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高野 健太郎 院長の独自取材記事

高野内科クリニック

(北九州市小倉北区/南小倉駅)

最終更新日:2024/06/21

高野健太郎院長 高野内科クリニック main

西鉄・歯科大前バス停から徒歩3分の所にある「高野内科クリニック」。内科と循環器内科を標榜し、半世紀以上にわたって高血圧症や狭心症、糖尿病などの生活習慣病を抱える患者に寄り添ってきた。1998年に父親からクリニックを引き継いだ院長の高野健太郎先生は、凝固異常や血管病のスペシャリストだ。診療の場を現在のクリニックに移してからも、国立循環器病研究センターやマサチューセッツ大学などで培ってきた経験と技術で高いレベルの診療を続けている。「患者さんの疑問は、何でも受け止める」というのは、高い専門性と豊富な知識を持つ高野先生ならではの診療スタイル。先生の診療方針をよく理解し、患者と親身に向き合うスタッフたちが、そのスタイルを支えている。高野先生に、クリニックの診療方針や地域に対する思いなど話を聞いた。

(取材日2023年9月14日)

専門性の高さを生かした生活習慣病の診療に注力

まずは、クリニックのこれまでのあゆみについてお聞かせください。

高野健太郎院長 高野内科クリニック1

当院は、私の父が1967年に開業しました。当時、循環器内科を標榜する開業医は少なかったので、高血圧症や狭心症などの生活習慣病を抱える患者さんが8割を占めています。父が突然倒れたため、1998年に私がクリニックを親子継承。それまでの診療内容は変えずに、エコーをはじめとした新しい検査機器を取り入れるなど時代に合わせたアップグレードを行い、再スタートを切りました。また、この地域は健康や医療に対する意識の高い方が多く、私が就任してからは治療の説明や患者さんとのコミュニケーションにより力を注いでいます。

先生が医師をめざされたのも、やはりお父さまの影響でしょうか?

実はそうでもないんです。本当は美術関係に行きたいと思っていましたが、芸大は難しいのでなんとなく医師になったんです。ただ医師がとてもやりがいのある仕事だとは感じていました。父は世界的に知られる久山町研究に携わっておりまして、研究対象を久山町に選定したのは父なんです。その久山町研究から生活習慣病の実態と予防に関心を持つようになりました。父が倒れた時に実家を継承するかどうか、正直悩みました。研究業績が国際的に知られるようになりアメリカの研究所からも声がかかっていましたし、やりたい研究もまだまだありましたから。最終的には当院を頼りにしてくださっている患者さんからのお声や先輩方の後押しもあって、クリニックを継ぐことを決意しました。

現在診察されている患者さんの層や多い主訴について教えてください。

高野健太郎院長 高野内科クリニック2

年齢層は主に40代から80代後半です。この地域も高齢化が進み、特に65歳以上の高齢の方が増えてきています。メインはやはり高血圧症、狭心症、糖尿病、脂質異常症そして脳卒中といった生活習慣病での受診となります。地元の方を中心に、当院の専門性の高さを聞いて県外から、中には関東地方から通って来られる方もいますね。治療が難しい患者さんを病院から逆に依頼されることもあります。当院の患者さんは、通院をストップしてしまう、つまりはドロップアウトする方が少ない印象です。皆さん私達の説明にしっかりと耳を傾け、真面目にご自分の病気と向き合ってらっしゃるので、私達もその思いに応えたいという思いで日々診療に取り組んでいます。

増えている生活習慣病。早期治療が未来の健康を守る

凝固異常についての研究など、世界レベルでご活躍されてきたと伺いました。

高野健太郎院長 高野内科クリニック3

研修医時代に重症の患者さんを多く担当し、凝固線溶異常で亡くなる方を診たことがきっかけで血液について詳しく学びたく、国立循環器病研究センターで血栓止血学の専門家である先生に師事。「なぜ血管の中で血液が固まって詰まるのか」という、当時メジャーではなかった血栓準備状態のメカニズムの研究に取り組みました。血液の固まりやすさや血栓の種類、すなわち凝固亢進状態は、脳卒中の各臨床病型や心房細動などの基礎心疾患によって病態が異なることを明らかにしました。業績はすべて英語で論文化しています。留学中は脳虚血に陥る過程をMRI画像と電気生理学で実験的に解明することに取り組んできました。こういった先端の研究で培った知識や経験、マサチューセッツ州での日常生活が私の人生に大きな影響を与えるものとなりました。今でもドクター向けの講演会や市民公開講座を通し全国や地域の患者さんに脳卒中などの啓発を行っています。

