脳梗塞と心筋梗塞の予防は
生活習慣病の管理が鍵
高野内科クリニック
(北九州市小倉北区/南小倉駅)
最終更新日:2024/06/21


- 保険診療
全身に張り巡らされた血管。若い頃はやわらかくしなやかだったこの血液が流れる管は、加齢や生活習慣病などが原因で硬く、厚くなり、「動脈硬化」が進行することがある。「動脈硬化が進むと、脈を取るのに手首の動脈を触っただけでもわかるくらい血管が硬くなるんですよ」と話すのは、「高野内科クリニック」の高野健太郎院長。「なぜ血管の中で血液が固まり詰まるのか」という研究で凝固異常や血管病の究明に尽力した血管のスペシャリストだ。「動脈硬化が強く関わる病型としては、脳梗塞や脳出血といった脳の病気、狭心症や心筋梗塞といった心臓の病気などがあります。命に関わる重大な病気ばかりですが、これらは“予防法がある”ということをぜひ知っていただきたい」と熱く語る。今回、心臓や脳の病気と血管との関係性について詳しく聞いた。
(取材日2023年10月12日)
目次
命を脅かす脳梗塞や心筋梗塞を起こさないために。予防薬の服用、前ぶれ発作後の即受診、検脈を心がけよう
- Q動脈硬化が進行すると、どうなるのでしょうか。
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A
▲凝固異常や血管病のスペシャリストである高野先生
動脈硬化がある方の血液は固まりやすい状態、つまり「血栓準備状態」にあります。血管が狭くなっている場所を通る時などにそこで固まってしまう血栓症や、その固まり(血栓)の一部がはがれて血流に乗って運ばれた先で詰まる塞栓症を引き起こし、その“事件”が起こった場所によって心筋梗塞や脳梗塞など命を脅かす病気につながります。ここでちょっと脳梗塞について整理しておきますと、脳梗塞は脳卒中の分類の一つで、脳血管が詰まって起こるもの。脳卒中はほかに、脳血管が破れて起こる脳出血、くも膜下出血があり、脳梗塞はさらに、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症に分類されます。
- Q脳梗塞と一言で言っても、いろんな種類があるのですね。
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A
▲患者の思いに応えたいという思いで日々診療に取り組む
言葉が難解ですが、原因や治療薬が違ってくるので、この分類は頭に入れておいたほうが良いと思います。まず、アテローム血栓性脳梗塞は脳の太い動脈が、ラクナ梗塞は脳内の髪の毛程度に細い動脈が詰まり、その先の脳神経細胞が死に、まひなどの後遺症を残すものです。どちらも高血圧症や糖尿病などの生活習慣病、動脈硬化が強く関わり、特にアテローム血栓性脳梗塞は動脈内にコレステロールなどの脂質がたまりドロドロとした粥腫(じゅくしゅ)を形成するという動脈硬化の性質が、狭心症や心筋梗塞とよく似ています。こうした重大な病気を起こす前に、血液を固まりにくくするための抗血小板薬の服用も含め、生活習慣病を管理することが大切です。
- Q生活習慣病の管理以外に、私たちができることはありますか?
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A
▲いつもと少しでも違うことがあれば早急に受診を
一過性脳虚血発作、いわゆる「脳卒中の前ぶれ発作」を見逃さないこと。脳梗塞を起こした方の半数は、発症前48時間以内に発作があったというデータがあります。例えば、夕食時に手に力が入らなくなりお茶碗を落とした、でも2~3分で元に戻ったので「疲れているんだろう」とそのまま就寝。翌朝には手が動かなくなっていた、というのはよくある話です。片方の手足に力が入らない、急に言葉が出なくなるなどの症状が一時的にでも現れたら、夜間でもなんでも、とにかく早く病院へ行ってください。深刻なダメージを避けるためにも、脳卒中を起こして4、5時間以内に「血栓溶解療法」を受けることが重要。まさに「タイム・イズ・ブレイン」です。
- Q脳梗塞の一つ「心原性脳塞栓症」についても教えてください。
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A
▲患者と同じ目線に立って話をすることを意識しているそう
心原性脳塞栓症は、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞とは違い、「心房細動」という不整脈が原因です。不整脈によって心臓の左心耳の血がよどみ血栓ができ、それが血流に乗って流れ、脳動脈を閉塞。脳梗塞の中では最も重症となるケースが多く、ノックアウト型脳梗塞とも呼ばれています。生活習慣病などのリスクがなくても心房細動に加齢や生活習慣病、喫煙、ストレスなどのリスクが加わると脳梗塞になる危険性が高まります。心房細動には抗凝固薬という薬を用います。脳梗塞や心筋梗塞を予防するための薬は、その原因や血栓ができた場所によって抗血小板薬か抗凝固薬かを使い分けますが、これらをまとめて「抗血栓薬」という言い方をします。
- Q心房細動の自覚症状はあるのでしょうか?
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A
▲健康寿命を延ばしたいと考えている人の力になりたいと話す院長
気分が悪くて今にも死にそうと言われる方もいれば、何の症状もなくケロッとしている方もいて、自覚症状はあてになりません。心房細動の早期発見のためにお勧めなのは、自分でできる「検脈」です。手首の血管にもう片方の手の人差し指、中指、薬指を15秒ほど当てて、トン、トン、トンという脈拍を確認してみてください。親指の付け根あたりがわかりやすいと思います。この時、脈が飛んだり、乱れたりすることがあれば早めに医師に相談を。思いついた時で構いませんので、時々やってみてくださいね。