面接で採用担当者に良い印象を抱いてもらうには、質疑応答の内容だけでなく、言葉遣いをはじめとする話し方も重要です。本記事では言葉遣い・話し方の実践編として、面接シーンにふさわしい言い回し、相手の印象を良くする話し方のテクニックを解説します。
面接シーンだけでなく、仕事での患者や上司とのコミュニケーションなどにも役立つので、ぜひ押さえておきましょう。
また、以下に関連記事として紹介している「基礎編」では、基本的な敬語(丁寧語・尊敬語・謙譲語)の使い方や、話す際のポイントを解説しています。併せてご覧ください。
1 面接シーンにふさわしい言い回しを身につけよう
日常会話の中で使われがちな言い回しの中には、日本語として正しくなかったり、採用担当者に対するマナーとして不適切であったりする、いわゆる「NG表現」が少なくありません。本項では、そんなNG表現をどのように言い換えれば良いか紹介します。
日頃から目上の人とのコミュニケーションの際に適切な表現を使うように心がけて、自然に使いこなせるようにしておくことをお勧めします。
【NG表現②】「なるほど」「たしかに」
⇒【OK表現】「おっしゃるとおりです」「ごもっともです」
相手の言っていることに同意を示す際の言い回し。「なるほど」「たしかに」には、話の内容について「私は納得できる」と評価を下しているニュアンスを含むため、上から目線の言い方のように相手には感じられてしまう可能性があります。
ちなみに、「なるほどですね」と丁寧に言い表そうとする人も少なくありませんが、「なるほど」+「ですね」の組み合わせは文法的に誤っており、敬語として成立していません。失礼な印象を強めてしまうため、使わないことをお勧めします。
【NG表現③】「すみませんでした」「ごめんなさい」
⇒【OK表現】「申し訳ございません」
相手に謝罪する際の言い回し。謝るシチュエーションは軽いミスから重大なトラブルまでさまざまですが、いずれにしても相手の心証を少しでも良くすることが大切なので、特に失礼のない表現が推奨されます。
「すみませんでした」は、カジュアルな印象を与えやすい表現なので、採用担当者に対して用いるのはお勧めできません。
「ごめんなさい」は、家族や友人など身近な人に対して使われる謝罪表現で、「すみませんでした」以上にフランクで失礼な印象を与えやすいので使わないほうが良いでしょう。
なお、OK表現として挙げた「申し訳ございません」と似た言い回しに「申し訳ありません」があります。どちらも意味合いに違いはありませんが、「申し訳ございません」のほうがより丁寧な印象を与えられます。
【NG表現④】「よろしかったでしょうか」
⇒【OK表現】「よろしいでしょうか」
確認を取る際の言い回し。現在の話を過去形で聞くことは、日本語として間違った使い方なので避けたほうが良いでしょう。
【NG表現⑤】「全然大丈夫です」
⇒【OK表現】「まったく問題ございません」
「全然」は本来「全然~ない」という強い否定を表す際に使われる言葉。強く肯定する際の「全然~です」という使い方は、日常会話で一般的になりつつありますが、フォーマルな面接シーンでは不適切です。
また、同意を示す「大丈夫です」も、採用担当者に対して使うとカジュアルな印象を与えやすいため、使用は控えることをお勧めします。
【NG表現⑥】「参考になりました」
⇒【OK表現】「勉強になりました」「学ばせていただきました」
相手から何かを教えてもらった際などに使われる感謝表現の一種。しかし、「参考になる」には「参考程度に聞いておく」といった上から目線のニュアンスが含まれるため、失礼だと思われる可能性があります。
一方、「自分の知識が増えた」という意味合いの「勉強になりました」「学ばせていただきました」であれば、相手や話の内容を尊重している姿勢を示せるので、好印象につながりやすいでしょう。
【NG表現⑦】「見れます」「食べれます」「考えれます」
⇒【OK表現】「見られます」「食べられます」「考えられます」
