」と思われないように、退職理由はネガティブな面を話すのではなく、ポジティブな理由を挙げ、前向きな転職であることを伝えるようにしましょう。
また、配偶者の転勤や家族の介護などやむを得ない事情での退職の場合は、正直に答えてかまいません。
●自己PR(性格・長所・短所)に関する質問
〈担当者からの質問例〉
• 自分自身をどんな性格だと思いますか?
• 長所と短所を教えてください。
〈回答例〉
「長所は相手に対し敬意を払い、礼儀正しく接することができるところです。この長所は、患者さまと接するときのコミュニケーション能力として発揮され、特に年上の患者さまから話し方や所作を褒めていただくことが多くありました。
一方で必要以上に内省してしまうところがあり、就職した当初は、業務終了後に『あの対応で正しかったのか』と悩むことが多かったです。
そのように迷ったときは先生や先輩にアドバイスをいただき、その日の業務の良かったことや改善点をノートに書き留めるようにしました。そうすることで、自身の改善点が見え、仕事にも自信が持てるようになりました。」
〈回答のポイント〉
短所も自分の強みに変えてアピール
自己PRでは、応募者がどれだけ自分自身のことを客観的に捉えられているかが評価されます。過度に謙遜したり、自身の良いところばかりを並べたりすると、「自己評価が低すぎる(または高すぎる)」「客観性が乏しい」と取られる可能性も。
またアピール内容に説得力を出すために、これまでの仕事ぶりと絡めて説明すると、担当者にも納得してもらいやすいでしょう。短所も長所もまとめて「自分の強み」として示すことを意識しましょう。
●価値観に関する質問(歯科衛生士になったきっかけ)
〈担当者からの質問例〉
・なぜ歯科衛生士になろうと思ったのですか?
・歯科衛生士をめざしたきっかけは何ですか?
〈回答例 〉
「私自身のコンプレックスがきっかけです。私は子どもの頃歯並びが悪く、いつも気になっていました。小学生の時に歯列矯正を始め歯並びがきれいになったときは、とてもうれしかったです。それまでは口を開けて笑うことが恥ずかしかったのですが、今では思い切り笑うことができるようになり、性格も明るくなったと感じています。
私のように口や歯のことで悩んでいる人たちのサポートをすることで、心から笑顔になってもらいたいと考え、歯科衛生士をめざしました。」
〈回答のポイント〉
主体性のある理由で仕事に対する熱意をアピール
歯科衛生士をめざしたきっかけを聞くことで、応募者の歯科衛生士という仕事に対する理解度、やる気を確認しています。「親に勧められたから」や「友達も歯科衛生士になったから」といった答えでは、他人任せで自分の意思が見えず、仕事への熱意が感じられません。具体的なエピソードを入れ、主体性を持った回答をしましょう。
●価値観に関する質問(仕事の心がけ)
〈担当者からの質問例〉
・仕事をする上で、大切にしていることはありますか?
・これまでの業務の中で、歯科衛生士として心がけてきたことはありますか?
〈回答例〉
「私は患者さまの話をしっかり聞くことを大切にしています。以前、メンテナンスの際にいつも同じ箇所が磨けていない患者さまに出会いました。
お話をよく伺ってみると、歯磨きの時間が短く、ながら磨きをしていることがわかりました。歯ブラシの使い方だけでなく、○分くらい磨くと良いこと、磨いた後に鏡でチェックすると良いことをお伝えしたところ、その後以前よりうまく磨けるようになったと報告してくださいました。
この経験から、患者さまの生活背景まで聞き取り、しっかり理解した上で、メンテナンス業務に取り組むようにしています。」
〈回答のポイント〉
エピソードを交えて具体的に話す
応募者の仕事に取り組む姿勢から、応募先の診療方針に合っているかを確認しています。この質問に限りませんが、自身のエピソードを話すときは、詳細に伝えたいと思うあまり、話を詰め込み過ぎて間延びしてしまう傾向にあるので注意が必要です。
まず明確に結論を伝え、その後、前職でのエピソードを交えて具体的に話をすると良いでしょう。また大切にしていることを実現するために、努力したことや取り組んだことを述べると、やる気が伝わりやすいです。
●価値観に関する質問(印象に残っているエピソード)
〈担当者からの質問例〉
・前職で、何か心に残るエピソードはありますか?
