倉知 大 院長の独自取材記事
倉知内科
(大阪市西成区/萩ノ茶屋駅)
最終更新日:2025/05/28

花園町駅より東へ徒歩5分、1969年開業の「倉知内科」。2018年1月に2代目として父から同院を継承した倉知大院長は、内科診療の中でも喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の診療に注力している。「喘息治療は、普通の人と同じような生活が送れるようになるまで継続することが重要」と語る院長。呼吸器疾患の改善において重要な吸入治療では、患者の状況に応じて適切な吸入器を選択。確実に薬が吸入できるよう必要に応じて患者に再来院を促し、器具の使い方を説明する丁寧な診療を行っている。「咳が長引いて治らない場合は当院へ」と呼びかけている倉知院長に、呼吸器疾患の診断や治療について、そして通常の診療だけでなく訪問診療まで幅広く意欲的に行う同院の取り組みについて話を聞いた。
(取材日2018年2月21日)
呼吸器疾患治療に注力してきた内科医院
医院の特徴や、どのような患者さんが来院するかを教えてください。

父が大学から紹介を受けて、この近くにあった病院に勤務していたのですが、そこが閉鎖となり、この地に開業しました。当院は内科全般を診療していますが、中でも高血圧症や脂質異常症の方を診ることが多いですね。糖尿病の治療はインスリン療法も導入しております。私自身は呼吸器疾患を専門としており、喘息やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の患者さんの治療に力を入れてきました。当院での診療は20年ほど前から、父と交代で行っており、2018年1月に医院を引き継いでいます。患者さんは高齢の男性が多く、全体では、60歳以上が8割、それ未満が2割ぐらいで、女性は約3割です。ホームページを作成してからは若い方が増えています。
患者さんと接する中で気をつけていることは何でしょうか?
コミュニケーションをきちんと取れるよう、自分が持っている知識を全部お伝えするぐらいの意気込みで説明をするようにしています。高血圧症や喘息などの患者さんは、症状が少し良くなると治療に来なくなってしまう場合もあります。そのため、高血圧症なら脳出血や脳梗塞、心臓病等のリスク、喘息であれば症状がなくなってもきちんと治療を続ける必要があると図を使いながら病態を説明します。診療時間中に時間がなければ、診療時間終了後に時間を取ってとことん説明する場合もあります。
喘息は、どのように診断するのでしょうか?

問診で大まかな診断をしています。夜間や早朝に、咳が出たり呼吸のたびゼーゼーやヒューヒューと音が鳴ったりする場合は、ほぼ喘息を考えます。それから他の病気がないかを診るためにエックス線写真を撮ります。そこで異常がなく、喘息であるとほぼ確定できたら、診断の精度を高めるため、呼気中の一酸化窒素濃度の測定や肺機能検査もしています。もし来院時に咳の症状がなく、検査をしても数値から喘息だと判断できない場合は、問診で話を聞き、それによって「診断的治療」を行います。これは、喘息であると想定して治療を行うことで原因を明らかにしていくもので、症状に変化がみられれば喘息、変化がなければ別の病気を合併している可能性があるということになります。
喘息やCOPDでは薬の吸入を確実に行うことが大事
そもそも、喘息の原因は何なのでしょうか? また、治るものですか?

