野田 泰永 院長の独自取材記事
医療法人春陽会 サクラクリニック
(名古屋市天白区/相生山駅)
最終更新日:2024/11/27

天白区一つ山の住宅街にバス通りに面して立つ「サクラクリニック」。目の前にはバス停、通りに面した駐車場には25台分のスペースがあり、利便性の良さも魅力だ。循環器内科、内科、外科、消化器内科、小児科、リハビリテーション科と、地域住民のニーズに応じた幅広い診療科目を標榜し、野田泰永院長が診療している。日本循環器学会循環器専門医である野田院長のもとには多くの生活習慣病の患者が訪れ、継続的な治療に励んでいるという。「地域が求めるクリニックを追求したい」と話す野田院長に、日々の診療やクリニック運営にかける思いについて聞いた。
(取材日2024年5月9日)
幅広い角度から健康を支えるクリニック
サクラクリニック開院までの経緯を教えてください。

私の父はこの場所で医院を開業していました。私は大学を卒業した後、東京の大学病院や大規模病院で臨床経験を積んでいたのですが、父が引退することになり後を継ぎました。引き継いだ当初は私と事務員の2人だけで運営していました。患者さんの多くは生活習慣病を抱えた方なのですが、「運動してください」「食生活に気をつけてください」といったアドバイスをしても、なかなか実行できないことが往々にしてありました。そこで、患者さんの生活習慣にアプローチする取り組みに力を入れるようになりました。
クリニック内にフィットネスジムがあるんですね。
フィットネスジムは当院の3階にあります。生活習慣病の患者さんに、ただ運動習慣のアドバイスをするだけでなく、それぞれの疾病に合わせたゆったりとした体操からハードな運動までを行える場所を提供したいと思い開設しました。当院の患者さんだけでなく、地域の生活習慣病に悩む方へ広く門戸を開いていたいとも考えています。私自身も医療と運動の勉強をしていますので、それを生かすことができればうれしいですね。
その他にはどんな施設や設備がありますか。

1階には待合室と診察室、2階には連携している通所型のデイケア施設があります。待合室には熱帯魚の大きな水槽やドリンクサーバーも置き、居心地のいい空間になるように配慮しました。小児科も標榜していますので、お子さんが本を読んだり遊んだりできるスペースを設け、ベビーベッドもあります。生活習慣病の患者さんが多いので、内臓脂肪を測定する機器や、血管の状態を検査できる機器を取りそろえ、患者さん自身が自分の状態を把握しながら治療を進めていけるような体制づくりに注力しました。
アプリやSNS、さまざまな方法で患者をサポート
健康診断の結果が悪くても、生活習慣病の治療を避けている方も多いのではないでしょうか。

生活習慣病は自覚症状を感じにくいので、健診の数値が悪くても通院しない方も少なくありません。通院が面倒だったり、薬を飲み続けるのが嫌だったり、病気だと指摘されること自体が耐えられなかったりする人もいます。自己流で生活改善をしているから大丈夫と思い込んでいるケースも見聞きしますね。でも、症状を放置していると生活に支障を来す、命に関わるといった事態にもなりかねません。だからまずはご来院いただきたいです。数値だけでは見えないこともあるんです。例えばLDL/HDLコレステロールの値から動脈硬化を心配される方もいますが、双方の値のバランスも考慮して診断する必要があります。生活を改善してもLDLの値が下がらない方もいますが、簡単に下がるものではないんですよ。当院ではFMDと呼ばれる動脈硬化が始まっているかを確認するための検査も可能です。ご自身の状態を知るためにも、ぜひご相談にいらしてほしいですね。
生活習慣病はどのように治療していくのですか。
生活習慣病の治療は、食事、運動、薬の三本柱。でも、どれも一朝一夕で改善できるものではないですよね。特に薬を飲み続けることに抵抗を感じる方は多くいらっしゃいます。そんな方には、場合によっては薬ではなくアプリを使うことをお勧めしています。このアプリでは病気に関する知識の提供から、血圧などの管理、食事や運動のアドバイスと記録までが可能です。毎日必要なアドバイスやフィードバックがあることが特徴です。このアプリは保険適用なので、服薬開始の前に試してみやすいでしょうし、薬を増やさないために使用することにも役立つでしょう。アプリで症状への認識が高まって、薬の必要性に気づく患者さんもいらっしゃると思います。
生活習慣もこちらでサポートしていただけるんですね。

アプリに加えて最近始めたのは、食事面のアドバイスのSNS発信です。当院には管理栄養士が4人いるのですが、1〜3ヵ月に1回の通院時の指導だけでは、できることが限られていると感じていました。そこで動画や画像を共有できるSNSを利用して、簡単で健康的なメニューや減塩、減カロリーなどのアドバイス動画をアップしています。手軽にクリニックにいない時でも、生活を改善するための手立てをつくりたいんです。運動についても、新たな取り組みを始めています。外部のスポーツジムと連携して、運動習慣を定着するための仕組みづくりに注力しています。忙しい40〜60代の現役世代にも、生活習慣の改善を意識してほしいと思い、さまざまな取り組みを始めています。
地域が求めるクリニックの姿を追求したい
野田院長が診療や病院経営で大切にされていることは何ですか。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックを経て、地域の患者さんが本当に求めているものについて考えるようになりました。新型コロナウイルス感染症流行下ではコミュニティーとなる場所がなくなり、心細い思いをされている地域の方の声を多く耳にしました。当院は治療の役割だけを担っているのではなく、コニュニティーの場の提供という面でも地域の方々を支えられるのではないかと気づきました。だからこれからもクリニックとして、医療者として、地域にどんなことが求められているのかを考え、応えていきたいと思っています。ウェルビーイングを築く場として、できることを模索し続けたいです。
患者さんと、その周りの人、地域にも目を配っていらっしゃるんですね。
そうですね。高齢の患者さんは認知症に悩まされる場合も多いです。周りのご家族が気づいて医療や介護へとつなげられれば良いのですが、老夫婦で暮らしていてお互いの変化に気づかないこともあります。他にも、家族の中の一人だけが生活習慣病を患っている場合に、料理を主に担当する人の負担が大きかったり、病気を患っていない家族にとっても普段の食事が慣れない味になったり、生活の質が落ちてしまうと感じることも多いようです。患者さんだけを見ていては、うまく進められないことが多いんですよ。そう考えると、患者さんの周りの人や家族、その先の地域を見据えることが大切だと感じます。
最後に読者へのメッセージをお願いします。

人生のゴールはどんな人にもあります。40歳を過ぎたら、これから後、何年生きられるかを強く意識することが大切でしょう。自分の日々の行動が健康寿命に大きく関わることを知っていただきたいですね。5年後、10年後も脳梗塞や心筋梗塞などにならずに自分の足で歩き、行きたいところへ行けるような、元気な姿でいられるような生活を目標としてほしいと思いますし、私も患者さんたちの健康寿命のために、これまでお話ししてきたような取り組みをもっと広げていきたいと思っています。