・今まで歯科衛生士として働いてきた中で、やりがいを感じたのはどんなときですか?
〈回答例〉
「まだ歯科衛生士になったばかりの頃、歯科医院が苦手で泣きながらお母さまに連れてこられたお子さんがいらっしゃいました。その時、先生が『今日は○○君の治療はお休みにするから、キッズルームで遊んであげてね』と言われ、私はそのお子さんとしばらく一緒に遊び、その日はうれしそうに帰られました。
次の診療日には嫌がりはしたものの泣かずに来院されましたが、先生はその日も治療はせず、私に『キッズルームで歯ブラシの使い方を教えてあげて』と言われました。
そのお子さんが初めてユニットに座ったのは3回目の受診の時で、その時はもう泣くこともなく口を開けて治療を受けることができました。
嫌なことを無理に勧めるのではなく、患者さまが怖がらずに自ら治療を受けられるよう、お子さんのペースに合わせてゆっくりと診療を進められた先生の姿に、患者さまへの対応を学ばせていただきました。
以降、患者さまとの関係構築を大事にしながら業務に励んでおり、患者さまからの信頼を得られ『メンテナンスに来るのが楽しみになった』と声をかけていただいた際などにやりがいを感じています。前職での経験は、今でも歯科医院が苦手な患者さまが来院された時の指針にしています。」
〈回答のポイント〉
心に残ったエピソードから学んだことをセットにして回答
今までどのような経験を積み、それに対しどのように対応してきたのかを聞かれています。これは必ずしも良いことの経験である必要はありません。大変だったりつらかったりした経験を述べる場合は、それをどう乗り越え、そこから何を学んだかということをセットにして話すようにしましょう。
●スキルや経験に関する質問
〈担当者からの質問例〉
・患者さんが怖がったり、治療に非協力的だったりした場合、どのように対応しますか?
・患者さんが、歯科医院側の提案に納得できない場合はどのように説明しますか?
〈回答例〉
「患者さまがこちらの提案に納得されていない場合や治療に非協力的な場合、まず患者さまの気持ちに寄り添い丁寧にお話を伺うように努めています。
以前勤務していた歯科医院で、お口の中を触ることを嫌がる患者さまから『虫歯の治療は仕方ないが、メンテナンスはやりたくない』と言われてしまいました。そのため、無理に口腔内を触ることはせず、まずはお話を伺うようにしたところ、子どものころに歯科医院で痛い思いをしたことがトラウマになっているとわかった出来事がありました。
その経験をもとに、歯科医院に対する怖いという先入観を取り除いていただけるよう、まずは診療と関係ない話をしながら信頼関係を築き、安心した気持ちを持っていただくように心がけています。また、スタッフが困った顔をすると患者さまはますます不安になってしまうので、できるだけ笑顔で対応するように気をつけています。」
〈回答のポイント〉
トラブルが発生してもとっさに対応できる適応力をアピール
歯科衛生士は、患者という人を相手にする職業なので、その場に応じた臨機応変な対応やコミュニケーション能力が求められます。また、難しい立場に立たされたときも、患者に敬意を持ち前向きに対応できる力があるかを問われます。
トラブル対応の具体的なエピソードがある場合はその時にどのように対応したか、またその結果学んだことを述べると良いでしょう。もし具体的なエピソードがない場合は「例えば患者さまから○○のように言われたときは」といった仮説のもと、どう対応するか述べるようにすると良いです。
●他院の選考状況に関する質問
〈担当者からの質問例〉
・他の歯科医院に採用された場合はどうされますか?
