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家族と社会が支える認知症治療
物忘れなど些細な気づきでも相談を

くまい医院

(春日井市/勝川駅)

最終更新日:2021/10/12

くまい医院 家族と社会が支える認知症治療 物忘れなど些細な気づきでも相談を くまい医院 家族と社会が支える認知症治療 物忘れなど些細な気づきでも相談を
  • 保険診療

食事を取ったか忘れてしまう、服を着たり脱いだりできなくなる、幻視や幻聴に悩まされる、気づいたら町を徘徊していて、自宅までの道がわからない。「認知症」という病気を耳にして、思い浮かべる症状といえば、このような「できていたことができなくなってしまう」といったものが多いことだろう。進行すると、だんだんと「その人らしさ」が失われていき、本人のみならず、ともに生活する家族など周囲にも不安が波及していく。「もしも自分が、家族が発症してしまったら」と、心配に思う人も少なくないだろう。今回の取材は、長年にわたり春日井市において認知症患者とその家族を支えている「くまい医院」の隈井知之院長による、認知症という病気の詳しい解説を通して、認知症との付き合い方・向き合い方を学んでいく。

(取材日2019年5月9日)

ともに生活する人だからこそ感じ取れる小さな異変。些細なことでも、引っかかりを感じたらまずは相談を

Q認知症とは、どういった病気なのでしょうか?
A
くまい医院 認知症の治療に力を入れている

▲認知症の治療に力を入れている

脳の変化により、それまで備わっていた「認知機能」が低下する病気です。具体的にいえば、「料理を作りたい」と思っても材料を買いに行けない、レシピを思い出せない、途中で手順がわからなくなってしまうなどのように、以前なら当たり前にできていた「筋道を立てる」「新しいことを覚える」といったことができなくなってしまうのです。他にも、来た道を戻れなくなる、自分の居場所がわからない、幻視や幻聴、うつ、徘徊といったBPSDとも呼ばれる周辺症状も現れます。これらの症状は多くの場合本人より先に、一緒に生活するご家族が気づくため、家族に促されて受診するケースも少なくありません。

Q認知症発症の原因は何ですか?
A
くまい医院 認知症について話す院長

▲認知症について話す院長

一般的に知られるアルツハイマー型認知症をはじめ、幻視や手足の震えなどの症状が現れるレビー小体型認知症、人格変化や行動異常が見られる前頭側頭型認知症など、一口に「認知症」といってもさまざまですが、基本的な原因として挙げられるのが、老化による代謝異常です。代謝異常から細胞の死滅と異常物質の蓄積による機能障害や脳の萎縮が起こり、認知機能が低下していくのです。加えて遺伝性のリスクも指摘されており、睡眠不足や飲酒の習慣などによるストレスも認知症のリスクにつながるといわれています。現段階では完全に治癒する方法はなく、治療では進行を緩やかにさせていくことに徹します。

Qどのような症状が見られたら、医師に相談すべきでしょうか?
A
くまい医院 さまざまな観点から判断していく

▲さまざまな観点から判断していく

先に挙げたような症状や、以前なら問題なくできていたことができなくなる様子が見受けられたら、本人が異変を感じていなくても、まずは医師に相談しましょう。近年の研究では、日常動作は正常に行えるものの、記憶力などが低下した状態にある、MCIといわれる軽度認知障害の段階から薬物療法を始めるのが有益ともいわれています。早期に見つけ、治療を開始するためにも、一緒に生活されているご家族が感じた異変をそのままにしないことが、とても重要なんです。また、認知症であることがわかれば、対処法もおのずと見えてきて、患者さんが生活するご家庭や地域などからも、良い刺激を受けられるようになるといわれています。

Q診断・治療ではどのようなことを行うのですか?
A
くまい医院 家族のケアも非常に大切

▲家族のケアも非常に大切

認知機能の低下は、精神疾患や甲状腺ホルモンの異常、栄養素の過剰・欠乏、薬の副作用などからも起こります。そのため診断では、各種テストやMRIによる画像診断、脳血流を調べるスペクト検査などを行い、脳の機能障害や委縮以外に挙げられる原因を除外しながら、どの種類の認知症に当てはまるかを見極めていきます。併せて、ご家族に対しても患者さんのご様子などを確認しています。そして認知症と診断がついたら、薬物療法によって治療を進めていきます。また当院では治療に際して、必要に応じて患者さんのご自宅を訪問することもあります。生活の場を実際に目にすることで、患者さんやご家族を取り巻く状況を詳しく把握できますからね。

Q家族が患者に寄り添う上で心がけておくべきことは何ですか?
A
くまい医院 周りのサポートも必要と話す先生

▲周りのサポートも必要と話す先生

ご本人をそのまま受け入れること、ですね。皆さん、ご家族のことを病気だと思いたくありませんから、難しいこととは思いますが。でも、認知症の患者さんにつらく当たられることがあっても、それは個人の感情によるものではなく、病気が原因。ご家族には、その状況をありのままに優しく受け止めていただきたいのです。でもご家族も人間ですから、常に優しく、正しく接するのは簡単なことではありませんよね。耐えられない、抱えきれない、そんなふうに思ってしまったときには、すぐにかかりつけ医に頼っていただきたいです。むやみに我慢する必要はありません。かかりつけ医は、患者さんだけでなくそのご家族を支える存在でもありますから。

ドクターからのメッセージ

隈井 知之院長

認知症はご本人やご家族にとって、戸惑いの大きい病気です。しかし長寿社会において認知症は「誰にでも起こり得る病気」であり、認知症患者さんは周囲の方にとって「将来なり得る自分の姿」ともいえるでしょう。そして近い将来、認知症の方と生活するのが当たり前にもなっていくでしょう。そんな将来を見据えたとき、認知症を「受け入れる」「支える」姿勢を持つ社会を、地域医療の立場からつくり上げていきたいと思っています。私自身、医師として認知症治療に関して専門的に学びを深め、日常に起こる不調と同じく、人生の中に起こり得ることを丸ごと見守っていく思いで診療に臨んでいます。何かあればまずは抱え込まず、気軽にご相談ください。

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