大津 和弥 院長の独自取材記事
大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック
(高槻市/摂津富田駅)
最終更新日:2024/06/10
阪急京都本線の高槻市駅から車で10分ほどの場所にある「大津耳鼻咽喉科・ボイスクリニック」は2024年4月に新築開業した。院長を務めるのは大学病院や国立がんセンターなどで頭頸部がん手術を中心に研鑽を積み、のちに「音声」に関する診療・手術を専門に多くの人の診療に携わってきた大津和弥先生だ。自身の大病経験から患者目線に立った診療をモットーとする大津院長は、一般的な耳鼻咽喉科診療から、がんや音声などまで幅広く診療を行っている。頭頸部がんや甲状腺腫瘍・がんなどに関しては、紹介先の病院で執刀医頸して患者の手術を行うことも。どんなことも丁寧に、わかりやすい言葉をつむいで解説してくれる誠実な人柄の大津先生に、診療の特色などを聞いた。
(取材日2024年5月29日)
頭頸部外科でのがん診療から「音声」の専門家へ
先生が医師をめざした理由、また専門に耳鼻咽喉・頭頸部外科を選択した理由も教えてください。
父が同じく耳鼻咽喉科医師ではありますが、実はその影響を受けたわけではありません。小学校6年生の頃、野球の試合を応援しに来てくれた祖父が、悪天候だったがゆえに体調を崩し、それが原因で亡くなったんです。そのような経験から、自分も医療に携わりたいと考えたのが医師をめざした理由でした。三重大学医学部進学後、外科系志望だった私が進んだのが頭頸部外科分野。この領域の手術は10時間かかるなどハードなケースが多く、体育会系の自分にとってやりがいを感じるものでした。現在、大学では耳鼻咽喉・頭頸部外科と表されることが多いものの、当時の私は耳・鼻の診療はほとんどしておらず、国立がんセンターでの研修を経て三重大学附属病院で8年ほど頭頸部がんの治療を行ってきました。
なぜ開業に至ったのでしょうか。
経験を積む中で、食道がんや甲状腺がん、肺がんなど、がんが原因で声帯を動かす神経に障害が出て声が出なくなってしまう方がいらっしゃいました。しかし、三重県には「音声」に関する手術をしている医師がほとんどいなかったため、その道の名医である京都大学名誉教授の一色信彦先生に手術を教わり、三重県で診療を始めるに至ったんです。その後、一色先生の技術を継承している先生からお声がけいただき、大阪府寝屋川市の小松病院に移って音声の手術経験を積み、その後勤務した市立ひらかた病院では音声の専門の外来を立ち上げ、センター長にも就任しました。そんななか起こったのが新型ウイルス感染症の流行です。耳鼻咽喉科受診が敬遠され、父が運営する医院の存続が危ぶまれる事態になりました。そこで私が音声に悩む患者さんも含めて診れるよう、また手術が必要な方には私が主治医として病院で執刀するという形でやっていこうと開業を決意したんです。
貴院の特色を教えてください。
小さなお子さんからご高齢の方まで、一般的な耳鼻咽喉科領域の症状の診療を父と2診制で行っています。新規の患者さんは私が、古くからご来院いただいている患者さんは父が担当することが多いですね。そして私が「がん」と「音声」を専門としてきた経験を生かし、がんの早期発見と然るべき医療機関へのご紹介、音声に関する診断と治療、ご紹介医療機関での手術執刀を行っています。また手術後のアフターフォロー、言語聴覚士によるリハビリも提供しているのも大きな特徴といえるでしょう。また補聴器の外来にも力を入れています。なお、父が運営していた旧医院の隣に新たにクリニックビルを新築し、2階には実妹が院長を務める眼科が入っています。耳鼻咽喉・頭頸部と眼科が対象とする範囲は近い距離にあるので、頭頸部のCT撮影など検査・診療面で協力することもあります。
希望により手術執刀も可能。補聴器の外来にも注力
がんの検査について教えてください。また手術が必要な場合はどうなりますか。