・他院の選考状況を教えてください。
〈回答例〉
「御院の他に、矯正歯科を専門に行っている歯科医院の2院に応募しておりますが、書類選考段階でまだ面接は受けておりません。お子さんの矯正治療に注力されている御院が第一志望ですので、内定をいただけましたら、他の歯科医院は辞退させていただこうと考えています。」
〈回答のポイント〉
面接先の歯科医院が第一志望であることをしっかり伝える
どのような職種の面接でも、よく聞かれる質問です。少し答えづらく感じるかもしれませんが、この質問は志望度の高さを確認しているので、例えば矯正歯科に注力している歯科医院、小児歯科に注力している歯科医院のように応募先の特徴に一貫性がある場合は、たとえ複数応募していても選考が不利になることはほぼないでしょう。
だからといって、第一志望が他の歯科医院だった場合に、それを正直に話すのは避けたほうが良いです。あくまで現在面接を受けている歯科医院が第一志望であると答えることが、面接においては無難な対応といえるでしょう。
●ライフステージに関する質問
〈担当者からの質問例〉
・結婚のご予定はありますか?
・今後、お子さんについてはどのように考えていますか?
〈回答例〉
「昨年結婚し、将来的にはできれば出産したいと考えています。御院は産休・育休の制度があるとお聞きしたので、その制度を活用させていただきながら、出産後も長く勤めていきたいと考えています。」
〈回答のポイント〉
ライフステージが変わっても、長く仕事を続ける意思があることを伝える
結婚や出産に関する質問は男女雇用機会均等法に抵触する可能性があり面接で聞くのはタブーとされています。ですが、長く在籍してほしいという気持ちから質問されるケースもあるようです。今後の予定は正直に答えて良いですが、結婚しても仕事を続けたいこと、出産で少しの間休みを取るにしても、その後復帰したいことなど仕事に対し前向きな姿勢を伝えることが大切です。
3 歯科衛生士の面接での「逆質問」例
面接の最後などに、採用担当者のほうから応募者に「何か質問はありますか?」と質問の機会を与えてくれることを「逆質問」といいます。
単純に「応募者が知りたいことにできるだけ答えよう」という親切心で聞いてくることもありますが、担当者によっては逆質問で応募者の「自院への理解度」や「自院で働きたいという意欲」をチェックする場合もあります。そのため、「特にありません」と質問がなかったり、自院と関係のない質問を返されたりすると「自院への興味・意欲が薄い」と担当者に判断されてしまう可能性も。
もちろん、本人としては「面接での質疑応答を通じて疑問点がすべて解消されたので、改めて質問したいことがなくなった」といったケースもあります。そういった場合には無理に質問をひねり出すのではなく、「面接時の説明で、事前にお聞きしたかったことは十分理解でき、入職したい気持ちが一層強くなりました」といったような言葉で意欲を示しましょう。
また、歯科医院のホームページや応募要項に書いてあること、面接中に教えてもらった内容を聞くのは避けましょう。「ホームページなどで事前に情報を見ていない」「話を聞いていない」とマイナスの印象を与えかねません。
以下に、質問する内容として良い例・避けるべき例を紹介します。
●【良い例】業務への意欲が伝わる内容
〈応募者からの逆質問例〉
• 1日の歯科衛生士の業務スケジュールを教えてください。
• 患者さんは担当制ですか?
〈質問のポイント〉
入職後のイメージがあることを伝える
実際の業務に関する質問は、「入職して働くシーンを思い描いてくれている」と担当者に好印象を与えられます。質問をする際は、なぜその質問をしたのかが伝わるようにすると良いでしょう。
例えば、「貴院では担当制は実施されていますか?」と尋ねて「導入していますよ」という回答を得た際、ただ「ありがとうございます」だけで終わらせず、「現職は担当制ではなかったのですが、患者さんに深く寄り添った診療ができるのでたいへん興味を持っておりました。もし貴院に入職できたら担当する患者さんとの関係構築に励んでまいります」といった一言を添えると◎。
質問の意図が相手に伝わるだけなく、「入職した後のイメージを持っている」というプラスの印象にもつながります。
●【良い例】労働条件に関する内容
〈応募者からの逆質問例〉
• 現職の歯科衛生士の方の主な1日のタイムスケジュールを教えてください。
• お盆など長期休暇の診療はどのようにされているのですか?