「見ることができる」などの可能の意味合いを持たせる際、「~られる」ではなく「~れる」のように「ら」を省く言い方があり、「ら抜き言葉」と呼ばれています。本来は誤った表現ですが、日常会話では定着しているといえるでしょう。しかし、ビジネスシーンやフォーマルな場では不適切とされているため、使わないことをお勧めします。
【NG表現⑧】「通勤で利用する電車は〇〇線になります」「こちらが履歴書になります」
⇒【OK表現】「通勤で利用する電車は〇〇線です」「こちらが履歴書でございます」
「〜になる」は「ある状態から変化して別の状態となる」という意味合いで用いる表現のため、状態の変化が生じないもの・場所などに対して使うことは適切ではありません。
【NG表現⑨】会話での「貴院」「貴施設」
⇒【OK表現】「御院」「御施設」
相手先について敬意を込めて呼ぶ場合、会話では「御(おん)」、メールや手紙では「貴(き)」をつけることがマナーです。混同しないように注意しましょう。
なお、事業所の種類によって表現が異なります。代表例を下表にまとめましたので、参考にしてください。
事業所の種類ごとの呼び方・書き方
NG表現⑩「去年」「この間」「もうすぐ」
⇒OK表現「昨年」「先日」「間もなく」
「去年」「この間」「もうすぐ」のような時期を示す表現や数量・程度を示す表現の中には、面接シーンで使うとカジュアルな印象を与えやすいものがあります。下表でOK表現への変換例を紹介しますので、ぜひ活用してみてください。
時期や数量・程度を示す表現の変換例
【NG表現⑪】「拝見させていただく」「ご覧になられる」
⇒【OK表現】「拝見する」「ご覧になる」
NG表現は「二重敬語」と呼ばれる、よくある日本語の誤り。敬語には「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類があります(詳しくは基礎編を参照)が、同じ種類の敬語を2つ組み合わせると二重敬語になります。
- 拝見させていただく → 拝見する(「見る」の謙譲語) + させていただく(「する」の謙譲語)
- ご覧になられる → ご覧になる(「見る」の尊敬語) + ~られる(尊敬を意味する助動詞)
二重敬語の一例と正しい表現を下表でまとめましたので、チェックしてみましょう。
二重敬語の例とOK表現
丁寧に話そうとするあまり、つい二重敬語を使ってしまうことは少なくありませんが、「敬語が使いこなせていない」とかえって印象を損ねてしまう可能性も。正しい敬語を癖づけるために、日頃から敬語を使う際には二重敬語になっていないか注意してみてください。
また、行為以外でよく聞く二重敬語のケースとして、「院長様」「社長様」があります。「院長」などの役職にはもともと敬称の意味合いを含んでおり、「役職」+「様」は敬称を重ねた二重敬語に該当するため、使用を控えるほうが無難でしょう。
ただし、「院長」+「先生」の二重敬語である「院長先生」は、一般的によく耳にする言葉でもありますので、会話の中で咄嗟に出てしまってもさほど問題ではないものと考えられます。一方、文字で表すと日本語としての誤りが際立ち、マイナスの印象につながりやすいため、「院長先生」をメールや手紙、履歴書などでの書き言葉で用いることは避けたほうが良いでしょう。
もし呼び方に迷ってしまう場合は、「〇〇様」とするのもお勧めです。
2 相手の印象をより良くする言葉遣い・話し方のテクニック
面接シーンで自然に使いこなせれば、相手の印象がより良くなることが期待できる言葉遣いや話し方のテクニックを紹介します。いずれも円滑なコミュニケーションに役立つので、日常生活で目上の人と会話する際に、ぜひ積極的に取り入れて、自由に使いこなすことをめざしてみてください。
①面接での一人称は「わたくし」
面接のようなフォーマルな場では、女性も男性も自分のことは「わたくし」と呼ぶことをお勧めします。「わたし」でも必ずしも間違いではありませんが、「わたくし」のほうがより丁寧な印象を与えます。
②相手にお願いをする際は「恐れ入りますが」「お手数ではございますが」などを添えよう
相手にお願いをする際、本題だけを述べるのではなく、頭に「恐れ入りますが」「お手数ではございますが」「大変恐縮ですが」といった言葉を添えてみましょう。
