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井上 雅樹 院長の独自取材記事

井上内科クリニック

(一宮市/奥町駅)

最終更新日:2019/08/28

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名鉄尾西線奥町駅から、駅を背にして県道148号線を南に、車で約5分の場所にある「井上内科クリニック」。訪問在宅診療、通所型・入所型高齢者施設など一宮市内の医療・介護施設の中核的存在のクリニックだ。院長の井上雅樹先生がこの地に開業したのは1995年。その当初から、在宅医療を手がけていたという。人生最後の生活を過ごすのにふさわしい場所はどこかと考え、在宅医療やデイケア・デイサービス等を充実させてきた井上院長。内科クリニックでありながら19床の入院設備があるのも、在宅で負担が増える家族や患者自身が入院を望む場合を前提にしたものだという。良い医療を提供することで患者が最期まで充実して生きられるよう力を尽くしてきた井上院長に、診療方針やこれからについて話を聞いた。
(取材日2017年12月21日)

熱意ある医師らとともに、患者の願いをかなえる医療を

在宅診療に長く取り組んでこられたそうですが、クリニックには入院施設もあるんですね。

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1982年から病院に勤務してきましたが、名古屋市港区の臨港病院で消化器部長を勤めた後、1996年に開業することになりました。訪問在宅診療は開業当時からやっていますので、20年以上になります。最初は僕一人で訪問をしていたんです。医師が自分しかいなかった時代から、在宅診療の希望があれば午後の外来時間を短くしてでも訪問を優先していました。在宅医療を前提として、その上で入院施設をつくり、現在は19床あります。患者さんがご自宅だけで病気の改善に取り組むには、やはりご家族も大変なんですよ。そこでご家族も患者さん本人も力を蓄えるために、入院施設を整え、デイケアも始めました。終末期の看取りの患者さんや高齢者の方が入院を希望されることも多いのですが、社会復帰の可能な方にはその人に合った形でのデイケアを行っています。

どのような体制で診療されているのでしょうか。

医師は6人で在宅訪問診療の担当医師が僕を入れると4人、外来の担当医師は3人です。在宅診療の先生方は非常に熱意をもって取り組んでくれていて、患者さんとご家族の希望で、患者さんの家に泊まって看取ったこともあります。家庭の中のことですから、医師であってもなかなかできることではないですね。訪問は24時間対応ですが、夜中にいきなりすぐに来てくれと呼び出されることは意外と少ないです。医師とともにチームを組んでいる看護師や介護スタッフが患者さんの状況をよく把握し、適切な対応ができているのではと思います。

在宅診療の流れや患者さんの傾向を教えてください。

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在宅については、他の病院から相談や紹介があってお引き受けすることが多いです。一宮には他にも在宅専門のクリニックがありますが、数としてはそれほど多くはないと思います。当院では、訪問にしても入院にしてもできるだけ患者さん本人のご希望をかなえる方向で進めています。実のところ、ご家族に受け入れる気持ちがあり僕らも往診に行くことができるのに、患者さん本人が緩和ケア病棟に入院をご希望することがあるんです。家族の迷惑になりたくないという患者さんの思いからなんですね。がんの終末期などでは、若い方は家で過ごすことを希望される傾向があり、高齢の方ほど病院がすべて良いと思い込んでいる様子も見られます。一方で、高齢者に多い脳疾患の場合は治療も予後も長くなるので、施設が過ごしやすい生活の場になるのならそれでいいのかなと思っています。

縁の有無にこだわらず、理想の医療ができる場所で開業

クリニックのホームページにある「健康とは尊厳ある人生を送ること」という言葉が印象的です。

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病院というのは、治療がすべてに優先する場所だと思います。しかしその場所は、「人が生活して死んでいく場所として本当にふさわしいのだろうか」と考えるようになったのが、僕自身が在宅医療に取り組み始めたきっかけでした。慢性期の脳疾患などで、病院で閉じ込められるようにして生きていくのは、不幸なんじゃないかと思ったんですね。痛みもなく不都合もなく生活していけるなら、病院でなくても良いのではないか、と。しかし、慢性疾患や終末期は生活が絡んでくるので、医療だけではその人を支え切ることができません。在宅医療を手がけてやってきましたが、ご家族の負担を考えるとどこかに無理が生まれます。そこで当院では、グループで運営している介護施設などで充実した生活の場を提供し、集中的に医療が必要な場合や緩和医療の最終末期などには入院設備を利用する、という仕組みを取っています。