〈質問のポイント〉
相手の立場に配慮した聞き方をする
ミスマッチを防ぐためにも、労働条件に関する不明点は事前に確認するのが大切。ただし、「残業をしたくない」「長期休暇が必ず欲しい」といった自分の希望ばかりが伝わると、自分本位に見られてしまいます。
「家庭の事情で残業できる日に制限があるのですが、できるだけ応じられるように調整するために教えていただきたいです」と質問の意図を伝えるなど、相手への配慮があること、可能な範囲で受け入れたいといった姿勢を持っていることなどは意識して示すと良いでしょう。
また、仕事量や忙しさは働く前に特に知っておきたい情報だと思いますが、「どれくらい忙しいですか?」といった質問は、どう言葉を繕っても「激務を避けたい」という思いが透けて見えてしまい、やる気を疑われてしまう可能性も。この場合、「1日あたりの患者数を教えてください」など、別の切り口の質問を通じて仕事量を想像するといったように、質問の仕方を工夫してみましょう。
●【避けるべき例】 主体性が感じられない内容
〈応募者からの逆質問例〉
• 矯正歯科領域はやったことがないのですが、勉強できる環境はありますか?
• 研修や教育制度で能力を伸ばしてくれる体制はありますか?
〈質問のポイント〉
受け身の姿勢に見られないように注意!
「勉強」「研修」「教育」などに関する質問は、やる気を示しているつもりでも、伝え方によっては「自分からは何もしようとしない」と採用担当者には受け身の姿勢のように見えてしまう可能性が。
「○○学会の認定歯科衛生士をめざして、現職でも勉強しています。貴院に認定を受けている歯科衛生士の方はいますか?」といったように、自発的な行動をしていることを伝え、その歯科医院で役立つことに目を向けてアピールしましょう。
複数の項目を逆質問する際は、最初に「2つ質問があります」などと質問数を挙げておくと、担当者も応じやすく好印象です。
また、質問の機会をもらえたからといって、延々と質問するのは相手をうんざりさせてしまいます。逆質問で尋ねるのは多くて3つ程度にとどめると良いでしょう。あらかじめ質問しておきたいことを絞っておくことが大切です。
4 歯科衛生士の面接中に気をつけたい4つのポイント
採用担当者は、あなたの質疑応答の内容だけでなく、表情や目の動き、言葉遣いなどもチェックしています。そこで、本項で紹介する「担当者から特に注目しやすい4つのポイント」を押さえておきましょう。
①表情
表情は印象を左右する重要な要素。歯科衛生士は、治療中だけでなく、ブラッシング指導や予防歯科などの場で、患者と接することの多い立場。それだけに、入職後「ホスピタリティーのある態度で患者さんに接してほしい」と考える歯科医院は少なくないでしょう。そのイメージを想起させるように、特に面接スタート時は、第一印象に注意を払い、表情と言葉遣いを意識してみましょう。
対面面接でマスクをしたまま臨む場合は、口元が見えず笑顔がわかりにくいものですが、目元にも表情は出るものです。歯科衛生士は診察中マスクをしていることが多いので、マスク越しにも笑顔が伝わると、入職後の良いイメージにつながります。
ただし、「どんなときも常に笑顔であれば良い」というわけではありません。
例えばこれまでの退職理由を語るときや、採用担当者が自院の理念の話をしているときまでもずっと変わらず笑顔でいると、真剣さに欠けるとマイナスな印象を与えかねません。「自分が面接する立場になったらどう思うか?」を考えて、面接中の話題に合った表情を意識すると良いでしょう。
イメージがつきにくいという場合には、事前に面接の練習をする際にスマホで動画を撮り、後で見返すなどチェックしてみることをお勧めします。
②目の動き