生活習慣病の治療で大切なことや、アプローチ方法について教えてください。

食事や生活スタイルの変化に伴い生活習慣病の患者は増加しています。その一方で、検査機器の向上や健康診断の普及により、危険因子のほか脳卒中、冠動脈疾患などの早期発見・予防が可能になりました。生活習慣病の治療でもっとも重要なのは、患者さんのやる気をどう引き出すかです。患者さんには「血圧をすぐに下げなくても死ぬことはない」と前置きをして、「ただし、すぐに健康を害することはなくとも、確実に何割かは将来倒れるリスクがあります。今の時点で自分が倒れる側にいるのか、そうではないのかは誰もわかりません」と、お伝えしたうえで「せっかくなら安全な方のグループに入りませんか?」と話し、治療に導いていきます。薬に関しても、「飲みたくない気持ちはよくわかります」と共感しながら、なぜ薬が必要なのかを納得できるまでお話しするようにします。

患者さんと接する際に、心がけていることを教えてください。

高野健太郎院長 高野内科クリニック4

診療の質を落とさないためにも、患者さんをさばくだけの外来はしたくないという思いがあり、一人ひとりにかける時間を大切にしています。説明の際に意識しているのは、その方の性格や医学的知識などを把握して、患者さんに合わせて言葉を選ぶということ。だから患者さんによっては専門用語も多く使います。理解しづらい患者さんにはさらに分かりやすく言葉を言い換えます。患者さんと同じ目線に立って話をするというのが重要です。治療に関すること以外に、趣味やペット、旅行の話題なども患者さんとよく話をします。私は鉄道模型に音楽、車、絵画などと多趣味なものですから、診療以外の雑談によってお互いの距離が縮まるし、その方の性格や生活スタイルについても把握することができます。

何でも相談できる地域の「よろず相談所」をめざして

患者さんとのコミュニケーションをとても大切にされているのですね。

高野健太郎院長 高野内科クリニック5

今は週刊誌やインターネットから、医療や健康に関するさまざまな情報を手に入れることができます。その中には、間違っているものと正しいもの、どちらも混ざっていて、患者さんから「これって本当ですか?」とよく質問されます。私はそうした話題も頭ごなしに否定するのではなく、むしろなぜそういう話題が出ているのか、どこが間違っているのかをきちんとお答えするようにしています。話しやすいドクターはいくらでもいますが、高度な医療知識を持って、科学的データやエビデンスに基づいた説明ができる人は多くありません。患者さんと話をするのはとても楽しいですし、素朴な疑問にできるだけ答えることが、ドクターやクリニックの信頼につながっていると思います。

スタッフの皆さんの存在は、先生の診療をどのように支えているのでしょうか?

当院のスタッフは、私の診療方針を理解したうえで、皆熱心に患者さんと向き合ってくれています。常に私の先を読んで行動してくれていますし、時には私以上に時間をかけて病気や治療の説明することも。私の考えをよくわかってくれてるので、私と話の内容がズレることもなく、こうしたスタッフの存在が患者さんの通院のモチベーションになっています。また、院内が常に清潔なのも、毎日昼休みの時間帯にスタッフが率先して院内を隅々まで掃除してくれているからこそです。本当に心強い存在ですね。

最後に、今後の展望と読者の皆さんにメッセージをお願いします。

高野健太郎院長 高野内科クリニック6

私の専門的知識を生かした診療で、脳卒中や心筋梗塞を予防して健康寿命を延ばしたいと考えている方の力になりたいと考えています。そうして患者さんと付き合っていく中で、いずれは皆さんの「よろず相談所」になれたらうれしいですね。私達がめざすのは「楽しい外来」。先ほどお話したように、病気やそれ以外のどのようなことでも、気になったら何でも聞いてもらいたいと思います。今、私が一番伝えたいのは、生活習慣病の積極的管理が健康寿命の延伸に繋がるということです。近代医学の父といわれるウィリアム・オスラー先生の「人は血管とともに老いる」という言葉を忘れないようにしたいものです。

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