痛みやしびれ治療の筋膜リリース
メリットデメリットを解説
河合外科・整形外科
(岐阜市/加納駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
なかなか取り除けない体の痛みやしびれの治療の選択肢として、筋膜に働きかけるハイドロリリースという方法があるのはご存じだろうか。この方法の実現に至ったのは、5~6年前に開発された高解像度エコーの存在が大きいのだとか。岐阜駅近くで、85年以上の長きにわたって診療を続けている「河合外科・整形外科」は、外傷や整形科疾患の治療を基軸に、ペインクリニックやリハビリテーションの分野にも見識が深い。日本整形外科学会整形外科専門医である江崎正浩院長は「高解像度エコーのおかげで検査や治療が精密になったこと。さらに理学療法士との連携が密になりリハビリの質が上がったこと」が痛みやしびれの改善につながっていると話す。ハイドロリリースとはどのようなものなのか、解説してもらった。
(取材日2020年7月30日)
目次
痛みやしびれに対して行うハイドロリリース。高解像エコーを活用し、より精密な治療をめざす
- Qハイドロリリースについて教えてください。
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A
ハイドロは水を意味し、リリースは剥離する、緩めるという意味ですので、ハイドロリリースというのは、主に生理食塩水などを使って、筋膜の癒着を剥がすことを指します。筋膜とは、筋肉をはじめとする組織や臓器をくるむ膜で、この膜構造というのは筋肉だけでなく神経・血管などあらゆるものが膜としてつながっています。今までは、関節周りの組織や神経に痛みの主座があると考えられていましたが、筋膜にも痛みの原因があるということ、そして、筋肉と筋肉の間にある筋膜の部分に、注射で薬液を入れて剥がすことが痛みに対するアプローチとなり得ることがだんだんとわかってきたのです。それに関わってきたのは高解像度エコーのおかげです。
- Qハイドロリリースは、どのような症状に適したものなのでしょう?
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A
神経痛で手がしびれている、手術をしたのにしびれが残っているなど、手足のしびれや痛み、肩・腰・首の痛み、すべてに適用できると考えられます。高解像度エコーを使い、神経の走行を見て圧痛のあるところに注射で筋膜を剥離し、痛みにアプローチしていきます。そのため、筋膜リリース治療ともいわれていますよね。先日もこういった症例がありました。高所から墜落してしまい骨折はなく、おそらく首から出ている神経が引っ張られて、手がしびれて寝られないという方がいらっしゃいました。エコーで検査をすると、橈骨(とうこつ)神経の領域にしびれがあり圧痛がわかったので、そこを狙ってエコーガイド下で注射をしていきました。
- Q期間や回数について教えてください。
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A
疾患の程度や素因などは患者さんによって違いますので、期間や回数もケースによって異なります。痛くなるのはそれなりに素因があるもので、例えば、坐骨神経痛があった場合、原因は腰あたりの神経の圧迫が考えられます。そこで、上から下までずっとつながっているピンと張った状態の神経を剥離していきます。ただ腰には原因が残っているので、また痛くなってくる可能性はありますが、続けていくうちに痛みが取れてくることもあります。逆に、手術をして圧迫は取っているのにまだ痛みが残るといった場合にも、手術後の残った痛みに対してハイドロリリースを行います。
- Qデメリットやメリットはどんなものがありますか?
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A
デメリットとしては、注射なので少しの痛みはあります。できるだけ細い針を使うなどの配慮をしていますし、高齢の方でも耐えられる痛さでしょう。メリットは、注入するのは生理食塩水が主なので体にほとんど害がありません。副作用のリスクもほとんどないとされていますので、痛みの具合を見て医師が必要だと判断すれば、週に何回か連続で行うことも可能です。また、保険診療で受けられますので患者さんの負担も軽減できます。そして何より、手足の神経痛など神経に沿った痛みに対してピンポイントで打てることが大きな特徴と言えるでしょう。
- Q理学療法との連携やリハビリテーションが大切だそうですね。
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A
高解像度エコーを導入したおかげで、痛みの本体がより精密にわかるようになってきおり、痛みを治す手段としてハイドロリリースというアプローチが注目されるようになりました。この方法を行う際には、リハビリテーションも行っていただく必要があるのですが、医師と理学療法士がエコー画像を共有できるので、互いに連携を取りながら理学療法とリハビリを組み合わせて行えるのもエコーを使うメリットですね。エコー画像の精度が向上すれば、痛みやしびれに対するアプローチも的確に行えるようになるでしょう。さらに、実績と研究を重ね、専門性を持ったスタッフと一丸となり、力を尽くしていきたいと考えています。