止まらない咳は要注意
専門の医師に相談し適切な治療を受けよう
たけだクリニック
(豊川市/豊川駅)
最終更新日:2025/08/13


- 保険診療
咳や痰が何週間も続き、薬を飲んでも良くならない。医療機関を受診しても「異常なし」と言われ、何の病気かもはっきりしないまま、不安を抱えながら日々を過ごす人は少なくない。夜間に咳込んで眠れなかったり、仕事や学校に集中できなかったりと、日常生活への影響も大きい。さらに、周囲の視線や「まだ風邪が治らないの?」といった反応が精神的な負担になることもあるという。「咳や痰が続いている場合でも、焦らずに原因を一つずつ確認していけば、その方に合った治療につながります」と話すのは、「たけだクリニック」の武田正志院長。問診と検査を通じて原因を丁寧に見極め、その人の症状や背景に応じた診療を行っている。今回は、呼吸器を専門とする武田院長に、長引く咳と痰にどう向き合うべきか、詳しく話を聞いた。
(取材日2025年7月10日)
目次
長引く咳や痰は、風邪ではないケースも。患者の訴えを丁寧にくみ取り、一人ひとりに合わせた診療を重視
- Q咳と痰が長引く場合、どんな病気の可能性がありますか?
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A
▲楽な呼吸をする「呼吸抵抗検査」と強く息を吐く「呼吸機能検査」
咳や痰が3週間以上続くときは、いくつかの病気が考えられます。乾いた咳の原因は、咳喘息、アトピー咳嗽(がいそう)、逆流性食道炎、感染後咳嗽などがよくあります。これらの病気の治療を行っても改善しにくく、咳が止まらない場合は、咳過敏症症候群に該当することがあります。痰を伴う咳が続く場合は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支炎、気管支拡張症、慢性副鼻腔炎などが疑われます。風邪が長引いているように見えても、3週間以上続く場合、治療が必要な病気を患っている可能性があります。日常生活に支障が出る、夜間に咳で眠れないといった症状があれば、早めの受診をお勧めします。
- Q診断において大切なポイントは何でしょうか?
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A
▲複数のウイルスや細菌を同時に検出できる「PCR検査」
まず大切なのは、丁寧な問診です。咳がいつから始まったのか、どんなときに出るのか、痰の有無や咳の強さなど、症状の特徴を詳しく伺います。例えば、咳が強くて吐きそうになる、痰が絶えず絡むなど、患者さんの感じ方を細かく確認することで、診断の方向性が見えてくることも多いのです。必要に応じて、咳の重症度を主観的に評価するためのスケールを使うこともあります。また、COPDや喘息の可能性がある場合には、それぞれの質問票を活用して状態をより詳しく把握します。患者さんの年齢やこれまでの病歴などに応じて、問診票の内容も柔軟に変えています。症状の聞き取りと情報整理を丁寧に行うことが、適切な診断につなげるポイントです。
- Q喘息について詳しく教えてください。
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A
▲好酸球性の気道炎症の程度を計る「呼気NO検査」
喘息は、気道に慢性的な炎症が起こり、咳や痰、息苦しさなどの症状が現れる病気です。特に夜間や明け方に咳が強くなる傾向があり、これが一つの特徴でもあります。原因は一つではなく、アレルギー、風邪のウイルス、ハウスダスト、タバコの煙、気温差やストレスなどさまざまです。気管支をトンネルに例えると、その内側の壁が炎症で荒れて狭くなり、咳が出やすくなるイメージです。診療では症状の出方や時間帯、期間を丁寧に問診し、逆流性食道炎や感染症、喫煙、肥満など他の原因も慎重に見極めます。その上で、症状の現れ方や生活背景に合わせて、治療法を柔軟に組み立てます。その方にとって無理のない方法を一緒に考えることが大切です。
- Qどのような検査・治療を行うのですか?
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A
▲少量の血液を採取し、約30分で結果がわかる「アレルギー検査」
まず症状の経過や問診内容をもとに、必要な検査を組み合わせていきます。代表的な検査には、呼吸機能を調べるスパイロメトリーや呼吸抵抗検査、呼気中の一酸化窒素(NO)濃度の測定、血液検査による好酸球数やアレルギー検査、レントゲン検査などがあります。治療は、患者さんの症状の出方や背景に合わせて進めていきます。例えば、喘息やCOPDの場合、吸入薬や飲み薬を服用することで改善を目指し、喫煙や肥満が関係していれば、生活習慣の見直しや支援も行います。症状の重さや日常生活への影響、夜間の咳の有無なども踏まえ、一人ひとりに合った治療を組み立てていきます。
- Qもし途中で治療をやめてしまった場合、どんな弊害がありますか?
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A
▲新型コロナウイルス感染症かどうかを判定する「核酸増幅検査」
喘息は自然に治る病気ではなく、自己判断で治療をやめると再発を繰り返し、気道がさらに傷んでしまう恐れがあります。私はよく、気道を「壊れかけたトンネル」に例えて説明しますが、症状が落ち着いているのは、たまたま壊れていないだけの状態。風邪などの刺激で一気に悪化することもあります。きちんと治療を続けることで、長期的に症状が現れない臨床的寛解をめざすことができ、良好な状態を保つことも望めます。当院では、吸入薬の正しい使い方を看護師が丁寧に指導し、解説用の動画も活用しています。症状が落ち着いていても、定期的に通院いただくことで、その方に合ったより良い治療につなげていきます。