喉頭がんや咽頭がんはファイバースコープを用いて検査・診断を行うほか、甲状腺がんの場合はエコーで検査し、必要に応じて細い針で細胞を取って診断をつける細胞診にも対応しています。当院ではがんの手術はできませんので、必要があれば大学病院など適切な医療機関にご紹介しますが、患者さんのご希望があればまだ非常勤医師として籍を置いている市立ひらかた病院にて私が手術に立ち会うことも。がん手術は技術力のある医師がおりますので基本的にはお任せしますが、治療に対する「知恵」は執刀医と私の2人分あるのは大きなメリット。協力し合って手術を行い、術後のアフターフォローを当院で行うことも可能です。
検査から診断、手術、術後のフォロー、言語聴覚士によるリハビリまでお任せできるのですね
当院では耳鼻咽喉科用CT、ファイバースコープ、エコー、広い聴覚検査室などを有しており、クリニックの中では診断レベルはかなり高いと自負しています。当院の最大の特長は、「クリニックと病院のいいところ」を融合させている点。土曜診療など患者さんにとって通いやすいよう工夫もしています。今後も普通のクリニックさんではできないこと、逆に病院ではできないことを集めた診療を提供していきたいですね。言語聴覚士に関しては、補聴器に関する検査やリハビリ、機器調整のほか、嚥下機能が低下している方のリハビリなども行っています。
貴院の補聴器の外来にはどのような特徴がありますか。
当院では、言語聴覚士が補聴器販売企業とタイアップして、フィッティングから聴力検査、機器調整、リハビリ、補聴器のご提案まで一貫して対応しているのが特徴です。補聴器の適合検査が適切に実施できる2メートル四方の聴力検査室を設けるなど、設備面も充実しています。実は診断や検査を受けず、数十万円と高価な製品や、通販などで「集音器」を購入してしまい、適正に使用できず「補聴器は聞こえないので無駄だ」と判断してしまう人も。補聴器は高価であればいいのではなくご自身に合ったものを調整して装着する必要があり、また着け続けて音に慣れていただく必要があります。当院ではまずは最大1ヵ月ほど補聴器を試していただきながら、検査やリハビリを行い、「使い続けられる」と患者さんが判断した上で補聴器をご提案させていただく流れになります。
自身も大病を経験。患者の目線に立てる医師に
診療の際に心がけていることはありますか。
患者さんにとってわかりやすい説明を心がけています。医療用語はかみ砕いて説明しても難しい部分がありますが、できるだけ画像など目で見て理解できるものを用いて丁寧に解説するよう努めています。ただしファイバースコープなど画像で見られる検査は費用もかかってしまいますので、検査の必要性をよく考えた上で、検査してもいいかを必ず患者さんに確認してから実施しています。実は開業2ヵ月前、自己免疫性脳炎という非常に珍しい病気にかかって意識を失ったんです。1週間くらいたって目覚めたときには10キログラム以上痩せ、歩くこともままならいほど衰弱していたという経験をしました。なんとか開院には間に合ったのですが、このような大病の経験をしたことで、いかに患者さんが不安か、困っているかがよくわかり、その方の目線に立てるようになったと思います。
今後の展望はありますか。
2024年4月に開院してからまだ日帰り手術は行っていませんが、今後は例えばポリープなど当院の外来でできる症例に対しては手術を行いたいと考えています。また痙攣性発声障害という病気にはボトックス注射治療がありますが、近隣のクリニックではその治療を行っているところがほとんどないため、適応のある方にはそうした治療もご提案できるようにしていきたいですね。もちろん一般の耳鼻科診療まで幅広く行い、例えば舌下免疫療法などアレルギーに対する治療にも力を注いでいきたいですね。
今後めざすクリニック像を教えてください。また地域の方々にもメッセージをお願いします。
当院の内装でこだわったのは温かい木目調と要所に置いた緑で、地域の方が気軽に来られる「公園」のような場にできればいいなと思っています。そのなかで専門性を高めて「ここでしかできない治療」を提供し、患者さんが「大津さんとこで診てもらっている」と周囲に自慢げに話せるようなクリニックをめざしたいですね。適切な治療を提供し患者さんにご満足いただけるよう努めるとともに、なるべく具体的にケア方法などもお伝えするよう心がけています。鼻詰まりや鼻水、咳、熱、喉の痛み、聞こえ、発声などお困りの症状があればお気軽にお越しください。