川田 壮一郎 副院長の独自取材記事
川田内科医院
(米子市/東山公園駅)
最終更新日:2021/10/12
海辺の温泉地として知られる米子市皆生温泉の住宅街で、1985年から診療を続ける「川田内科医院」。取材に応じてくれたのは、2019年から副院長を務める川田壮一郎先生だ。病気が進行し、厳しい状態の患者が集まる基幹病院や大学病院で2年ほど前まで働いてきた川田副院長には、どうしても伝えたい思いがある。手術ができない状態まで進行し見つかるがん患者はいまだ多く、早期発見と早期治療が患者の命運を分けること、そして病気を早く見つけるためには、定期的な健診はもちろん、疑わしい症状があった際の積極的な検査が欠かせない事実だ。実家であり父の開業した医院で、改めて地域医療への貢献を志し、気軽に相談できる存在になりたいという川田副院長に、いろいろな検査やその重要性を中心に話を聞いた。
(取材日2021年6月30日)
自覚症状の少ない早期がんの発見には内視鏡検査が重要
院長のお父さまと、親子2代で診療中なのですね。
2008年に鳥取大学医学部を卒業してから、大学の附属病院や地域の基幹病院で働いてきました。働きながら大学院に通っていた時期もあり、当院での勤務に軸足を置くようになったのは2020年からです。父がこの医院を開業したのは1985年ですが、当時は自宅がこの建物の隣にあったので、子どもの頃から院内に出入りしていましたし、小学生の僕を覚えていて「大きくなったね、若先生だね」と声をかけてくださる患者さんもいます。父から医師になるように勧められたことはありませんが、患者さんたちに頼られて多くの人と関わりながら地域医療を守っている姿を見て、自然にこの仕事を選んだという感じですね。
院長は循環器、副院長は消化器のご専門と伺いました。
家の仕事とは関係なく、僕自身は医学部生の頃から専門は内科にしようと思っていました。内視鏡検査を学んでいた時、「きつい検査だからやりたくない」「痛い、つらい」という患者さんの声を何度も聞いていましたので、なんとか上達してスムーズにできるようになりたいと、消化器内科に親しんでいきました。胃内視鏡も最初は研修医同士で互いに検査し合うのですが、初めての時は苦しすぎて死ぬかと思いましたよ(笑)。 そんな思い出のある内視鏡ですが、僕の研修医時代に比べて今は機材の性能がずいぶんと向上しました。鼻からの細い内視鏡スコープも格段に画質が良くなり、患者さんの苦痛を軽減しながらしっかりと患部を見られるようになりました。
こちらのクリニックではどんな検査ができますか?
一般の血液検査やエックス線検査以外に、胃や大腸の内視鏡検査、超音波診断装置による腹部エコー、心エコーなどの検査もできます。当院では、胃の内視鏡検査は鼻の痛みや不快感がなければ経鼻をお勧めしていますが、どうしても内視鏡を入れるのが嫌でバリウムでの胃透視検査を希望される方も。胃透視は胃の形や凸凹をレントゲンで見る検査ですが、内視鏡検査は胃の内部が直接観察できる上に必要ならその場で組織検査もできますので、我慢できる範囲なら内視鏡検査のほうがいいですね。逆流性食道炎、食道がん、胃炎、胃・十二指腸の潰瘍やポリープ、胃がん、大腸ポリープなども、直接見たほうがより確実な診断につながります。小さなポリープなら内視鏡で発見次第切除し、切り取ったものを組織検査に出して調べることもできます。自覚症状なしで数年ぶりに検査をしたら、ステージ3や4のがんが見つかったというケースも。ぜひ定期的に検診を受けてほしいです。
大腸ポリープは内視鏡で発見次第、その場で切除
ピロリ菌の検査や治療も行っているそうですね。
胃内視鏡で見れば、ピロリ菌が悪さをしているかどうかはだいたいわかります。診断を確定して治療を始めるには、併せて血液検査も行います。治療は一週間薬を飲むだけですので、まずは検査をしてみることをお勧めします。ピロリ菌は乳幼児期での感染がほとんどといってよいでしょう。ピロリ菌を持っている親御さんが子どもに口移しなどで食事を与えるといったことでも感染します。僕はピロリ菌の検査や除菌についてこれまで数多くの症例を扱ってきたので、日頃から意識して情報収集をするようにしていますが、近年、若い世代の患者さんは減少しています。しかし、ピロリ菌の感染は胃炎や胃潰瘍だけでなく胃がんの原因でもあるため、感染している人はなるべく早期に治療による除菌を行うのが望ましいです。若いうちに一度は検査してみることをお勧めします。