喘息は、体質やその他のいろいろな因子が絡み合って発症します。生まれた時から素因を持っていて、何らかの影響により子どものうちから症状が出る人がいる一方、大人になって急に発症する人もいます。喘息体質そのものは治りにくく、発症したら、例えばハウスダストを吸ったときだけ症状が起こるならこまめに掃除をするなど、生活環境を改善し、薬も使いながら咳が出ないようにコントロールしていきます。風邪をひかないようにすることや、タバコを吸っている人は禁煙することも大切です。なお、風邪が長引くと喘息かなと思ったりしますが、必ずしもそうとは限りません。鼻炎や蓄膿症が原因で咳が出ることもあるからです。ですから、まず検査をして喘息かどうかを診断することが大事ですね。喘息は鼻炎や蓄膿症と合併することがよくあるので、当院で判断が難しい場合は耳鼻咽喉科を紹介することもあります。
喘息治療の際に気をつけていることを教えてください。
喘息の治療では吸入療法が欠かせません。吸入器にはさまざまなタイプがありますが、当院では患者さんの年齢や肺機能などから総合的に判断して、その方にとって適切な物を選んでいます。吸入器を使うのが初めての患者さんの場合、正しく器具を使って確実に薬を吸入できるよう、看護師から吸入指導を受けてもらいます。次回受診時に再指導を行います。喘息治療では、症状がなくなるようにするのがゴールと考えていますが、「俺はタバコを吸っているからこれくらいでいいや」というように途中で治療をやめてしまう人が多いんです。この病気は窒息して死に至ることもあります。ですから、「本当に症状が何も出ないのが治療のゴール」ということを啓発するのが医師である私たちの役目だと思っています。
吸入治療について教えてください。

吸入器によって期待できる効能はほぼ同じでも、薬の吸い込みやすさや強さ、使い方の違いがあります。喘息は、最初に強めの薬を使い、その後薬の量を減らしていきます。COPDはまだ完治する疾患ではないのですが、治療薬は基本的には喘息と同様のものを使用します。気管を広げて呼吸困難や咳の症状を改善する目的の吸入薬を用います。症状も喘息と区別しにくいこともありますが、病態はまったく違い、主な原因は喫煙です。肺機能が衰え、悪化すれば酸素吸入が必要となり、肺が破壊されてしまう病気です。COPDは喘息と合併することもよくありますが、その場合、お任せいただければ当院できちんと治療が可能です。諦めずに治療を続けていくよう声かけをしています。
ニーズが高まる訪問診療への体制づくりが課題
高血圧症や糖尿病の患者さんも多いそうですが、どのようなアドバイスをされていますか?

食生活の改善と運動、そして薬をきっちり用いることが大切だと話しています。けれど、患者さんによっては減塩や飲酒を控えてもらうことが難しい場合もあります。また「タバコをやめるように」などと言いすぎると患者さんが診察を受けづらくなるので、無理強いをせず、患者さんの話を聞きながら、その方に合った方法で治療を進めていくようにしています。運動については、健康な人なら1日8000~1万歩歩くのが理想の運動量ですが、寝たきりに近い人などには不可能なので、実生活から5~10%ずつぐらい運動量を増やすイメージで、「昼間は起きていましょう」「ちょっとその辺を1周してみましょう」と声かけをしています。
訪問診療もしているそうですね。
毎週月水金、午前と午後の診察の合間に行っています。体制を整えながら、少しずつ患者さんの人数を増やしていきたいと考えています。訪問看護事業所から患者さんをご紹介いただくこともあります。現在は看護師さんとともに、自転車で患者さんのもとへ出向くことが多いです。私1人だけでは対応が困難な場合は、近隣の医療機関との連携により対応しています。患者さんの診療記録を共有し、協力しながら訪問診療ができるようなシステムが整えばスムーズになるのではと思っています。
今後ますますお忙しくなりそうですが、プライベートはどのように過ごされていますか?

ゴルフとギター演奏をしています。何でもやり始めると凝るタイプなんですよ。ゴルフは競技大会にも出ますし、ギターは、大学時代に軽音楽部でバンドを結成していました。医師になってから活動を中断していましたが、一昨年ぐらいから昔のバンド仲間と30年ぶりに一緒に活動を始めています。昨年はライブも行い、当院のスタッフも聴きに来てくれました。今年の夏頃には、またライブをしたいですね。
読者や地域の人へお伝えしたいことをお願いします。
専門としている喘息やCOPDの患者さんをさらに多く診療していきたいと思います。もちろん今までどおり一般内科治療も継続していきます。呼吸器疾患の治療の根幹は、吸入療法です。治療をしているのに咳が治らないという場合は、吸入が正しくできていないかもしれないので、まずは治療を受けている病院で相談してみてください。もちろん当院でも、相談を頂ければ力になります。