久野 貴司 院長、石川 元春 先生の独自取材記事
つかさクリニック堺東
(堺市堺区/堺東駅)
最終更新日:2025/09/22
堺東駅のランドマークである堺市役所、その南側に立つビル内にある「つかさクリニック堺東」。体外受精の黎明期から不妊治療に取り組んできた石川元春先生が開院した「いしかわクリニック」を久野貴司先生が継承し、名前を変えて再スタートしたクリニックだ。タイミング法から顕微授精、さらには先進医療まで幅広い治療を提供するが、患者の負担ができるだけ少ない治療を尊重し「ちょうどいい不妊治療」の提供に努めている。「不妊治療は正解がないもの。ゴールのかたちは夫婦の数だけある。そのゴールを一緒に探していきたい」と語る久野院長と、現在同院の顧問を務める石川先生に、クリニックの治療内容や不妊治療に対する考え方を聞いた。
(取材日2025年7月30日)
生命の始まりの神秘性に惹かれ不妊治療の道へ
まずは継承までの経緯を聞かせてください。

【久野院長】私は東京で生まれ育ち、大学は和歌山県立医科大学に進学しました。当院の前身である「いしかわクリニック」を初めて訪れたのは、医学部6年生の時。不妊治療に関心があり、実際の現場を見たいと思い、知人の紹介もあって見学をさせていただいたのです。この経験は、私の人生にとって非常に大きな意味を持つもので、この時を境に不妊治療に携わりたいという思いがさらに強まりました。そこで「場所にとらわれず、自分が成長できる環境で研鑽を積みたい」と考えるようになり、石川先生が在籍し、体外受精の実現に積極的に取り組んでいた東北大学を研修先に志望。幸いにも受け入れていただき、東北大学産婦人科で多くの学びを得ました。また、大学院では生殖医学に関する研究活動にも取り組みました。その後、再び臨床現場に戻ってきたところに、石川先生からクリニック継承のお話をいただき、「こんなにうれしいことはない」と継承を決意しました。
なぜ産婦人科、中でも不妊治療をご専門にされたのですか?
【久野院長】幼い頃からなぜ生命は生まれてきたのだろう、どのようにして生物が進化し人になったのだろう、ということに興味がありました。博物館で化石を見ることや、学校の生物の授業がとても楽しかった記憶があります。ですから、「誰かの病気を治したい」という気持ちよりも、「生命の始まりの神秘性」みたいなものに惹かれたのが医師という仕事を選択したきっかけです。そんな私ですから、医師になってからは、ほとんど迷わず産婦人科を選択しました。中でも不妊治療はまさに「生命の始まり」に携わる分野。さらに石川先生との出会いも重なり、そのプロフェッショナルな仕事ぶりに憧れ、「自分が進むべき道はこれだ」と選びました。
治療方針について教えてください。

【久野院長】当院のコンセプトは「ちょうどいい不妊治療」です。これは「力を抜く」という意味ではなく、ご夫婦の置かれた環境や年齢、希望に応じて最小限の肉体的、経済的、時間的な負担でのゴールをめざすということ。むやみに検査や治療を進めるのではなく、原則はタイミング法から人工授精、その次に体外受精へとステップアップしていきます。不妊治療においては、時に保険診療外のさまざまな検査や治療が行われることもありますが、当院では初診で問診や基本的な検査で不妊の原因を探り、患者さんの希望をお聞きしながらどのように治療していくかを一緒に考えていきます。最初から高額な検査や不必要な治療をお勧めすることはありません。
世界水準の設備環境の整備に努め、先進医療も提供
先進医療の不妊治療にも取り組んでいらっしゃいますね。

【久野院長】現在は初婚年齢が上がり、妊娠を考える年齢も以前に比べるとぐっと上がっています。多様な生き方が選択できるようになったことは非常に素晴らしいことですが、生命の営みである妊娠・出産となると、年齢とともに難しくなるという現実があります。そこで当院では、「子を授かる」という切実な夢を最後までサポートするべく、一般不妊治療、体外受精・顕微授精など生殖補助医療だけでなく、現在国が先進医療として定める子宮内膜刺激術、子宮内膜擦過術、ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術、フローラ検査、ERA・EMMA/ALICE検査、二段階胚移植術、強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選別術、タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養、膜構造を用いた生理学的精子選択術、ネオセルフ抗体検査、以上11項目を提供しています。
設備や医療品質にもこだわりが伺えます。
【久野院長】当院は、旧クリニックを受診されていた方にも安心していただけるよう、診療内容や豊富なノウハウを継承し、設備もそのまま引き継いでいます。また凍結している胚・精子についても、変わらず大切に保管継続しておりますのでご安心ください。スタッフも以前と変わらず勤務していますから、受付・看護師・培養士いずれも経験豊富なメンバーがそろっていますよ。また、先進医療は厚生労働省が定めた施設基準を満たした施設でのみ行うことができる治療です。より良い治療を提供するために常に新しい情報を取り入れ、世界最高水準をめざし、設備環境の整備に努めています。
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?

