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香月 きょう子 院長の独自取材記事

池田医院

(北九州市門司区/出光美術館駅)

最終更新日:2023/03/14

香月きょう子院長 池田医院 main

門司港の街中から少し離れた、昔ながらの住宅地にある「池田医院」。1955年、現院長である香月きょう子先生の父が開業して以来、地域医療に貢献してきたクリニックだ。香月先生が同院を継承したのは1985年のこと。内科・小児科を標榜し、最近は生活習慣病や認知症などの高齢の患者が多いという。診療は予約制を採用。「患者さんの様子をしっかり見ることが診療の第一歩。認知症の患者さんはマスクを適切に使うことが難しいケースが多いので、その方を感染から守るという意味合いもあります」と穏やかに語る香月先生。長年、学校保健の活動にも携わってきた経験から、小児生活習慣病への取り組みや性教育の必要性を訴える。「まず親御さんが正しい知識をつけ、子どもに伝えていってほしい」と話す香月先生に、今の想いを聞いた。

(取材日2022年6月23日)

ゆっくり丁寧に、高齢者のペースに合わせた診療を

歴史の長い診療所だそうですね。

香月きょう子院長 池田医院1

門司港出身の父が1955年、内科・小児科のクリニックとして開業しました。私は幼い頃、いわゆる「門前の小僧」のように、父が優しく患者さんの診療を行っている姿をいつも見ていました。父に直接言われたことはありませんが、継ぐのが当然という雰囲気の中、自然と医師を志すように。福岡大学医学部を卒業し、研修を終えた頃に父が病気になったので手伝いに入るようになり、1985年に当院を継承しました。私は当時30代前半。子育てしながら他の病院に勤務することが当時はかなり難しかったこともあり、この道を選びましたが、開業医と子育ての両立も大変でしたね。当時はこの建物の上に住んでいたのですが、3人の子どもが順々に感染症にかかった時は、私は上と下とを行ったり来たりしていたことも思い出します。周りの人たちに家事や育児などを手伝ってもらい、助けてもらいながら、どうにかこうにか乗り切ってきました。

継承された約40年前と今を比べて、患者さんはどのように変わってきましたか。

それはもう、高齢者が劇的に増えたことにつきるでしょう。門司区の高齢化率は37%と、北九州市内でも一番高いんですよ。それに合わせて認知症の患者さんも増えました。この辺りは夫婦のみや単独世帯が多いので、認知症になって施設入所される方も。当院は長いお付き合いになる患者さんがとても多いので、そういった方が認知症を患うなど状況が変わってしまうと、気持ちが落ち込んでしまうこともあります。認知症サポート医でもありますので、親身になって対応し、介護保険の申請をお勧めしたり、ケアマネジャーさんと連携したりしながら、患者さんとご家族をサポートしていきたいですね。

認知症の患者さんをはじめ、高齢の方を診療される時に特に気をつけていることは何ですか。

香月きょう子院長 池田医院2

まず、入って来られる様子をよく見ます。ちゃんと歩けるか、診察室に入ってきて椅子に座れるか、服の脱ぎ着ができるか、私たちの指示を聞いて行動に移せるか。そしてじっくりお話を伺います。必要であれば認知症の簡易的な検査をしたり、近隣の病院でCTやMRIを撮ってきていただいたりして、それをもとに診断し、進行をなるべく抑えていけるように治療を進めていきます。当院が予約制にしているのは、お一人ずつの診療にゆっくり時間をかけたいから。高齢になると、要領よくスムーズにお話しできる方は少なくなってきますし、洋服の着脱にしても若い方のように、さっと上着を脱いでさっと服をまくってさっと直して、というわけにはいかないことも。また、認知症の方はマスクを適切に使うことが難しく、すぐに外してしまいがち。高齢者は感染症にかかりやすいので、なるべく他の患者さんとの接触をなくして、その方をお守りしたいと思っています。