「目は口ほどに物を言う」という言葉があるように、目の動き一つで印象が大きく変わります。例えば、きょろきょろと目が泳いでいると落ち着きのない印象を与えてしまいます。目を合わせようとしなかったり、つい目をそらしてばかりだったりすると、担当者は「自信がなさそう」「真剣さが足りない」「集中していないのでは」とマイナスな印象を持つかもしれません。
裏を返せば、視線を一定に保ち、受け答え時には担当者と目を合わせることで、「自分の意思をしっかり持っている人」という印象を与えられます。緊張する場面こそ「相手の目を見て話す」という基本を意識しましょう。
ただし、面接中ずっと目を合わせないといけないわけではありません。時折自然に目をそらしたり、目線が外れたりする分には問題ないでしょう。
相手の目を見て話すことに緊張する人は、採用担当者の目ではなく眉間や鼻のあたりなどを見ればOK。相手には目が合っていると感じてもらえます。
また、オンライン面接ではついインカメラに映った自分や相手のほうを見てしまいがちですが、カメラへ目線を向けるのが基本。特に自分が話すときにはカメラ目線を意識しましょう
③言葉遣い
なれなれしさを感じさせる言葉遣いはNG。いわゆる「タメ口」はもちろん、「~っす」「っていうか」「私的には(僕的には)」「ぶっちゃけ」など「つい」出てしまう日常的な言葉遣いや、「なるほどぉ~」のように、語尾を伸ばした言葉遣いは、だらしない印象を与えてしまいます。そのほか「なるほどですね」「マジですか」など、間違った敬語も要注意。丁寧語や尊敬語など、相手を敬った正しい言葉遣いが原則です。
敬語は慣れていないと使いにくいもの。例えば「見る」の尊敬語「ご覧になる」と謙譲語「拝見する」の使い分けができていないなど、話す度に間違った敬語が出てくると、印象は良くありません。日頃から、目上の人と会話をする際には敬語を意識しておきましょう。
面接のために学んだ言葉遣いは、患者とのコミュニケーションにも大いに役立ちます。歯科衛生士は患者との接点が多いだけに、選考の場でも、「入職後、患者さんに対して失礼な言葉遣いをしないか」とチェックされることが多いでしょう。
④話すときの所作
体の動き、姿勢なども面接では重要です。背筋をぴんと伸ばし、体を担当者に向けることを意識するだけで、ぐっと印象が良くなります。姿勢が良くなれば呼吸も整えやすくなるので、緊張の緩和にも効果的です。
質問に答える際、手振りを交えて話す人もいるかと思います。はつらつとした行動的な印象を与える一方で、落ち着きがないと取られる可能性もあるので、せわしなく動かしたり、顔周りや髪の毛をしきりに触ったりするようなことは控えましょう。
5 歯科衛生士の面接時の持ち物やマナー
面接当日に忘れ物をしてしまうと、気持ちが焦り、せっかく準備した面接での受け答えが無駄骨に終わってしまうことになりかねません。また、事前準備をしっかり行っても、マナーが良くないことで残念な結果になってしまう場合も。
以下に面接時の持ち物や気をつけたいマナーを紹介しています。面接で本来の力を発揮できるよう、ぜひ参考にしてみてください。
<面接時の持ち物>
・履歴書・職務経歴書
履歴書や職務経歴書は提出必須な書類です。ファイルに挟むなど折れ曲がらないようにして持参しましょう。一方で、すでに履歴書や職務経歴書を郵送で送っている場合は持参の必要はありません。ですが、面接時の質問は履歴書や職務経歴書から聞かれることが多いので、郵送前にコピーを取り、面接に備えて内容を確認しておくと安心です。
・歯科衛生士免許のコピー
歯科衛生士は国家資格なので、免許のコピーを求められる場合があります。
・筆記用具
メモ帳と筆記用具、印鑑を用意しておくと良いでしょう。
・ナースシューズなどの室内履き
歯科医院にはスリッパが用意されている場合もありますが、面接時は持参すると印象が良いでしょう。
・スマートフォンや携帯電話
