本田 彬 院長の独自取材記事
本田医院
(米子市/米子駅)
最終更新日:2025/11/04
かつて、初代院長が「無医村で地域の役に立ちたい」という志のもと「本田医院」を開業したのは、1947年のこと。以来約75年間、同院は地域住民の健康を見守ってきた。1988年からは2代目の本田守前院長、2023年4月からは3代目となる本田彬院長が、初代院長の志を引き継ぎながら、内科に加え糖尿病の専門性を生かした診療を行っている。2019年に建物を新しくした同院では、幅広い症状に対応しながら内分泌を専門とした診療も行い、日々地域医療に貢献している。患者へ丁寧に説明し、納得してもらった上での治療をモットーにしている彬院長に、クリニックの歴史や専門の内分泌内科についてたっぷりと話を聞いた。
(取材日2022年2月5日/情報更新日2025年11月1日)
無医村に開業して約75年、初代の志を胸に地域へ貢献
1947年開業ということで、長い歴史がありますね。

当院は、軍医の経験を持つ祖父が、戦後に西伯郡五千石村、現在の米子市諏訪に開業しました。内科・小児科の看板を掲げていましたが、周囲に医療機関がない頃は、それこそ、どんな症状でも診察する「村のお医者さん」だったのだと思います。その後1968年に、現在のクリニックの隣接地に移転。前院長の父は、1988年に当院を継ぎ、祖父のように地域医療を守りながら、専門分野も必要だと糖尿病を専門に選んだそうです。祖父や父が地域の患者さんと長く関わって診療をしているのを見てきた私は順天堂大学に進学し、将来どのような知識や技術が求められるかを考えて、内分泌疾患、特に糖尿病の研究を専門に、大学病院や大学院での基礎研究を経験してきました。2013年からは当院にて週1回診療を担当。副院長として2019年の今の建物への新築移転計画にも関わった後、2023年4月から3代目院長として祖父や父がつないできた当院を継承しました。
どのような患者さんが来院されますか?
地域の方が風邪などの不調で受診されることが多いですね。また、血液検査や尿検査、エックス線撮影、心電図検査など一通りの検査体制はそろっており、予約制でエコー検査、曜日限定で胃カメラも実施していますので、検査や健康診断で来院される方もいらっしゃいます。ほかにも、当院が専門として掲げる糖尿病や、高血圧・脂質異常症などの患者さんも来院されます。私は内分泌内科を専門にしているので、甲状腺疾患などの相談で他県も含め離れた地域から来院される患者さんもいらっしゃいます。国道沿いで、山陰自動車道からもアクセスしやすいため、遠方からも来やすいのではないかと思います。
診療の際に心がけていることはありますか。

患者さんに対して、きちんと丁寧に説明することを大切にしています。特に内分泌疾患は、体のいろいろなところに起きる原因不明の不調に悩んでいる方が多いため、説明不足では、自分の体で何が起こっているのかわからずに患者さんが置いてけぼりになってしまいます。不安を取り除くためにも、患者さん自身が病気に対する理解を深めることが重要です。また、糖尿病を治療するにあたっては、患者さん自身に食事内容の改善や運動を頑張っていただかなくてはなりません。ですから、ただ生活習慣を改善してくださいと言うのではなく、病状と、食事や運動の重要性をきちんと説明し、患者さんにご理解いただき、納得の上で治療に臨んでいただくのが一番です。
かかりつけ医に加えて糖尿病や内分泌疾患を専門に
内分泌内科について教えてください。

私たちの体内では、さまざまな内分泌物質、つまりホルモンが血液中に分泌されることで全身の正常な機能を調整しています。内分泌内科では、そのホルモンが過剰に分泌されたり、逆に分泌量が低下したりしてバランスが崩れることで起きる病気「内分泌疾患」を扱っています。例えば、血糖値を下げるホルモンであるインスリンが膵臓から分泌されなくなったり、効き目が低下したりすることで起きる糖尿病は、代表的な内分泌疾患です。ほかにも、脳下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎などのさまざまな器官からそれぞれ働きが異なるホルモンが分泌されていますので、内分泌内科が扱う症例は多岐にわたっているのです。
糖尿病も内分泌疾患の一つなんですね。
そうなんです。糖尿病は「生活習慣病」ともいわれますね。もちろん生活習慣が原因となることもありますが、実は遺伝や体質によってなりやすい人となりにくい人がいるんです。残念ながら「糖尿病になったら恥ずかしい」という風潮があったりもしますが、遺伝や体質による発症もあるということをぜひ知っていただきたいです。当院で診療している医師は糖尿病を専門にしていますので、健康診断に引っかかったという方や親戚に糖尿病が多いという方などは、気負わずにまず受診していただきたいですね。もちろん糖尿病だけではなく一般内科やほかの内分泌疾患も広く診ていますので、安心してご来院ください。
ほかにはどんな内分泌疾患を診ることが多いでしょうか。