【久野院長】否定的な言葉を使わず、できるだけポジティブな言葉を選ぶようにしています。最近では「妊活」という言葉が一般的になり、不妊治療に対するイメージも大きく変わりつつあります。芸能人や著名人が治療を告白してくれたことも、世論が変わっていく大きな転機になりました。だからといって、治療中のストレスがすべてなくなったわけではありません。不妊治療は妊娠を確約するものではないので、いつ終わるかわからないという不安も常につきまといます。さまざまな気持ちを抱えながら、時には迷いながら治療に挑戦している方も多いので、私と話すことで、少しでも前向きな気持ちになってもらえたらと考えています。
不妊治療というプロセスを経て、それぞれのかたちを
不妊治療を開始するにあたり知っておいてほしいことは?

【久野院長】不妊治療は、絶対的な正解がない治療です。もちろん、受診されるご夫婦がめざすのは「妊娠すること」です。しかし、残念ながら不妊治療=妊娠というわけではありません。また、すぐに結果が出るというものでもないので、数回で卒業になる方もいれば、3〜4年かかる方もいます。そして、残念ながら妊娠に至らないまま卒業される方もいらっしゃいます。そんなふうに治療の期間もゴールもそれぞれに違うのです。だからこそ、私は不妊治療というプロセスを経て、ご夫婦でこの先の人生について、自分の在り方や家族のかたちについて考える時間にしてほしいと思います。そうすれば、どのような結果であってもきっと笑顔で卒業できるのではないでしょうか?
不妊治療は夫婦の人生の一つのプロセスということですね。
【久野院長】いくら保険適応になったとしても、不妊治療をするという選択はやはり軽いものではないと思います。採卵や検査のためにお仕事を休まなくてはいけない日が出てくるでしょうし、それがいつまで続くかわからない。場合によってはお仕事やキャリアに影響が出るかもしれません。不妊原因の4~5割は男性にありますから、男性も「関係ない」というわけにはいきません。検査や治療にも参加が必要ですし、喫煙習慣がある場合には禁煙したほうがいいですね。男女ともにダイエットのしすぎも良くありません。このように、不妊治療を始めたらこれまでとは生活の形が変わってしまいます。だからこそ、夫婦がともに手を取り、同じ方向を向いて進んでいけるよう、たくさんコミュニケーションを取ってほしいなと思います。
読者へメッセージをお願いします。

【石川先生】私がこの場所に当院の前身である「いしかわクリニック」を開院したのは30年前のこと。一人でも多くのご夫婦が子宝に恵まれ、この国の未来のために少しでもお役に立てればと診療を続けてきました。少子化が進む今、不妊治療は患者さんとともに未来をつくる治療です。久野院長にクリニックを継承できたことをうれしく思いホッとしています。これからも患者さんが子宝に恵まれ、喜んでいただけるように皆で邁進したいと思います。
【久野院長】どんなに医療が発達しても、妊娠や出産はやはり神秘的なものです。しかし、妊娠しやすい年齢、妊娠が可能な年齢には限界があります。私たちにできることはあくまでも子を授かるための心身のサポート。私は、皆さんの迷いや不安に丁寧に寄り添いながら、一緒に考えていける医師でありたいと思っています。わからないこと、気になることがございましたら、ぜひご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とはタイムラプス撮影法による受精卵・胚培養/3万円(タイムラプス加算費dish1枚/1万円)、子宮内膜刺激術(SEET)/1万円、子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ)/1万円、ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術(PICSI)/2万円、フローラ検査/5万円、EMMA+ALICE/5万円、TRIO(ERA+EMMA+ALICE)/14万円、二段階胚移植術/10万円(新鮮胚)12万円(凍結胚)、強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選別術(IMSI)/2万円、ERA検査/12万円、膜構造を用いた生理学的精子選択術/3万3000円、ネオセルフ抗体検査/3万5000円