交通機関の遅れなどで面接に遅れてしまう場合は、必ず応募先の歯科医院に連絡を入れるようにしましょう。
・腕時計
最近は携帯電話などで時間を確認する人が多いかもしれませんが、面接当日は携帯電話の電源を切っておくのがマナーなので、腕時計はしていたほうが安心でしょう。
・その他
モバイルバッテリーや予備のストッキング、鏡、メイク道具、折り畳み傘など、人によっては持っていたほうが良い物や、持っていることで安心な物もあります。面接当日に忘れ物をして焦ることがないように事前確認を忘れずにしましょう。
<面接時のマナー>
・服装を整える
面接はスーツを着用するのが一般的です。「自由な服装で」と言われた場合も、スーツまたはオフィスカジュアルな服装が無難です。着用前に汚れやしわがないかを確認しましょう。
・身だしなみを整える
長い髪はまとめる、化粧はナチュラルにする、ネイルは派手な物や飾りがついたものは避けるなど、医療機関の面接の場合は特に清潔感がある身だしなみを心がけてください。
・丁寧な言葉遣いを心がける
面接官は院長や事務長など応募先の歯科医院によって異なりますが、これからお世話になる勤務先の上司になるかもしれない人たちです。敬語で丁寧な受け答えをしましょう。
また面接官だけでなく受付などのスタッフへも丁寧な挨拶を忘れないようにしてください。仮に、近所の歯科医院で院長をよく知っている、先輩の紹介でスタッフに知り合いがいるというような気心が知れた応募先の場合でも、面接であることを忘れずに、丁寧な受け答えで臨むようにしましょう。
・遅刻をしない
面接で遅刻をすることは、面接前から印象を下げてしまいます。決められた時間の10分前には現地に着くように、志望先までの道順や電車の時間をしっかり調べておけると安心です。
・携帯電話の電源を切る
携帯電話は電源を切っておくようにしましょう。面接中に着信音が鳴ったりマナーモードの振動が伝わったりすると、やる気が感じられず志望の意気込みが低いと思われしまう場合も。歯科医院に入る前に、電源を切っておくのが良いでしょう。
◇ ◇ ◇
どれだけ当たり前、一般的と思える質問だったとしても、問われたことにすぐ答えを出すというのは意外と難しいもの。面接時に平常心で受け答えするためには、事前準備が不可欠です。
今回ご紹介した質問例などを参考に、「どうしてこの職場で働きたいと思ったのか」「新しい職場でどんなことがしたいのか」を自分なりに考えを深めた上で、面接に臨みましょう。
当サイト「ドクターズ・ファイル ジョブズ」では、院長が自院の理念や患者・治療への思いなどを語ったり、先輩スタッフが職場や自身の働き方を紹介したりするインタビュー記事つきの求人が豊富です。職場のことがよくわかり面接シーンにも生かせるので、ぜひチェックしてみてください。
●自己紹介に関する質問
〈担当者からの質問例〉
• 自己紹介をお願いします。
• これまでの職務経歴を教えてください。
〈回答例〉
「○○○○(自分の名前)と申します。2019年に歯科衛生士専門学校を卒業後、6年間一般歯科で勤務し、診療補助やメンテナンス業務に従事しました。また、昨年からリーダーとしての役割も担い、スタッフ教育にも務めてきました。歯のメンテナンスは、患者さまの口の健康だけでなく体の健康にもつながっていることにやりがいを感じています。本日はよろしくお願いいたします。」
〈回答のポイント〉
経歴は時系列に並べ、1分程度で簡潔に伝える
「人となり」を伝える自己紹介。自分の言葉で自分のことをしっかりと、かつ簡潔に伝えましょう。話す時間の目安は30秒~1分程度。焦って早口になったり、長くなったりしすぎないよう、事前に整理し、練習しておくと安心です。卒業してから今に至るまでの主な仕事や、学んだこと、就いた役職、経験年数などポイントを整理し、時系列に伝えると良いでしょう。