内分泌疾患の中で糖尿病に次いで多い、甲状腺疾患ですね。甲状腺ホルモンは代謝に働きかけるので、分泌されすぎると動悸・血圧上昇・発汗・下痢などが起こる「バセドウ病」になります。逆に分泌が低下すると、これとは真逆の症状が現れる「橋本病」になるのです。甲状腺疾患は、意外と若い女性が発症することが多いのですが、健康診断での検査項目もなく、自覚症状もわかりにくいため、気づかれないこともしばしば。血液検査で判明することも多いので、病気の早期発見のためにも、気軽に来院して検査を受けていただきたいですね。実は、当院のロゴマークも甲状腺がモチーフなんです。甲状腺疾患啓発のシンボルマークであるピンクのバタフライリボンと、世界糖尿病デーのシンボルマークのブルーサークルを取り入れています。偶然甲状腺の形が本田の頭文字Hにも似ていたことで、青い輪の中にピンクのHが入ったデザインになりました。
病状や治療法を丁寧に説明し、患者の理解を得る
専門性の高い医療を提供するための取り組みを教えてください。

当院では外来診療で可能な範囲で、大きな病院と遜色のない高いレベルで治療を行いたいと考えています。糖尿病の治療は、食事や運動、投薬による血糖のコントロールが大きく、内分泌疾患も投薬での治療などは外来診療で可能です。当院には、鳥取大学医学部附属病院から循環器内科や内分泌代謝内科の医師が派遣され、私は山陰労災病院の糖尿病・代謝内科に勤務しておりましたので、そういった医療機関とも密に連携しています。例えば、高血圧を訴える患者さんが、副腎の腫瘍でアドレナリンの過剰分泌が疑わしいとわかったら、入院精密検査のできる病院を紹介します。また、新薬の登場など治療法も進歩しているので、常に新たな知識を得るためにブラッシュアップを続けています。今、特に意識しているのは「予防医療」の領域ですね。
予防医療に関して、何かこちらで行っている取り組みはありますか。
予防医療というと一般的には健康診断やワクチン接種などを指すと思いますが、もう少し拡大して「糖尿病や高血圧症などの慢性疾患の発症予防」にもアプローチしたいと考えています。そこで、2025年11月から、健康の維持・管理のための相談の受け入れを開始しました。肥満でお困りの方や、反対に痩せていても筋肉がつかないとお悩みの方、健康のために体形を維持したい方などに対して、医学的根拠をもとに運動や食事を含めた生活習慣のアドバイスをしていければと考えています。必要に応じて、運動指導や薬物治療も検討していきます。こうした取り組みを始めようと思ったのは、自力での改善が難しい方を具体的な病名がつく前にすくい上げたいという思いはもちろん、健康状態を保てている方のサポートを行うことで地域の健康寿命の延伸に貢献していきたいと考えたから。サルコペニアやフレイル予防にも寄与できればと思っています。
読者の皆さんにメッセージをお願いします。

内分泌疾患は患者さん本人では気づけないことが多いので、不調を見過ごさずに早期に治療を開始するためにも、定期的な健康診断を受けていただきたいですね。健康診断を何年も受診していないという方で、知らないうちに糖尿病や高血圧になっているというケースもあります。特に、結婚や出産を機に仕事を辞めて健康診断を受けなくなったという女性が多いので、気をつけていただきたいです。また、妊娠・出産のタイミングに甲状腺疾患を発症する方も多く、女性には体の変化が起きやすい時でもあるので、気になることがあったら健康相談にいらしてくださればと思います。