患者が納得して治療を続けられるように親身にサポート

生活習慣病の患者さんに対して、どのようなアプローチをされていますか。

香月きょう子院長 池田医院3

実はわが家は、親戚一同、糖尿病家系でして。ですので私自身、若い頃からかなり健康を意識した生活を送ってきました。子どもの頃に始めたテニスと日本舞踊は好きでずっと続けていて、今もそれぞれ週1回は練習に通っています。日本舞踊は優雅に見えるけれど、結構きついんですよ。普段からよく歩き、太らないように、食事にも気をつける。そうした小さな心がけの積み重ねが、今の私の健康につながっているように思います。生活習慣病の患者さんに「私も頑張っているから、一緒に頑張ろう」と話すと説得力がありますよね。そうやって、ご自分の生活習慣を変えようと自然と努力されるように背中を押していければと思っています。

子どもの診療で配慮していることはありますか。

子どもに、なるべく自分の口で言ってもらうようにしています。診察室に子どもと親御さんが一緒に入って来られると、ほとんどの場合まず親御さんが「頭が痛いらしくて」などと説明を始めます。それを丁寧に聞き取った上で、子どもに「頭痛いの?」と直接聞いてみます。そうすると、結構違うことを言い出す場合も。お母さんが聞いた時は痛かったけれど、今はもう痛くないとか、別のところが痛くなってきたとか。自分のことを他人に伝える練習にもなるんじゃないかなと思っています。

地域医療を支える診療所として、どんな役割を担っていきたいとお考えですか。

香月きょう子院長 池田医院4

例えば、がんが見つかって基幹病院に送り出した患者さんがいらっしゃったとします。その方が基幹病院で治療を終えられた後は、基幹病院と当院の両方に通われることになる場合が多いですね。基幹病院でがんの治療を続け、生活習慣病は当院で診るというように。そんな中で患者さんとお話ししていると、大きな病院で説明されたはずの治療方針を理解できていない、忘れてしまっていることが多いことに気づきます。忙しそうな先生に遠慮して質問できなかったり、医療用語がわからなかったり。ちょっとした行き違いから、不満を抱えてしまうこともあります。そこをフォローするのが、当院のような地域のかかりつけ医の役割。患者さんが納得できるように、私からも時間をかけて説明し、治療を続けて元気になっていただきたいと思っています。

子どもの生活習慣病、性教育にもっと注力してほしい

院外での活動にも積極的だと伺いました。

香月きょう子院長 池田医院5

福岡県や北九州市など、特に学校保健の分野で長年関わってきました。行政と一緒になって、小児生活習慣病の学校における健診システムや、児童虐待防止マニュアルを作るなど、やりがいも大きかったですが、課題はまだ山積みです。特に子どもの生活習慣病は増加傾向にあり、考えなければならない問題であると思っていますが、皆さんになかなか振り向いてもらえない分野です。子どもの病的な肥満は、合併症やがんの発生率が高まるなど命に関わる深刻な問題が隠れていることも。肥満の子どもは生活リズムが乱れ、夜型の生活になっていることが圧倒的に多く、そして家族みんなが同じような体型をされていることもあります。「太っていて何が悪いのか」「ぽっちゃりしているだけ」といった意識を変えるように促すことは、非常に難しい場合が多いと感じています。

子どもの生活習慣病に対する適切な知識が広まるといいですよね。

この記事をきっかけに、親御さんたちに正しい知識をつけてもらえたら。もし学校健診でお子さんが肥満を指摘されたら、お子さんの将来を真剣に考えて、専門の医療機関を受診してほしいと思います。また児童虐待も大きな課題です。子どもたちが健やかに育っていけるよう、誰もが活用しやすい医療や行政の仕組みを構築していくことが急務だと考えています。

そもそも児童虐待を減らしていくためには、何が必要と思われますか?

香月きょう子院長 池田医院6

結局、大事になるのは子どもたちへの教育、特に性教育だと思っています。望まない妊娠が虐待につながっていることも多いです。性教育をしっかり行っていくことで、望まない妊娠を防いでいきましょう。性教育については、学校も行政も親御さんも及び腰になっているかもしれません。子どもたちは理解したように見えるかもしれませんが、実は全然理解できていないケースも多いんです。インターネットなどの情報に惑わされることなく、何が正しくて何が正しくないのか、子ども自身が判断できるようになるには、正しい性知識を子どもに伝わる言葉で伝えていくしかありません。これからも子どもたちのために、私にできることがあれば精いっぱい役に立ちたいと思っています。

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