筋肉の痛みに対する治療法
エコーガイド下のハイドロリリース
医療法人ベネヴォラ 磯見整形外科医院
(逗子市/逗子駅)
最終更新日:2022/07/19


- 保険診療
超音波(エコー)装置の発達によって体の組織の詳細がわかるようになり、筋肉や骨格系の痛みには“筋膜”が関わっていることがわかってきた。エコーガイド下での「ハイドロリリース(筋膜リリース)」とは、エコーで筋膜を確認しながら行う、痛みの治療だ。患者に負担の少ない画期的な治療法として今、注目されている。そこで、「ハイドロリリース」を早くから導入し、痛みの緩和をめざしている「医療法人ベネヴォラ 磯見整形外科医院」磯見卓院長に聞いた。
(取材日2015年11月12日/更新日2022年7月12日)
目次
筋膜の癒着に着目しつつ、痛みの緩和をめざす治療「ハイドロリリース(筋膜リリース)」
- Qハイドロリリースとは、どのような治療ですか?
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A
▲ハイドロリリースについて語る院長
肩や腕などに慢性的な痛みがある場合、押すと痛みが広がる硬いしこりのようなものがあります。これをトリガーポイントといい、エコーを使った研究では筋膜上にあることがわかってきました。また筋肉のこりや、運動後の筋肉の痛みの多くは、筋膜が関係していることも明らかになってきました。筋膜とは足から頭のほうまでつながった結合組織で、何層もの膜で構成されています。硬い組織で、これがスムーズに動くことで関節や筋肉がうまく動きますが、軽微な外傷や疲労が重なると筋膜同士が癒着してうまく動かなくなり、こりの状態になります。そこで、エコーで筋膜の癒着の状態を見ながら、麻酔薬で痛みの緩和をめざすのがハイドロリリースです。
- Q具体的な治療法は? また、どんな症状に適用されますか。
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A
▲治療について、院長自らが理学療法士への指導を行う
エコーで患部を確認しながら、癒着部分に薬液や生理食塩水を注射器で注入していきます。ラップが何枚も重なっているような状態なので、その間に注入するイメージです。そうして筋肉の癒着をはがすような工夫も行いつつ、筋膜に関連して起こっている痛みの緩和をめざします。対象となるのは肩こりや四十肩、腰痛、脚の向こうずねが硬くて痛い場合などです。若い人からお年寄りまで年齢層には関係なく、筋肉や骨格系の痛みに幅広く用いられます。いわゆるぎっくり腰も筋膜の癒着が原因である場合は、この治療法が有用です。また慢性的に肩こりが続いている場合や、交通事故などのケガの後の痛みなどにも用いられます。
- Q治療のメリット、医院ならではのポイントを教えてください。
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A
▲治療後、リハビリテーションを行うことで状態の維持を図る
エコーで見るとはっきりと筋膜が確認できます。トリガーポイントのある場所、筋膜が癒着している部分に適切に薬液を注入することができ、痛みの早期緩和が期待できます。また血管や神経などを避けてピンポイントで注入することが可能なため、患者さんの負担が少ない低侵襲の治療でもあります。また慢性的な痛みの場合、治療後しばらくするとまた筋膜が癒着して、痛みが再発することもあります。これは筋膜と筋膜の間に細かい繊維質などが残っていることが原因と考えています。そこで、当院では、ハイドロリリースと並行して、リハビリテーションを行い、筋肉などの動きをスムーズにしてバランスを整えていくことも重視しています。
- Q治療にかかる時間や費用について教えてください。
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A
▲保険適用のため費用を抑えて治療を受けられる
治療にかかる時間は、エコーガイド下で、注射をするだけですから、外来診療で数分で終わります。針を刺すのでチクッとした痛みはありますが、その後の痛みはほぼなく、患者さんの負担もとても少ないと思います。治療費については、トリガーポイントに麻酔薬を入れて痛みの緩和をめざす治療は保険適用になっているので、それに準じた治療とされています。基本的には保険適用で受けていただけますのでご安心ください。
- Q治療後、日常生活で気をつけることはありますか。
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A
▲日ごろから体をほぐすことが大事である
筋膜は全身にあるので、膜が癒着するような感じの痛みは全身に起こり得ます。日常生活では、パソコンを使用している時、スマートフォンを見ている時など、同じ姿勢を長時間続けないように気をつけてほしいです。時々体操をしたり、体をほぐすことを心がけてください。また、姿勢に偏りや癖などがあるとこりや痛みが起こりやすいですし、仕事やスポーツなどである特定の筋肉ばかり使うとストレスがかかり、それが筋肉の疲労に結びついて痛みになることもあります。当院のリハビリテーションでは、理学療法とともに、姿勢や生活習慣などの改善指導や日常生活に取り入れやすい体操のアドバイスなども行っていますので、参考にしていただきたいです。