医師を志したきっかけを教えてください。

僕は神奈川県の出身で、秦野市と横浜市に住んでいました。生物が好きだったので、最初に進学したのは東京大学の理科2類、理学部生物化学科でした。ただ、大学を卒業してどこかの企業に勤めるというのは、自分には向いていないのではないかとずっと思っていたんです。それで、1976年年に名古屋大学医学部に再入学し、卒業して医師になりました。父は医師でしたが、僕自身当初は医師になりたいとはあまり思っていなかったんですね。なりたいような気もするけどどちらかといえばなりたくないという感じでした。しかし、医学部に進み直したときには最初から開業をするつもりでいました。

一宮とはどのような縁があったのでしょうか。

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一宮にはもともと縁もゆかりもなく、親戚も友人もいません。どこかで自分のやりたい医療をと考えて、名古屋周辺だけでなく日本国内のいくつかの候補地を検討しましたが、他の候補地はなにか自分とは雰囲気が合わない気がしたんですね。特別な理由はなかったのですが、あえて言えば雰囲気的なものとか居心地でしょうか。開業当初、院内は一般的に病院で用いられる白ではなく、明るい緑の内装にしていました。安らげる感じにしたかったんですが、今はほとんど変えてしまいました。

在宅医療や自宅看取りのため、地域の理解を進めたい

印象に残っているご経験を教えてください。

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記憶に残っている方はたくさんいるのですが、患者さんご自身はもちろん、看取られるご家族との経験が多く残っているように思います。家でここまでしてあげられるとは思っていなかった、良かったと言ってくれることが多いです。特に、終末期のがんなどで親御さんが子どもを看取られるケースでは、できるだけのことをしてあげたいという気持ちが強いでしょうからね。大学病院に入院していたときはひどく苦しんでいたけれど、自宅に帰ってきて緩和医療をするようになってから穏やかになって、家族も十分なことをしてあげることができたというご報告もよく聞きます。

在宅医療の勉強会や講座などで、講師を務めていらっしゃいますね。

医療の専門的なテーマでは、聴講者も医師や看護師が多いですね。特に看護師は在宅医療では中心的な役割を果たす立場ですから、さまざまなことを学んでもらわないといけません。医師や看護師という医療者を中心に、ケアマネジャーや介護スタッフ、ボランティアなどが地域で支えることが必要です。もっと広くいえば、患者さんのご近所の方、牛乳配達や新聞配達の人など、患者さんと地域社会がうまく絡むのも大切です。これからの僕に与えられた仕事は、医師として患者さんを診ることはもちろん、レクチャーなどを通じてできるだけ多くの人たちに「寄り添うことの意味」を提示することと思っています。また、当院やグループ施設での医療や介護においては、スタッフが患者さんと家族を支えていくための仕組みをつくっていくことも僕の役割と考えています。

在宅医療を考えている方やご家族に、メッセージをお願いします。

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在宅医療は在宅看取りと思い込んでいる方もいますが、そうではありません。ただ看取るだけではなく、医療を提供することで最大限に生きられるようにしてあげたい、そのために適した薬の選択をするということです。これ以上やったら苦しいよねという手前まで、力を尽くしたいと思っています。近年は自宅での緩和医療や在宅診療が見直されていますし、きちんと話せば理解してくれる先生も多いので、ご自身やご家族の希望をどんどん出してみていただきたいですね。相談の相手はケアマネジャーでも、かかりつけの医師でも、当院に通える範囲の方なら来院されてもかまいません。まずは相談をして「これから行く道」を見つけていただければと思います。

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