いずれも相手に手間をかけさせることへのお詫びの気持ちがこもった表現です。ストレートに依頼するよりも相手の心証を良くする効果が期待できます。
このような本題を述べる前につける配慮や気遣いの伴った言い回しを「クッション言葉」といい、お願いなどを相手に聞き入れてもらいたいときに役立ちます。
③質問する際は「差し支えなければ」「よろしければ」などを添えよう
これらのクッション言葉を添えることで、相手は「答える」「答えない」の選択の余地が与えられたように感じられるので、答えることへの抵抗感を和らげる効果が期待できます。
労働条件に関するデリケートな質問をする際などに、ぜひ活用してみましょう。
④「結構でございます」を、別の肯定・否定の表現に言い換えよう
「結構でございます」は、敬語としては何ら問題のない表現です。
しかし、「結構」は肯定(承諾)と否定(辞退)の2通りの解釈ができる言葉であり、断るつもりで言った「結構でございます」を、相手は「承諾してくれた」と誤解してしまうといった可能性がはらんでいます。そのため、肯定でも否定でも極力使わないことをお勧めします。
肯定したい場合は「承知しました」「かしこまりました」など、否定したい場合は「ご辞退申し上げます」「ご遠慮いたします」などのように、肯定や否定が明確な表現に言い換えると良いでしょう。
⑤「一応」「ひとまず」など、曖昧さを感じさせる言葉の使用は避けよう
「一応」「ひとまず」「とりあえず」などは、「不十分ながら」というニュアンスを含みます。質疑応答の際に「一応、病棟での臨床経験があります」のような回答をしてしまうと、「十分な経験があるのかはっきりしない」「自信を持って答えていない」というマイナスの印象につながりやすいです。
自信満々よりも慎ましい印象を与えたいからと、謙遜して「一応」をつい使ってしまう人もいるかもしれませんが、逆効果になりやすいため避けたほうが良いでしょう。
⑥話の内容に合わせて、声のトーンやペースを変えてみよう
声については、トーン(高さ)やペース(速さ)によって、下図のように与える印象が変化するといわれています。
声のトーン・ペースが相手に与える印象
相手にしっかり伝わる話し方をすることが大前提ですが、「相手に温かい印象を持ってほしいので、少しゆっくりめに、トーンを高くして話してみる」など、相手に与えたい印象に合わせて声の出し方を意識してみることもお勧めです。
試しに、「ありがとうございます」を「高い声で速く」「高い声でゆっくり」「低い声で速く」「低い声でゆっくり」の4パターンで口にしてみてください。与える印象の違いを感じられるのではないでしょうか。
とはいえ、自分の発声が与える印象を把握するのは容易ではありません。その場合は、転職エージェントを活用してみましょう。例えば、転職エージェント「ドクターズ・ファイル エージェント」であれば、キャリア・アドバイザーによる面接指導を受けられるので、自分の話し方がどんな印象を与えるか教えてくれたり、プロ目線での具体的なアドバイスがもらえたりできます。
面接以外にも履歴書の書き方や自己分析などもサポートしてくれるので、転職活動を進めやすくなるでしょう。ぜひ積極的に活用してみてください。
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ここまで、面接の場での適切・不適切な表現や、より印象アップが期待できる言葉遣い・話し方のテクニックについて紹介しました。普段、何げなく話しているとなかなか気づきにくいものですが、言葉遣いや話し方には注意すべき点がたくさんあります。
この機会に日頃の言葉遣いや話し方を今一度見直してみて、面接シーンで好印象を与えるコミュニケーションをめざしてください。
【NG表現①】「わかりました」「了解しました」
⇒【OK表現】「承知しました」「かしこまりました」
相手の要望や指示に応じる際の言い回し。「わかりました」は丁寧語ですが、カジュアルな印象を与えやすいのでお勧めできません。「了解しました」は同僚や後輩などに対して使う表現のため、目上の相手である採用担当者に対して使うのは不適切です。