大腸内視鏡検査についても教えてください。
胃がんは増えていませんが、大腸がんは増えており、2019年のがん死亡数では男性で3位、女性では1位になりました。ここまで発症者が増えた原因は、一つに食生活の欧米化が考えられています。食べたものは小腸で栄養を吸収してから大腸に移動しますが、大腸は水分を吸収するのが主な役割です。大腸の次が直腸、肛門になりますので、大腸内視鏡検査は肛門から入れます。胃の内視鏡検査より挿入時の苦痛は少ないものの、前日から緩下剤を含んだ2リットルの水分を飲んでいただくのと、当日までの食事制限がちょっと大変かもしれません。大腸の内視鏡検査でしばしば見つかるのはポリープで、放置すると大腸がんにつながるものもあります。大腸がんも自覚症状が少なく発見が遅れがちなので、検診は欠かさず受けていただきたいです。
内科ではほかにどんな訴えが多いのでしょうか。
基本的に内科全般を診ていますが、父の専門が循環器ということもあって、心臓や腎臓、生活習慣病の治療や管理に関するご相談ですね。60歳以上の患者さんでは、10年20年と通っている方も多いです。特に高血圧、高脂血症、糖尿病の患者さんは増えており、食生活の変化や運動不足が影響している方が少なくありません。こうした患者さんに対しては「なるべく薬を増やさず生活を変えましょう」というのが基本的な方針なのですが、症状がない方は自覚に乏しくて、生活習慣を変えるのがなかなか難しいです。
患者との信頼関係あってこそ無理なく検査を勧められる
印象に残っているご経験を教えてください。
鳥取大学医学部附属病院で勤務していた頃、膵臓がんについて学んでいた時期がありました。膵臓がんは近年増えている病気の一つで、発見が難しく、気づいた時には手の施しようがない場合が少なくありません。大学病院ですから、膵臓がんでも難しい状態に進んでしまった患者さんが集まってきます。がんは年齢の高い患者さんが多いものですが、大学病院勤務時代は子育て中のお母さんなど若い患者さんも受け持っていました。膵臓がんは進行すると救命できる可能性が低い病気です。担当した患者さんにも、亡くなられた方が何人もいました。患者さんの苦しみ、ご家族の悲しみにふれるたび、なんとしても早く病気を見つけないといけないと考え、検査の大切さを多くの方に伝えなくてはと思うようになりました。
診療の際にはどんなことを心がけていますか?
患者さんに対しては話しやすい雰囲気になるよう、リラックスして雑談も含めてお話を伺えるように心がけています。雑談から見えてくることもあって、例えば最近ストレスが強くなる出来事があった、甘いものが好き、お酒が好き、生活時間が不規則といったように、健康に影響する情報がつかめるんですね。また、少しでもおなかの症状の訴えがあれば、その場ですぐに超音波検査をするようにしています。当院のエコー検査では膵臓以外にも肝臓、胆嚢、腎臓、膀胱、大動脈まで診られますし、何か見つかればそれが一番早い発見になりますから。スタッフに対しては介助を優しく、声かけを丁寧にしてほしいと伝えています。それだけでも気持ちが楽になったという患者さんも少なくないはずです。特に内視鏡検査では、一番苦しいところを理解して気を遣うだけで、だいぶ違います。
今後の展望をお聞かせください。
地域の皆さんにとって気軽に相談しやすいクリニックとして、内科全般を幅広く診ていきたいです。大きな病院に行かなくても内視鏡や超音波検査ができて、早期発見・早期治療ができるようにと考えています。特にお酒やタバコの習慣、がんの家族歴などがあれば検診や検査を強くお勧めしたいのですが、無理強いはできません。だからこそ、患者さんから信頼していただけることが大切です。そのために僕自身は医師として専門外の勉強もしていかないといけません。学びを怠らず、新しい情報を逐一取り入れて、患者さんに新しい治療を提供できればと思っています。