マイクロスコープを活用して
動画で口腔内の状況を患者と共有する
あじさか歯科医院
(福岡市城南区/別府駅)
最終更新日:2023/03/01
- 保険診療
患部を約20倍に拡大できる歯科用顕微鏡のマイクロスコープ。神経の感染の除去を図る根管治療や精密な虫歯治療など、細かな治療に役立つ機器として導入されている。そんな中「あじさか歯科医院」では患者と口腔内の状況をシェアすることに重点を置き、マイクロスコープを活用。口腔内の状態や治療の状況などを動画で撮影し実際に見てもらうことで、患者の歯科治療に対するモチベーションや口腔ケアへの動機を高めることが狙いだ。「歯科治療は見えないから怖い。どんな治療が行われているか見せることで、安心にもつながる」と話す鯵坂正秋院長に、マイクロスコープ導入の背景をはじめ、そのメリットや今後の活用法などについて話を聞いた。
(取材日2022年2月2日)
目次
マイクロスコープは精度の高い治療を行うためだけではなく、患者との口腔内シェアツールとしても有用
- Qどのような背景でマイクロスコープを導入されたのでしょうか?
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A
私の理想とする治療は、実際の治療をそのまま患者さんに見ていただくことです。これまでは口腔内カメラで撮影した画像を見ていただき、口腔内の状態や治療の状況を説明する方法を採用していたのですが、あくまで静止画ですし、伝わりにくいところがあると感じていました。そのため患部を拡大して治療ができ、なおかつ動画として記録できるマイクロスコープを導入しました。患者さんに動画を見てもらうことで、より歯科治療への理解が深まりますからね。口の中はどうしても自分では見ることができませんし、見えないから恐怖心も生まれていく。そのため患者さんの安心につなげていくという部分においても、非常に有用な機器だと感じています。
- Qどのような症状・治療で活用されることが多いのでしょうか?
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A
一般的にマイクロスコープは歯の根の根管治療をはじめとした精度が求められる治療の際に使われています。もちろん当院でも虫歯を精密に削ったり、根管治療に使ったり、かぶせ物の適合をチェックしたり、さまざま活用していますが、それ以上に動画の撮影ツールとしての意味合いが強い。例えば初診時はマイクロスコープを必ず使うのですが、それは口腔内の状況を共有するという役割。治療途中で患者さんに説明が必要な場面でも、都度動画を撮影していきます。動画を見てもらうことで治療に対するモチベーションを保ち、治療途中でのドロップアウトを防いだり、口腔ケアの必要性を感じたりするきっかけとして活用していきたいと思っています。
- Qマイクロスコープを活用するメリットを教えてください。
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A
マイクロスコープによるメリットはたくさんあると思いますが、ひとつは拡大して見ることで結果的に治療の質の向上につながるということ。もちろん治療が動画として記録されるので、私自身も緊張感を持って治療に臨むことができます。また繰り返しになりますが、患者さんが自分の口の中の状態を理解し、そこからなぜ虫歯になってしまったのか、なぜ歯周病になってしまったのかなど、一緒に原因を探っていくことが可能です。磨き残しがあったとしても、画像で見るとどの部分なのかわかりにくいですよね。それが動画になると、低倍率から高倍率へと段階的に見せることができるので、自分の口の中をイメージしやすくなるというメリットがあります。
- Q患者さんと口腔内をシェアするという目的が強いのですね。
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A
そうですね、実際に動画を見ると、恥ずかしいと感じる方もいらっしゃると思いますが、「すごい」と興味を持っていただけるはずです。これは例え話ですが、1万円札には「NIPPON GINKO」というマイクロ文字が書かれています。肉眼ではほぼ気づかないようなものですが、これも20倍まで拡大すればしっかりと確認できます。歯も同様に小さなものですが、拡大することで隅々まで見ることができ、それが患者さんの興味につながっていくのではないかと感じています。また撮影した動画は治療の事例として活用することもできますから、患者さんが納得した上で治療を受けるためのひとつの道しるべになると思っています。
- Q中には動画を見たくないという方もいらっしゃるかと思いますが。
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A
より自分の口腔内に興味を持っていただくために、マイクロスコープを使った動画は欠かせないと思っています。しかし患者さんによっては見れば見るほど歯科に対する恐怖心を持ってしまう方もいらっしゃると思うので、問診などで話を伺った上で判断していきます。中には見えないからこそ治療できるという人もいるでしょうから。当院では歯科口腔外科にも対応しているので、治療によっては出血することもあります。それらを動画で見せるということにこだわってしまうと、かえって治療やモチベーションに悪影響を及ぼすこともあるので、患者さんの歯科治療に対する気持ちを見極め、希望などを確認しながら活用していきたいと思います。