危険な睡眠時のいびきや呼吸停止
睡眠時無呼吸症候群は早期治療を
谷尻医院
(神戸市東灘区/御影駅)
最終更新日:2023/05/08


- 保険診療
「睡眠時間は足りているのに、昼間とても眠くなる」「朝起きたときに頭痛がする」「家族からいびきがうるさいと言われる」。そんな悩みの原因は、実は睡眠時無呼吸症候群かもしれない。地域のかかりつけ医として、また内科・呼吸器内科の専門家として、睡眠時無呼吸症候群の診断・治療にも力を入れる「谷尻医院」の谷尻力院長は、日中の眠気はもちろん、高血圧・糖尿病・心筋梗塞・脳卒中・不整脈など命に関わる合併症リスクを回避するため、早期診断・早期治療の重要性を訴える。睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気なのか、症状や放置した際のリスク、同院でできる検査・治療、内科・呼吸器内科にかかるメリットなどについて聞いた。
(取材日2023年4月13日)
目次
睡眠時のいびきや呼吸停止は危険信号。睡眠時無呼吸症候群の早期治療で、事故リスクや合併症の回避をめざす
- Q睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気ですか?
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A
▲睡眠時無呼吸症候群の国内患者は推定500万人ほどいるという
睡眠時無呼吸症候群は眠っているときに呼吸が止まったり弱くなったりする病気で、10秒以上呼吸が止まる無呼吸が、睡眠1時間あたり5回以上認められる場合に疑われます。呼吸が止まるため眠りが浅く、自覚症状はないものの一過性に覚醒し、再び眠りにつき呼吸が止まって覚醒する……を繰り返します。呼吸が止まるのは、舌が喉に落ち込んで空気の通り道をふさぐため。肥満の方に多い病気ですが、もともと上気道が狭い方、顎が小さく舌のサイズとのバランスが悪い方なども詰まりやすいとされます。40~60代の働き盛りに多く、国内患者は約500万人と推定される一方、適切な治療を受けている方は50万人ほどといわれています。
- Q睡眠時無呼吸症候群の代表的な症状について教えてください。
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A
▲わかりやすくデータや資料を患者に渡す
ご自身では寝ているつもりでも、しっかり眠れていないため、日中に強い眠気や疲労感を感じるという方が多いです。眠気や疲労があると集中力が低下するため、仕事の効率が落ちてミスが起こりやすくなったり、居眠り運転など交通事故を引き起こす危険性が高まったりすることにつながります。また夜間の頻尿、起床時の頭痛、口の渇きなどの症状がある方もいらっしゃいますね。一方でこうした自覚症状がなく、日中も眠気を感じないという人もいますが、ご家族から「いびきがうるさい」「呼吸が止まっている」など指摘を受けて初めて気がつき、睡眠時無呼吸症候群ではないかとご相談に来られる方もいらっしゃいます。
- Q放っておくとどうなりますか?
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A
▲放置しておくと、命に関わるリスクもあるという
先ほど申し上げたように業務上のミスや交通事故などのリスクがあるほか、放置することで高血圧や糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、不整脈など、命に関わる可能性のある病気へとつながっていく可能性もあります。眠っている間に呼吸が止まることで、繰り返し覚醒反応が起こり、これにより交感神経が活性化されて血圧上昇や不整脈を引き起こしたり、無呼吸による一過性の低酸素状態により酸化ストレスが亢進され、血管内皮障害や動脈硬化を引き起こしたりします。このように体にさまざまな負担がかかるため、中等症から重症の睡眠時無呼吸症候群の患者さんは、そうでない方に比べて死亡率も高くなるという報告もあります。
- Q貴院ではどのような検査・治療を受けることができますか?
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A
▲CPAP療法で睡眠の質の改善を図る
まずは鼻からの呼吸音を感知するチューブと指から酸素濃度を測る機器を装着し、ご自宅で一晩寝ていただく簡易検査を行います。無呼吸や低呼吸の回数から軽症や中等症だった場合は、連携病院で1泊入院をしていただき、脳波・筋電図・体幹センサーなどを観察するポリソムノグラフィー(PSG)検査で詳細を調べます。睡眠中の無呼吸や低呼吸が1時間あたり、簡易検査で40回以上の重度の方や、入院でのPSG検査で20回以上認めた方はCPAP療法を開始します。CPAP療法は、睡眠中にマスクを装着していただき、鼻から空気を送り込むことで、舌が落ち込むのを防ぐものです。空気の通り道が確保されるため睡眠の質の改善が期待できます。
- Qどの診療科を受診すればいいかわかりません。
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A
▲睡眠時無呼吸症候群は経験豊富な医師に診てもらうことが重要
治療に用いるCPAPは人工呼吸器の一種です。呼吸器内科医師はこうした機器の操作にも慣れており、睡眠時無呼吸症候群の治療実績が豊富な医師がたくさんいると考えられます。また高血圧や糖尿病、心筋梗塞、不整脈などのリスクから、これらの発見・治療に強みを持つ内科の受診もメリットがありますね。かかりつけ医なら、さまざまな病気を診ている中で例えば高血圧治療の成果が思わしくないなど別の病気がきっかけで気がついたり、ご家族からの相談がヒントになったりすることも。このほか鼻詰まりや扁桃腺の腫れが原因なら耳鼻科、軽症の方は下顎を動かして舌の位置を調整するためのマウスピースを作製する歯科で治療するケースもあります。