クリニックと訪問看護師、家族が連携
医療的ケア児の訪問診療
松川クリニック
(名古屋市天白区/原駅)
最終更新日:2024/10/11


- 保険診療
痰の吸引や経管栄養、導尿などの医療的ケアを必要とする子どもの数は、年々増加傾向にあるという。そのような医療的ケア児を対象に、定期的に訪問して体調チェックや薬の処方、医療デバイスの交換などを行うのが小児の訪問診療だ。体調に変化がある場合は、在宅でどこまで対応するか、医療機関を受診すべきかどうかなども判断する。日本小児科学会小児科専門医の資格を持つ「松川クリニック」の松川昇平院長は、「訪問診療によって少しでもご家族の負担が軽くなれば」と話す。また、子ども自身にも少しでも強い体になってほしいと願っている。クリニックでの外来と24時間体制の訪問診療で多忙にもかかわらず、フランクかつ丁寧なコミュニケ―ションを欠かさない松川院長に、小児の訪問診療について詳しく聞いた。
(取材日2024年9月10日)
目次
医療的ケアが必要で在宅医療を受けている子どもが対象。体調の管理や薬の処方だけでなく成長もサポート
- Q小児の訪問診療とはどういった診療のことですか?
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A
▲日本小児科学会小児科専門医の資格を持つ松川院長
基本的には在宅医療を受けている15歳くらいまでのお子さんが対象で、定期的に訪問し検診を行います。内容は、病院で出されている内服薬を処方したりご家族に最近の様子を聞きながら体調をチェックしたり、気管のチューブや胃ろうなど器具の交換処置もします。あとは、急な発熱や咳や痰がいつもより多いといった突発的な状況にも当院は24時間体制で対応しています。外来もあるので場合によっては2~3時間お待ちいただくこともありますが、訪問せずにメールや電話でのやり取りで済むケースもあり、家である程度判断できるようアドバイスも行います。希望されれば予防接種にも対応しますし、一緒にごきょうだいを診ることもありますよ。
- Qどのようなお子さんを診ることが多いのでしょうか?
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A
▲在宅医療を受けている15歳位までの子どもを対象に定期訪問する
ほとんどが障害や生まれつきの疾患があり、通院することが困難かつ医療的ケアを必要としているお子さんですね。医療的ケアが必要なのは、気管切開で気道に穴を開けて呼吸器をつないでいる、口から食べられなくて胃まで経管チューブを入れている、手術で胃ろうを造っている、排尿が難しくてカテーテルで導尿をしているお子さんです。疾患面では、早産児や低出生体重児といった未熟児で後遺症がある場合、遺伝子の疾患である染色体異常、ダウン症やてんかん、神経の病気などが多いですね。ごく一部ですが、高度な発達障害でクリニックに通院するのが難しいというお子さんもいらっしゃいます。
- Q小児の訪問診療でできることをお聞かせください。
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A
▲薬に頼りすぎず、一人ひとりに合った治療方法を提案する
お薬の処方、体調チェック、デバイス交換のほか、体調が悪い場合はどこまで訪問診療で対応できるかも考えます。訪問診療では濃密な治療ができるわけではないので、抗生剤などを数日にわたって点滴するのは難しいです。そのため時には迅速な検査が必要で、例えば感染症の場合に自宅で採血を行い、検査結果があまりにも悪かった場合には病院を受診してもらうといった判断もします。もちろん状態がそこまで悪くない場合には、お薬を出して様子を見ることもあります。薬に頼るだけでなく、お子さん自身の免疫力も大事になりますから、栄養面でできることなどのアドバイスを行うこともありますよ。
- Qどのような診療体制を整えていますか?
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A
▲体調チェックや薬の補充、医療デバイスの交換などを行う
訪問診療は私一人で訪問診療用の車に乗って伺います。お母さんたちが手伝ってくださいますし、実際ほとんどの場合一人で十分対応できます。どうしても暴れてしまうようなお子さんの場合は、訪問看護ステーションに連絡しておいて、同じ時間に来てもらっています。訪問診療は、クリニックと訪問看護ステーションとご家族との連携で成り立っているんです。持ち物は、衛生面ではハンドソープやペーパータオル、アルコールのウェットティッシュなどで、処置面では採血や予防接種、ワクチンに必要な針、注射器、採血用スピッツのほか、聴診器や指で測る酸素飽和度測定器などですね。車の中には血圧を測る機械もあります。
- Q診療可能なエリアと診療時間を教えてください。
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A
▲円滑に連携を図り、患者とその家族の想いに応える
訪問診療には16km圏内という規定がありますが、当院は車で30分で行ける範囲を目安としています。現状多いのは緑区と豊明市ですね。もともと私が藤田医科大学病院にいたということもあって依頼も多いので、7割ぐらいが同大学病院で診てもらっているお子さんです。あとは天白区、日進市、東郷町、長久手市などですね。訪問可能なのは月曜・水曜の午後と木曜は終日、月曜と水曜の外来は非常勤の先生に来ていただき、木曜は小児科を休診としています。なるべく移動時間を節約するため近い間隔で順番に回るようにしたいのですが、デイサービスを利用されている方が多いので終わった後の夕方の希望が集中し、調整はなかなか難しいところですね。